る。
しかし、こと中国と韓国について話す時はいつも、眉間に皺を寄せてい
る。
「全くどうしようもない国だ」と言うのである。
こういう人は少なくない。
むしろこういう感覚が大勢なのかもしれない。
韓国や中国に違和感があるのが、普通の日本人だと言ってもいいだろ
う。
どうしてだろう。
「反日デモをしたから」「靖国神社参拝について、とやかく言うから」
「ナショナリズムが強いから」。そう答える人が多いだろうと思う。
だが本当にそうだろうか。
隣国への嫌悪感は、ここ数年に形成された感覚なのだろうか。
私はそうは思わない。
長女は「近親憎悪じゃない?」と言っている。
そうも言えるかもしれない。
日本人が持つ中国や韓国への視線には、「遅れた忌むべきアジア」への
複雑な感情が入り交じっているように見える。
フランス人のナショナリズムには腹が立たなくても、
中国人のナショナリズムは許せないのである。
しかも今、両国は発展している。
それがまた問題を複雑にしているのである。
中国や韓国とのトラブルは、明治維新以降の日本のいき方から出ている
根の深い問題だ。
戦前の日本人は、侵略という形でアジアに向き合った。
戦後は欧米を志向してアジアに背を向けてきた。
しかし、根底に流れる嫌悪感はあまり変わらなかった。
ちくま学芸文庫「日本とアジア」は、1966(昭和41)年に出
版された
「竹内好評論集」第三卷「日本とアジア」の文庫版である。
今から40年前以上前に書かれたものであるにも関わらず、全く古
さを感じさせない。
それどころか、まるで昨今のアジア情勢を分析したがごとくの文章が並
んでいて驚く。
透徹した問題意識とは、時代を超えるものであるらしい。
傑出した中国文学研究者であった竹内好の目は、日本人の思考の盲点を
突いてやまない。
例えば、近代化というと必ず、日本とヨーロッパとを比べること。
「ヨーロッパと違って、日本には市民革命がなかったから」という言説
である。
日本の近代化を、中国の近代化と比べる人はほとんどいない
(「中国の近代と日本の近代」)。
また、侵略のイデオロギーとなった「大東亜共栄圏」思想は、
欧米列強からの解放と連帯を説くアジア主義からの、
「逸脱」と「無思想化」であったこと(「日本のアジア主
義」)。
右翼も左翼も、大東亜共栄圏とアジア主義とを混同してきたことが、
戦前の日本を思想的に検証できない理由の一つではないだろうか。
何だかんだと言いながらも今、日中の交流は実態として深化している。
経済的にも中国との関係は深まるばかり。
比較的安く旅行できる北京や上海には、日本の若者が大勢行っている。
こういう時だからこそ、竹内好の透徹した問題意識をもう一度見直した
い。
川西玲子
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