いくつかのマスメディアによって報道された10月6日、私はあるMLに以下のよう
な私感を書き送りました。
本日付朝日新聞は、「アフガン支援―小沢論文への疑問符」という社説を掲げ
て、昨日プレスリリースされたばかりの民主党小沢代表の「世界」11月号(9日
発売予定)掲載論文(同論文の中で小沢氏は、「国連決議に基づいてアフガン
で活動している国際治安支援部隊(ISAF)について『私が政権を取れば、参加
を実現したい』と述べた」由)を批判しています。
■アフガン支援―小沢論文への疑問符(朝日新聞社説 2007年10月06日)
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
※現在はウェブ版からは削除されています。
私は先に本MLに2本の小沢関連のニュースを紹介し、彼の憲法感覚、国連
憲章解釈、認識に対する危惧を表明しました。
■《資料》国連、憲法、自衛隊/小沢の軽井沢講演要旨
(from 高野孟の「極私的情報曼荼羅」 2007年09月28日)
http://www.the-commons.jp/commons/main/takano/2007/09/post_125.html
※↑会員登録の要あり
■小沢民主党代表:アフガン部隊参加に意欲…海自給油代替案
(毎日新聞 2007年10月3日)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071003k0000m010162000c.html
今回の朝日新聞社説は、この危惧は私だけのものではなく、2大政党制=
民主主義社会の成熟度を測る尺度でもあるかのように「似非民主主義論」
を 鼓舞、喧伝してやまない群盲象を撫ぜる類の朝日論説委員室「ジャー
ナリスト」諸氏の危惧でさえあることを証しています。そういう意味でこの危
惧は、ごく一般的ないわゆる「革新」系市民に共通する危惧でもあろう、と
推察することができるようにも思います。
※ISAF:国際治安支援部隊 (International Security Assistance Force) -
国際平和活動のひとつで、アフガニスタンの治安維持を通じアフガニスタン
政府を支援する目的で、2001年12月5日のボン合意に基づく2001年12月20
日の国連安保理決議1386号により設立された。当初は有志国の集まりから
なる多国籍軍により構成されていたが、現在は北大西洋条約機構(NATO)
が統括する。略称はISAF。ISAFの作戦本部はアフガニスタンのカブールに
あり、司令本部はオランダのNATOブロンソン連合統合軍司令部に置かれ
る。いずれも、欧州連合軍最高司令官(Supreme Allied Commander Europe:
SACEUR)の指揮下にある。
しかし、こうした危惧は、「革新」系市民だけでなく、もちろん観点を異にしますが、
「右翼」系市民の危惧でもあったようです。小沢論文(『世界』11月号)のプレスリ
リース後、左右両派からの同代表のアフガニスタンISAF参加合憲発言批判が
「行列ができる」ほど立て続いています。
【「革新」系の小沢氏批判】
例1:小沢一郎のISAF派兵論批判
(紅林進 AML16242 2007年10月14日)
http://list.jca.apc.org/public/aml/2007-October/015771.html
例2:小沢公開書簡に対して――自衛隊の指揮権の国連への委譲こそ活路
(村岡到 AML16264 2007年10月15日)
http://list.jca.apc.org/public/aml/2007-October/015793.html
【「右翼」系の小沢氏批判】
例1:民主・小沢代表「世界」寄稿論文の問題点(1)(2)
(井尻千男 you tube チャンネル桜「快刀乱麻」 2007年10月8日)
http://www.youtube.com/watch?v=llPv4XUJoW0&mode=related&search
http://www.youtube.com/watch?v=pXsal65sMuY&mode=related&search
いわゆる「革新」系の小沢批判は、小沢氏の憲法解釈と国連憲章解釈(ISAF
参加合憲発言)の論理的矛盾を突くものとなっています。また、「右翼」系の
小沢批判は、自衛隊の単独海外派兵と国連参加の枠組みの中での自衛隊の
海外派兵を区別し、後者を合憲とする小沢氏の憲法解釈と国連憲章解釈の
恣意性を指弾するものとなっています。小沢氏の憲法解釈と国連憲章解釈の
恣意性を指摘する点で両派は一致しています。小沢氏のISAF参加合憲発言は、
左派の論者にも右派・保守系の論者にも「剛の者」(権謀術数に長けた者)の
詭弁、としか写っていないようです。
民主党議員諸氏は、次の総選挙での「政権交代」を構想するのであれば、この
ことはとくと肝に銘じておくべきでしょう。そうでなければ、民主党は、今度の総
でも、選挙自民党のなし崩し的大勝利(すなわち、民主党の大敗北)を許してし
まった前回の総選挙と同様の轍を踏むことにならざるをえないでしょう。前回の
総選挙での民主党の最大の敗因は「民主党の驕り」にありました(と、私は分析
しています)。次期総選挙も「小沢氏の驕り」が敗因になる可能性があります。
小沢氏のISAF参加合憲発言以来、民主党への風は急速に風向きが変わりつ
つあるということ。その世論の風に民主党議員諸氏は鋭敏になる必要があるで
しょう。
さて、10日、20日も経てば旧聞になるご時勢ですが、『世界』11月号に掲載され
たくだんの民主党・小沢代表の論文の全文を下記ホームページで読むことが
できます。
■民主党・小沢党首の雑誌『世界』11月号論文
「公開書簡 今こそ国際安全保障の原則確立を 川端清隆氏への手紙」
http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/pdf/07/ozawa02.pdf
上記は浅井基文さん(元外交官、広島市立大学広島平和研究所所長)のホー
ムページにリンクされているものですが、浅井さんもご自身のホームページで
民主党・小沢党首のアフガニスタンISAF参加合憲発言を批判しています(浅井
さんも「革新」系論客のひとりです)。
■民主党・小沢党首のアフガニスタンISAF参加合憲発言(2007年10月10日)
http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2007/196.html
上記記事で浅井さんも他の「革新」系論客と同じく「小沢発言は、民主党の『憲
法提言』の次の主張(注:↑参照)を踏まえれば、実は驚くべきものでは」ないと
小沢発言=民主党の党としての憲法観との一致を指摘した上で、今回の小沢
発言は自民党幹事長時代からの彼の持論の焼き直しでしかなく、そういう意味
でも「驚くべきものでは」ないと述べます。その論証として浅井さんはご自身の
著書『新保守主義−小沢新党は日本をどこへ導くのか−』をリンク↓して私たち
に示します。その著書でする小沢「理論」の分析は、小沢流「理論」の本質、その
行き着くところを明白にして見事です。一見の価値あり、です。
■『新保守主義−小沢新党は日本をどこへ導くのか−』(1993年、pp.110-136)
http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/pdf/07/ozawa01.pdf
上記で浅井さんも指摘するように、私たちは小沢民主党の危険性を見誤って
はならないでしょう。しかし同時に、私は、浅井さんとはややスタンスを異にし
ますが、次の事実にも注意深い留意が必要だろうと思っています。すなわち、
(1)今回の参院選での民主党の躍進は、改憲潮流の野望を砕き、少なくとも
一端は憲法「改正」問題を棚上げしなければならないという状況をつくりだした
という事実
(2)小沢民主党は特措法延長、新特措法の制定に明確に反対を表明している
こと(それが「政権交代」実現のための小沢流の独特の戦略であるとしても)。
民主党のこの姿勢の持続なしに少数野党としての共社両党(+市民運動)だけ
の力では特措法延長も、新特措法の制定も阻止しえないであろう、という現状
認識をともなう事実(現状認識を異にする者にとってはこうした「事実」には行き
着かないでしょう)
などです。
こうした事実から導き出される「憲法を守り、活かそうとする」側の結論としては、
小沢民主党を「保守」、あるいは「第二自民党」として安易に切り捨てないこと。
小沢民主党の「革新」性を最大限引き出し(民主党内の護憲勢力が党内多数
派になるよう世論を高めることなどを通じて)、同党を含む共産・社民・民主の
「護憲」共闘を粘り強く模索し続けること、だと私は思います。
困難な道ですが、そのことなしに20年、30年先のことはいざしらず、当面の「革
新」的政治課題である特措法延長、新特措法制定阻止、憲法改悪阻止を成し
遂げることは難しいだろう、と私は思います。民主党・小沢代表のアフガニスタ
ンISAF参加合憲発言の危険性に警鐘を鳴らすことは当然だとしても、そのこと
が単純に「やはり民主党はダメだ」論(民主党バッシング)になってしまうことを
私は逆に危惧します。
相次ぐ「民主党・小沢党首のアフガニスタンISAF参加合憲発言」批判に共感し
ながらも、一言述べておく必要を感じました。
東本高志@大分
taka.h77@basil.ocn.ne.jp
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