太田光征
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孫崎さん発信:
すでに、軍事面で米国が尖閣諸島に出られない状況になっている面をみた、
3月25日星条旗新聞は尖閣問題に関して、極めて重要な発言をした。
「ロックリア米 太平洋軍司令官は上院軍事委員会で、”太平洋において米国は上陸作戦を行う十分な能力を持っていない。上陸にはあらゆるタイプの輸送手段が必要だがそれがない”と述べた。この発言は中国が尖閣等を奪うのでないかという懸念がある中で行われた
では、法律面を見てみたい。(出典:『日本の国境問題』)
「尖閣諸島に在日米軍は出るか」、この問題を最初に提示したのは、日本人ではない。何とモンデール駐日大使(93年から96年)である。
1996年9月15日ニューヨーク・タイムズ紙は「モンデール大使は“米国は(尖閣)諸島の領有問題にいずれの側にもつかない。米軍は(日米安保)条約によって介入を強制されるものではない」と述べ、同じく10月20日付ニューヨークタイムズ紙は「モンデール大使は常識であること、つまり(尖閣)諸島の(中国による)奪取が(安保)条約を発動させ米軍の軍事介入を強制するものではないと示唆した」と報じた。
モンデール大使はとんでもないことを言及した。多くの日本人は、「在日米軍は日本の領土を守るために日本にいる」と信じている。日本の領土の中には尖
閣諸島も入っている。もし米軍が尖閣諸島を守らないのなら、日本人の中から「米軍は何のために日本にいるか」という疑問を抱かせる。
即、日米双方はモンデール大使発言のダメージ・コントロール(損傷の制御)に入った。米国は次の原則を日本側に知らせる。
・1972年の沖縄返還以来、尖閣列島は日本の管轄権の下にある。1960年安保条約第五条は日本の管轄地に適用されると述べている。従って第五条は尖閣列島に適用される。
・尖閣の主権は係争中である。米国は最終的な主権問題に立場をとらない。
ここで非常に重要な論点が残っている。「尖閣諸島が安保条約の対象になる」
ということと、「尖閣諸島での軍事紛争の際に米軍が出る」ということは同一ではない。
安保条約第5条をみてみよう。第5条は「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する」としている。
尖閣諸島が日本の施政下にある。それは正しい。だから第5条の対象になる。
これも正しい。ではそれが「米軍の介入になるか」というと、それはモンデール大使のいうように自明でない。
米国は条約上の義務を負っていない。第5条で述べているのは「自国の憲法上の規定に従つて行動する」と言っている。
では米国憲法の規定とは何を意味するか。米国憲法第8 条[連邦議会の立法権限]の第十一項に戦争宣言が記載されている。他方大統領は軍の最高司令官であり、戦争の遂行の権限を有する。こうして戦争実施に関し力を分散させたのは米国が突入する危険を少なくするためとみられている。議会の戦争宣言権と軍の最高司令官の間の権限調整は法的にさまざまな議論があるが、大統領は戦争に入る際には政治的に出来る限り議会の承諾を得るように努力する。この中「主権は係争中。米国は主権問題に中立」としている尖閣諸島の問題に議会と相談なく軍事介入することはありえない。従って米国が安保条約で約束していることはせいぜい「議会の承認を求めるよう努力する」程度である。
米国が自国の軍隊をどこまで使うかは日米安保条約と北大西洋条約を比較すれば、より鮮明になる。
北大西洋条約第5条は「締約国に対する武力攻撃を全締約国に対する攻撃とみなすことに同意する。武力攻撃が行われたときは個別的又は集団的自衛権を行使して、北大西洋地域の安全を回復し及び維持するために、その必要と認める行動(兵力の使用を含む。)を直ちに執る」としている。日米安保条約では「自国の憲法上の規定に従つて行動する」である。北大西洋条約は「必要と認める行動(兵力の使用を含む。)を直ちに執る」としている。
日本の多くの人は「尖閣諸島が安保条約の対象である」ことと、「米軍が尖閣諸島に軍事的に介入する」とは同じであると思っている。ここには大きな異なりがある。その意味で、モンデール大使は“米国は(尖閣)諸島の領有問題にいずれの側にもつかない。米軍は(日米安保)条約によって介入を強制されるものではない」は正しいことを言ったのである。ただこれは日本国民に判ってはいけないことである。だからモンデール大使は事実上の辞任をせざるを得なかった。
法律論を終えて、現実に尖閣諸島で日中の武力紛争が生じた時に米軍は参加するのか。
一つの手がかりは2005年10月、米国側の国務長官と国防長官と日本側の外務大臣と防衛庁長官の間で署名された「日米同盟 未来のための変革と再編」である。この文書は日米同盟の在り方を詳細に明記している。「概観」に次いで「役割・任務・能力」が規定されている。先ず重点分野が示され、次いで役割・任務・能力についての基本的考え方が記載されている。その中に日本の行うこととして「島嶼部への侵攻への対応」がある。他に「二国間協力」や「日本と米国が」行うべきことや「双方が」行うべきことが記載されている。つまり「島嶼部への侵攻への対応」は日本独自で行うことが想定されている。この時点で仮に中国が尖閣諸島を占拠し、確保すれば中国が管轄する地になる。その際には安保条約の対象から離れる。
上記は私の分析である。米国側はそこまで詳しく説明しない。しかし突然米側からの説明が現れた。アーミテージ元国務省副長官が文藝春秋2011年二月号の対談で「日本が自ら尖閣を守らなければ(日本の施政下ではなくなり)我々も尖閣を守ることが出来なくなるのですよ」と述べた。キャンベルは国務省の元副長官である。かつ長年にわたり米国の対日政策に精通した人物である。尖閣諸島では中国が攻めてきた時には自衛隊が守る。この際には米軍はでない。ここで自衛隊が守れば問題ない。しかし守りきれなければ、管轄地は中国に渡る。その時にはもう安保条約の対象でなくなる。こうみると、「日本は北方領土、竹島、尖閣列島を抱えている。これらを守るためにも強固な日米関係が必要である」と一般に思われていることが、実はどれもこれも自明ではない。
2014,10・8 県議会9月議会総務政策委員会用 意見陳述
私は二人の子をもつ母でもあり、海外で子育てした10数年前から、日本という国が世界でどう見られるかを意識し、日本社会の方向性を目を凝らして見つめてきました。昨年12・6の「秘密保護法」強行採決の頃、家族の入院で何もできませんでしたが、ニュースを見てこの国は民主国家なのだろうか?との疑念がずっと心にわだかまっていました。
その前に集まったパブリックコメントの数は9万にのぼり、その77%が反対の意見でしたが、中身の開示はされませんでした。
国の存立は、ひとえに政府が国民の信頼を得たうえで成り立つのではないでしょうか。
「(特定)秘密保護法」には、多くの問題がありますが、なにより強く言いたいのは、「政府の違法行為を秘密にしてはならない」という項目がない、ということです。「政府は必ず嘘をつく」という堤未果さんの大変売れた本があります。いくつもの例示がありますが、日本という国がやったことでは、先の大戦における「盧溝橋事件(柳条湖事件)」がそれに当たります。
人類の歴史とは、失敗を反省して、その教訓を生かし、より賢く生きるすべを次世代に伝えて来た事につきるのではないでしょうか。「政府の違法行為を秘密にしてはならない」はぜひ入れて貰いたいです。
もうひとつ大問題と思うのは、条文に「その他」が多用され、秘密の範囲がとてもあいまいである、ということです。
(8月1日の「特定秘密保護法」を扱ったNHK特別番組を3度見ました。)
米国では一市民であっても国による秘密指定の解除を求める行動が許されています。ISCAPという機関には約20人の職員がいて元の省庁に帰ることはなく、しっかり独立性が担保されています。昨年は110万ページが秘密解除されており、その中にいわゆる「イラク戦争」の理由となった「大量破壊兵器」とは嘘だったことがわかる文書がありました。CIAとしては、その秘密解除に否定的でしたが、司法・国防総省ら他の6つの機関がCIAがまちがっている、と説得して表にでたとのことです。
日本にはそれがありません。担当の森まさこ大臣は内部通報制度がある、というのですが家族のこと仕事のことを思うと、普通の人は利用しないだろうと推察できます。また内閣の中にある「独立公文書管理監」では、独立性が担保されておらず、チェック機能がありません。
又、米国では、ISOO(情報保安監察局)という機関が、毎年各省庁の情報公開度をチェックし100点満点で公表しており、市民から情報公開度が低いと思われたら問い合わせが殺到するし、それに各省庁は応える説明責任がある、とのことでした。
また秘密の期間ですが、理由あってしばらく秘密指定されたにせよ、10年もしくは15年ほどで開示すべきと考えます。秘密解除まで「5〜60年」と書いてある「秘密保護法」は問題です。「60年」たつと関係者はこの世にいないでしょう。
ニクソン政権、クリントン政権時、国家安全保障会議で長く秘密を扱った、秘密の専門家であるモートン・ハルペリン氏が、「このような法として問題だらけの秘密保護法を施行するのは、近代国家として恥ずべきこと」とおっしゃっています。
最後に、弘前市議会が「特定秘密保護法の施行延期を」という請願を採択し、国への意見書をあげようとしていることをお伝えいたします。市民・国民の深い懸念を受け止め、次世代のためになる、叡智からくる決断であり、地方議員としての存在意義が発揮されている、と感銘を受けました。
以上、意見を述べさせていただき、感謝申しあげます。
自由権規約委員会勧告意見(秘密保護法)
2014年7月24日
訳:小川隆太郎
Act on the Protection of Specially Designated Secrets
23. The Committee is concerned that the recently adopted Act on the Protection of Specially Designated Secrets contains
a vague and broad definition of the matters that can be classified as secret, general preconditions for classification and
sets high criminal penalties that could generate a chilling effect on the activities of journalists and human rights defenders (art. 19).
The State party should take all necessary measures to ensure that the Act on the Protection of Specially Designated Secrets and
its application conforms to the strict requirements of article 19 of the Covenant, inter alia by guaranteeing that:
(a) The categories of information that could be classified are narrowly defined and any restriction on the right to seek,
receive and impart information complies with the principles of legality, proportionality and necessity to prevent a specific and
identifiable threat to national security;
(b) No individual is punished for disseminating information of legitimate public interest that does not harm national security.
特定秘密保護法
23.委員会は、近年国会で採決された特定秘密保護法が、秘密指定の対象となる情報について
曖昧かつ広汎に規定されている点、指定について抽象的要件しか規定されていない点、
およびジャーナリストや人権活動家の活動に対し萎縮効果をもたらしかねない重い刑罰
が規定されている点について憂慮する(自由権規約19条)。
日本政府は、特定秘密保護法とその運用が、自由権規約19条に定められる厳格な基準と
合致することを確保するため、必要なあらゆる措置を取るべきである。とりわけ下記事項は
保障されなければならない。
(a)特定秘密に指定されうる情報のカテゴリーが狭く定義されていること、又情報を収集し、
受取り、発信する権利に対する制約が、適法かつ必要最小限度であって、国家安全保障
に対する明確かつ特定された脅威を予防するための必要性を備えたものであること。
(b)何人も、国家安全保障を害することのない真の公益に関する情報を拡散させたことに
よって罰せられないこと。
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