2010年07月03日

2010参院選:「民主党は自民党より少しはマシ」論、また「死に票」論に対する私見

「平和への結集」をめざす市民の風の代表の太田光征さんがこの参院選投票日に向けたメッセージとして参院選複数定数区での「民主への過剰投票は自公を利する」という論攷を発表されています。同論攷は数学(算数)的計算に基づいて「民主への過剰投票は自公を利する」という理論的結論を導き出した文字どおり論攷というべきものであって主張ではありません。私たちは太田さんの理論的結論を肯うならば有権者として理論的にふるまうべきだと思います。太田さんの呼びかけも有権者にそうした理論的対応を呼びかけることを意図しているものと思います。

■2010参院選:民主への過剰投票は自公を利する(太田光征 平和への結集第2ブログ 2010年7月3日)
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/155321608.html

とはいえ、太田さんが呼びかけの対象にしているのは、もちろん、前自・公政権に否定的な有権者、また「自民党より民主党の方が少しはマシ」論をとる有権者だろうと思います。特に「民主党マシ」論の立場をとる有権者に対して。

また、今回の呼びかけは、その呼びかけの前提として、この10か月ほどの間に鳩山・菅の民主党政権が行ってきた民意無視の負の政策の連鎖というべきもの、普天間基地「移転」問題についての沖縄県民に対する「裏切り行為」」(琉球新報社説、2010年6月1日付)、派遣労働者の悲惨な現状を固定化するものだとして批判の多い労働者派遣法「改正」法案の国会提出、高校授業料無償化からの朝鮮人学校排除エトセトラ、さらにまた議会制民主主義のもとにおける有権者の多様な意思の表明を困難にすると批判の多い議員定数削減法案を参院選後の次期臨時国会で民主と保守の大連立で「ぜひ実現したい」((毎日新聞 2010年7月1日)などと民意とは逆向きの意欲を示している問題、大衆課税として批判の多い消費税増税に意欲を示している問題などなどがあって、民主党政権にはもはや市民本位の政治革新を原則的レベルで期待できない、という判断もあってのことだと思います。

さて、太田さんの呼びかけは、彼の参院選複数定数区の分析からみても同複数定数区の有権者に対する呼びかけと見るべきものだろう、と思います。そうであるならば、私としては、参院選1人区(全国29区)の有権者のみなさんに次のように訴えたいと思います。

同1人区では「当選」を基準にして考えると実質的に民主党vs自民党の争いということになるでしょうから、どうしても「死に票」論というのがでてきやすくなります。「死に票」論とは、民主党の政策にも自民党の政策にも反対でも「自民党より民主党の方が少しはマシ」だから、「死に票」を投じるよりも「少しマシ」な民主党に投票しよう、という考え方のことです。

私にはここに民主党が今回の参院選でももしかしたら相応に「躍進」しかねない危険な陥穽が潜んでいるように思えます。私は民主党は「自民党より少しはマシ」な政党だとは思いません。

沖縄在住の芥川賞作家の目取真俊さんは民主党の沖縄政策について次のように論評しています。

「今回のSCC(日米安全保障協議委員会(東本))の共同声明は、自公政権下で進められていた現行計画に単純回帰するものではない。自衛隊の共同使用を盛り込むことによって、基地機能、演習量、内容ともに強化拡大しようとするものであり、仮に将来海兵隊が撤退することがあっても、自衛隊が継続して居座ることを狙った、現行計画以上に悪質な内容である。」(「日米共同声明に反対する」 海鳴りの島から 2010年5月28日)
http://www.peoples-plan.org/jp/ppmagazine/pp49/pp49_muto.pdf

また、ピープルズ・プラン研究所運営委員の武藤一羊さんは民主党・鳩山政権時代を次のように論評しています。

「鳩山政権のふるまいで特徴的なのは、この政権が自民党がこれまで積み上げてきた政治的悪行についてきわめて寛大であることである。新政権は、自民党レジームからどれほど膨大な負の政治的財産を引き継いだのかを明らかにし、それの清算という困難な仕事に挑戦する決意を示し、その仕事を支持するよう広く人びとに訴えるのが当然と思われるのに、政官癒着や天下りなど特定の分野を除いては、それをしようとしないのである。(略)それをしないのは、自民党政権時代につくられた日米関係を変更するつもりがないからである。」(「鳩山政権とは何か、どこに立っているのか ――自民党レジームの崩壊と民主党の浮遊」 2010年2月16日)
http://www.peoples-plan.org/jp/ppmagazine/pp49/pp49_muto.pdf

上記で武藤さんは「政官癒着や天下りなど特定の分野を除いては」という留保をつけています。そういう意味では民主党は「自民党より少しはマシ」な政党と言いえるかもしれません。しかし、その民主党の「1丁目1番地」である「特定の分野」においても民主党は後退に後退を続けています。

ダム問題をライフワークとするフリージャーナリストのまさのあつこさんは民主党のダム問題における「後退につぐ後退」をご自身のブログで次のように証言しています。 

「皆さん、ご存じのように政権交代後すぐに前原国土交通大臣が八ツ場ダム中止を宣言して大騒ぎになりました。ところが現在に至るまで、『中止』に向けた法的手続に入っていません。それどころか、大臣はまだ『法的手続には入らない』というスタンスです。現地の人から言えば、『生殺し状態』。」(「ダム見直しの失敗(その2)」 ダム日記2 2010年6月27日。注:現在「ダム見直しの失敗(その12)」まで執筆中)
http://dam-diary2.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-f800.html

また、刑法学者の中山研一さんも民主党政権の「司法改革」の後退についてご自身のブログで次のように証言しています。

「民主党政権への政権交代に期待が集まりましたが、その『改革』の旗印と方向が次第に鮮明性をなくしていくおそれを感じざるを得なくなっています。私自身が関わっている「司法改革」の点についても、冤罪の温床となってきた捜査段階の取調べの「可視化」さえ早急な実現の見込みはなく、かえって慎重であるべき重大犯罪の『時効の廃止と延長』がすぐに通ってしまうという『公約違反』が目立つのです。(「まず「隗(菅)より始めよ」 中山研一の刑法学ブログ 2010年7月2日)
http://knakayam.exblog.jp/14699570/

上記の各論評、証言からも民主党政権の方が自民党政権より「少しはマシ」などとは「原則」的には決して言えない、と少なくとも私は思います。

それと私には「『最低でも県外』と首相自ら公約しながら県民の心を8カ月間ももてあそび、『辺野古現行案』に回帰するという公約違反の裏切り行為」(琉球新報社説、2010年6月1日付)に及んだ民主党・鳩山政権、その鳩山前政権の沖縄県民を愚弄することも甚だしい最悪の置き土産ともいうべき「辺野古回帰」の日米合意を踏襲する考えを民主党代表選の前日の3日の段階で早々に表明したこれも民意を無視すること甚だしい民主党・菅政権を今度の参院選で決して許してなるものか、という思いがあります。この点についてもう少し詳しくは愚生ブログの「ヤマトゥは沖縄を捨てた 菅新内閣支持率を憤りをもって読む」(2010年6月16日付)をご参照いただければ幸いです。
http://blogs.yahoo.co.jp/higashimototakashi/4890365.html

今度の参院選の投票では参院選1人区(全国29区)においても民主党には決して投票しないという態度を有権者として保持することはとても重要だと私は思います。民主党にも自民党にも投票しないということになれば、自民党でも民主党でもない共産党、もしくは社民党に投票するということになりますが、それがどうしてもイヤな場合でも、棄権してでも民主党には決して投票しないようにしよう。私の呼びかけはそういうものです。政権交代の酔いから私たちはそろそろ醒める必要があるのではないでしょうか。

by 東本高志
posted by 風の人 at 23:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 一般
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