多くの有権者が総選挙で民意を問え、と主張していますが、本当にそれでいいのでしょうか。現在の選挙制度は民意を正確に測ることができません。首相選択に関する民意を問いたいのであれば、総選挙ではなく、新聞世論調査で済むかもしれません。もっとも、それが執行はされませんが。
例えば2005年郵政選挙は、郵政民営化国民投票ともいえる、不当に矮小化された総選挙でした。民意を不当に超える議席数を自公に与え――小選挙区では得票率49%で76%もの議席を獲得――、民意との「ねじれ」をもたらし、教育基本法の改定や国民投票法の成立を許しました。民意を問うた結果が現在の事態をもたらしたのです。
現在の選挙制度の下では、あらゆる選挙結果は不当である、という一貫した認識を有権者は持つべきです。現在の選挙制度では総選挙で民意一般を問うことはできません。小選挙区比例代表並立制の下での「政権選択」に正当なお墨付きを与えることはできないのです。
現在の選挙制度のまま「民意を問え」と言って総選挙を行ったのでは、その結果としての「政権選択」に、不当なお墨付きを与えてしまいます。
首相の意向一つで一国の政治が左右される政治のあり方を認めるべきではありません。誰が首相になっても構わない政治を有権者は目指すべきです。
単独過半数政権を実現したり、衆参の「ねじれ」を解消したりして政治の安定を、という主張はほとんど主権の放棄です。議会がどういう政党構成であっても、常に民意に従った議会運営をしてもらわなければ困ります。誰々の首相に政権を任せるとか、どこの政党に議会を任せるという発想はしないほうがいい。
安倍・福田首相辞任騒動の本質は、個人の責任・資質問題にあるのではなく、政党が有権者と大連立していない、有権者の声を聞いていない上に、自民党総裁・首相という存在が、政党内部の圧力や外圧にさらされる、孤立無援の存在だということにあるでしょう。
自公政権が、誰が首相になってもすぐ辞任せざるを得ないほど脆くなってきた、とみるべきではないでしょうか。首相の自己責任だけの問題ではない。福田さんらも、その意味で可哀想な存在です。福田さんの辞任表明が、どこまで計画的な自民延命策なのかどうか、私には分かりません。世間ではそうした見方がありますが。
自公政権という形は確かに脆くなってきたが、自公民体制では、重要法案に対する態度で違いが見当たらないケースがあります。安倍−福田政権を通じた期間でさえ、自公政治の重要部分は十分に機能してきたのです。宇宙軍拡をもたらす宇宙基本法も自公民の数時間審議ですんなり成立しました。
今度の総選挙で民主党が消費税率据え置きを公約に掲げても、また自衛隊派兵恒久法の凍結を暗に掲げたとしても、据え置きや凍結というレベルでしかないことが懸念されます。ここが「民意を問う」ことのもう1つの側面ですが、野党連合による政権交代は、大いに意義あることです。自民と民主がまったく同じということはない。共産・社民などがキャスティングボードを握れば、まさに「凍結」が可能になるのです。自公民体制の転換は意味があります。
有権者が一番先に要求すべきは、民意が反映される選挙制度の改革を有権者主導で行わせろ、ということであって、それができた後で初めて民意を問え、と要求することができます。
太田光征
比例区定数が100に削減された場合の衆院選比例区シミュレーション
http://kaze.fm/wordpress/?p=229
【一般の最新記事】
- 【要対策】2月からMicrosoftアカ..
- 立憲民主党:経済秘密保護法案は廃案に
- ガザ・ジェノサイド:国連総会決議377号..
- 立憲民主党御中:ガザせん滅作戦の即時停止..
- 立憲民主党御中:長射程ミサイルの容認は撤..
- Fwd: [uniting-peace:..
- 【署名】ウクライナの平和主義者ユーリー・..
- 【講演会動画】作られる台湾有事(講師:..
- 立憲民主党:軍需産業強化法案(防衛生産基..
- 小西ひろゆき議員の参院憲法審査会筆頭幹事..
- 敵基地攻撃能力=先制攻撃能力には反対を
- 経済安保法「基本方針案」のパブコメ(20..
- 【沖縄県知事選2022】玉城デニー氏のさ..
- ウクライナ危機:日本の国会とメディアは情..
- ウクライナ危機:安保構築の提案なき侵略戦..
- 市民運動の一環ないし前提としてのパソコン..
- 2022年名護市長選の重大な争点:旧消防..
- 2021年衆院選:比例区選挙における死票..
- 2021年衆院選:立憲民主党は比例区で自..
- 2021年衆院選:共・社への野党統一選挙..
TB有難うございました。
>例えば2005年郵政選挙は、…(中略)…民意との「ねじれ」をもたらし、教育基本法の改定や国民投票法の成立を許しました。
本当にそうでしたね。
解散総選挙で「民意を問う」と言っても、どういう民意が反映されたかは、不確かなのでしょうね。