日本の首長選挙は、単純小選挙区制で行われますから、そもそも、選挙の段階で民意を反映しません。有効投票率や過半数得票率、決選投票制度などの規定がないので、わずかな有権者の「支持」でも当選可能です。
ちなみに、小選挙区制でもより民意を反映しようとする選挙制度があります。例えば、フランスの国政選挙は決選投票制(2回投票制)を、オーストラリア下院はすべての候補者に選好順位をつける優先順位付き連記投票制を採用しています。ただし、複数の議員を選ぶ国政選挙で小選挙区制を採用することは、民意を反映しないので、問題です。
[参考]
小選挙区制の廃止へ向けて
http://kaze.fm/wordpress/?p=215
オーストラリア下院の選挙制度は優れているか?
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/89557778.html
日本ではさらに、首長の権限が巨大で、議会による抑制が効きません。議会は政策立案にほとんど関われない。つまり首長選というのは、民意を反映しない独裁君主を選ぶ選挙といってよいのです。市民はいわば自らの首を絞めざるを得ない制約の中で、選択を強いられています。
このように、そもそも、首長の権限も含めた行政のあり方や、首長選挙の方法に問題があります。ヨーロッパなどでは、議会の中から首長職機関を選任し、議会中心の行政運営をしているところが多い。だからその議会を民意の縮図となるようにするために、比例代表制を採用するなど、議会選挙のあり方からこだわっている。民主的な議会・行政システムを巡って、ヨーロッパと日本では違いが大きすぎます。
[参考]
首長選挙は本当に民主的な制度?
http://fusao.jp/greens_chiba_20080720.html
議会と首長の二元代表制度はやめよう
http://fusao.jp/reform1_20080503.html
熊本県知事蒲島郁夫氏の非民主性について
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/103752527.html
今回の山口県知事選、現職は嫌だが、新人もイマイチ、だから棄権する。結果、現職の追認となる――から選挙を無効にしたい有権者も多いかもしれません。「選挙を無効にしい」…こういう思いも大事です。単に選挙に関心がないのではなく、そういう思いをしているなら、少し長い時間的視野で、何らかの手立てを考えてください。
自治体選挙では、今回の山口県知事選に限らず、与野党相乗りの首長選、議会があってないような独裁君主選が今後も続くことでしょう。現在の土俵で首長=人物を選ぶのは非常にむなしい。
ならば、民主的な選挙制度・行政機構改革に将来的につながるような、具体的にはそれらに積極的な政治勢力を伸ばすなど、当面の首長=人物を選ぶというのとは違う目的意識で、投票行動を考えてみる。
画一的な選挙制度を強いる公職選挙法や地方自治法の改革を含め、選挙制度・行政機構改革につなげていくような投票行動を国政選挙でも取っていく。政権交代をめざす政党が、政権交代を阻害する小選挙区制――野党が得票率で勝っても、議席数で与党に負けることがある――を支持していることも大いなる矛盾。
選挙にむなしい思いをしている皆さんには、選挙制度・行政機構改革につながるような投票行動をお勧めしたいと思います。
国政選挙であれば、「野党住み分けバーター投票」。1人区では野党候補の共倒れを防ぐ必要があります。そのために、候補者を一本化――「平和共同候補」が望ましい――するか、あるいは票を特定候補に集中させなければなりません。1人区では、いずれにしても、勝てる候補に票を一本化します。こうして死票を防ぐ。
そこで、「勝てる候補」が所属する政党(もっぱら民主党でしょう)の支持者でない有権者にも、その候補に投票してもらう必要があります。そいう動機付けのためにも、比例区・複数定数区では、それ以外の選挙制度改革に前向きな政党(共産・社民など)に投票する――これが、「野党住み分けバーター投票」です。
じゃあ、今度の山口県知事選ではどうするか?皆さんで考えてほしいのですが、こちらの記事を参考にしてください。
[参考]
上関原発と選挙:山口県知事選挙は「仁義ある戦い」になるか?
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/102955524.html
どうしても今回、誰にも投票したくない、という場合、投票用紙に選挙制度の無効を訴える意見を書き込む「意見投票」をお勧めします。白票よりは、なんらかの変化を期待できます。もしかしたら、当選候補のリコールにつながるかもしれませんから。
太田光征
http://otasa.net/
(「有効得票率」を「過半数得票率」に訂正しました。)
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