2008年07月14日

小選挙区制の過半数偽装効果と三乗法則

平和への結集ブログの記事「小選挙区制の廃止へ向けて」に新項目「小選挙区制の過半数偽装効果と三乗法則」を追加しました。

「小選挙区制では、三乗法則があるから、過半数に満たない得票率でも議席の過半数を獲得することができる」とする考え方は間違いです。

 
 小選挙区制については、得票率と議席数の関係に関して、「三乗法則」といわれる経験則が指摘されている。例外が実際にはある。

 「小選挙区制で、全国的な二大政党が争うと、両党の議席は、両党の得票率の三乗に比例する」「このような三乗法則は、イギリスの統計学者によって、両党の各選挙区における得票率が、ある数学的性質を充たす場合は、成立することが証明された」(西平重喜『比例代表制』、 中公新書、1981年)。

 二大政党AとBがあって、Aの全体得票率が50%未満であっても、Aが過半数の選挙区でトップ当選すれば、議席の過半数を獲得できる。

 このように、小選挙区制の「多数派偽装」効果は、第一義的に、全体得票率が50%未満でも、各選挙区での得票率が相対的にトップの候補だけを当選させることに起因する「過半数偽装」効果といえる。これが小選挙区制の致命的効果であって、三乗法則は、「全国的な二大政党」が争った場合の、議席の過半数を超える部分に関する定量的な表現に過ぎない。

 三乗法則の有無に関わらず、小選挙区制であっても、政党が議席の過半数を制するには、過半数の選挙区で得票率がトップになる必要がある。

 善良な政党連合と悪辣な政党連合があり、前者の支持率・得票率が後者のそれよりも低いとする。この場合、悪辣政党連合が候補者を一本化せず、分裂選挙をすることで、統一候補を立てた善良政党連合が過半数を獲得できる場合がある。これを、「全国的な二大政党」の存在を前提とする三乗法則の効果に起因すると考えるのは、間違い。そうではなく、単に、上述の過半数偽装効果による。

 小選挙区制が過半数偽装効果でもって善良政党連合に有利になることはあるが、分裂選挙は善良政党連合にも起こり得るので、小選挙区制が善良な選挙制度であるとはいえない。


太田光征

中選挙区比例代表併用制を提案する
http://kaze.fm/wordpress/?p=164
posted by 風の人 at 01:06 | Comment(0) | TrackBack(4) | 一般
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