麻生太郎様
国連で、軍縮局を政治局に吸収させる組織改革が検討されていると聞きました。
アメリカはこれまでイラクやアフガニスタンなどに、大量の劣化ウラン弾を廃棄し、それらの住民と土地を汚染してきました。戦時以外の各国の軍事演習でも、大量のエネルギーと資源が浪費され、環境汚染を引き起こしています。これ以上、戦争と軍拡を続けていては、地球が持ちません。もはや軍事は国益に反します。
軍縮局が廃止されれば、アメリカのような軍事・武器大国にこれまで以上に左右される懸念が大です。独立局を維持する必要があります。日本は軍縮局の廃止にストップをかけるよう、率先して行動をお願いします。
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以下の梅林宏道さんの呼びかけに応じて、私も外務省に上記をFAXしておきました。
太田
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ピースデポの梅林宏道です。
最近の報道によると、潘基文事務総長が国連軍縮局を政治局に吸収さ せる組織改革を行おうとしているようです。
これは、私たちにとって極めて憂慮、警戒すべき動きです。軍縮NGOはこれを止めさせようと、国連事務総長および各国政府に働きかける
よう呼びかけています。
先ほど、外務大臣に添付のような手紙をFAX(03−3581−9442)しました。
また、以下に背景情報も貼り付けました
同様な趣旨を国連事務総長にも送る準備をしています。皆さんも、ぜひ要請をお送り下さい。
梅林宏道
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梅林宏道
NPO法人ピースデポ代表
PCDS(太平洋軍備撤廃運動)国際コーディネーター
〒223-0051 横浜市港北区箕輪町3−3−1
電話: 045-563-5101 (事務所)
FAX: 045-563-9907 (事務所)
ウェブ:
http://www.peacedepot.org (ピースデポ)
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要請:国連軍縮局を無くさないように緊急に行動してください
拝啓、麻生太郎外務大臣様。
私は、NPO法人ピースデポ ― 平和のための教育、調査、情報活動に従事する市民組織 ― を代表してこの手紙
を書いています。私たちは、とりわけ、核兵器の廃絶と東北アジア非核兵器地帯設立のために努力しています。
この手紙の目的は、国連軍縮局 (DDA) を今後も維持するよう日本政府が緊急に行動して下さるよう要請することにあります。これまで独自の任務と担当事務次長を有して活動してきたDDAが政治局に吸収されてしまうかもしれないという最近の情報に接して、私たちは大変憂慮しています。この情報通りになるとすると、これは、国連がその任務を全うする面においても、また政府間の会合や条約上の組織に奉仕する面においても、好ましくなく、不必要な変化であると思います。
核軍縮を求める国連総会決議や、「世界の人的及び経済的資源を軍備のために転用することを最も少なくして」(第26条)という国連憲章のビジョンに明示されているように、軍縮は国連の中心的任務の1つです。国連は、DDAを別の国連組織の一部にするのではなく、独立した
組織として維持し、国連に本来託された任務にしたがって、事務機構においても軍縮を優先させるべきだと思います。
私たちは、昨年末にアナン前国連事務総長が、「核兵器は人類が直面している最大の脅威であるにもかかわらず、それに対処すべき共通戦略が完全に欠如している」と訴えた演説に強い感銘を受けました。核兵器のみならず、その他の大量破壊兵器、また小火器によってもたらされる問題が増大しているいまの時期に、国連は組織内における軍縮の地位を低めるべきではありません。DDAは、冷戦後の軍縮問題に取り組むために設置されたものですが、今まで以上にそれは必要とされているのです。さらには、現在、世界的な軍縮の仕組み、規範、また体制が争点になっています。DDAという、国連の決定を履行する責務を有する第一義的な世界的機関の地位を低下させることは誤った方向であります。
軍縮問題を第一義的な関心事とする任務と事務次長を持ってDDAが組織体として存続することが重要です。また、核軍縮を扱う部局が非核兵器国出身の事務次長に仕えていることが重要です。こうすることで、DDAは、軍縮を最終目標とした独立の評価を行うことができます。DDAには長年の専門知識と組織的実績がありますが、これは政府や市民社会にとって不可欠のものであり、異なる部局の下ではいつの間にか失われてしまう可能性があります。さらに、軍縮はたいへん技術的な分野です。軍縮に専念する部局があると、他の分野の諸問題を扱い軍縮問題に不慣れな部局を通じて処理するよりも、もっと迅速に決定を下すことができます。
DDAは、自らの事務次長を通して事務総長に直接仕える、貴重なアイデンティティー、権限、そして能力を失ってはなりません。DDAの実
務量と技術的な性質を考えると、そのためだけに専念する局がどうしても必要であり、DDAがカバーすべき問題は、DDAの吸収どころか拡大を必要とするほど急を要するものです。
現在のDDAを統括する国連事務次長は田中信明大使でありますし、それ以前にも阿部信泰大使、明石康大使と、日本人が国連軍縮局で重要な役割を果たしてきました。広島、長崎を経験した被爆国日本のこの分野での果たすべき役割は極めて大きいと思います。軍縮問題に取り組む国際的なNGOも、DDAの存続に対して、日本政府が強い影響力を発揮することを望んでいます。
外務大臣の積極的な行動を切にお願いする次第です。
敬具。
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背景情報
(1) 核軍縮を後退させる国連の組織変更計画
1月9日付の米有力紙ワシントン・ポストによれば、潘基文新国連事務総長は、 国連事務局の軍縮局を政治局に吸収することを検討。 その新しい政治局長には米国のパスコウ駐インドネシア大使が考えられている。 PKO局にPKO局の調達、人事、兵站を担当する新しい幹部ポストを作って、そこに日本人を起用するなどの国連組織の統合計画案を検討しているという。
潘事務総長はすでに国連総会の地域グループ代表にこの統合計画の根回しを始めたようで、紛争後の平和構築を調整する部局も拡大した政治局に吸収してしまおうという計画である。
軍縮NGOの国連軍縮局窓口であるニューヨークのNGO「リーチング・クリティカル・ウィル」によれば、報道は真実であり、事態は急を
要する状態にあるという。とりわけ、日本政府の意見が鍵を握ると「リーチング・クリティカル・ウィル」は強調している。
国連の大きな使命のひとつに軍縮の推進があることを考えると、潘事務総長の計画はいささか憂慮せざるを得ない。
現在の国連軍縮局を統括する国連事務次長(軍縮担当)は日本の田中信明大使であり、前任は阿部信泰大使であり、さらに前には明石康氏などが歴任している。
(2) 国連軍縮局の紆余曲折の歴史
・92年はじめに新任早々のブトロス・ガリ事務総長が同局担当の明石事務次長(当時)をカンボジアのUNTAC代表として任命した後、後
任の事務次長を任命しなかったことから局からセンターへと格下げとなり、政治局に吸収された。
ガリ事務総長は冷戦も終わり軍縮の時代は終わった、これからは平和維持のための行動の時代であるとしていたが、その後この考え方を訂正し
た。
・その後、97年初頭にアナン前事務総長が就任し、同年6月に開催された事務総長軍縮諮問委員会で意見提出を求めた。同諮問委としては国連の軍縮関係の仕事は軍備登録制度や小型武器問題、対人地雷問題などの通常兵器の「実際的軍縮」関係の仕事が激増したこともあり、局体制に戻すべきであるとの意見書を提出した。これを踏まえてアナン前事務総長が国連総会で7月16日に行った報告で軍縮局復活の方向性を打ち出し、同年秋の国連総会でこれが承認され、98年1月にダナパラ元事務次長を長とする軍縮局が復活した。
・国連の役割の中で軍縮が占める役割は極めて重要であり、以上に述べた通常兵器軍縮だけでなく、それ以上に、核、化学、生物兵器などの大量破壊兵器軍縮が占める比重が大きいことは言うまでもない。この数年間は軍縮全般にとり逆風が吹き荒れており国連軍縮局が消えることは避けるべきである。