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序論
この映画の監督は、1968年生まれの新進気鋭の監督である。彼はすでに大学生の時から、芝田進午さんが取り組んでいた環境・住民運動の国立感染症研究所の主任研究官新井秀雄さんを描いた映画『科学者として』を制作していた。
新井さんは、国立感染研の要職にあったが、住宅密集地にバイオ科学の実験施設があって実験することに、内部からクリスチャンとしての信念に基づいて、問題点について告発していた。私はその映画をBOX東中野で鑑賞し、映画に感動するとともに、新井秀雄さんの生き方に共鳴を覚えた。しかし、このドキュメンタリー映画を監督として制作したのは、なんと当時法政大学の学生だった本田孝義氏であった。
その本田氏が、大学卒業後に、八作の映画作品を制作し、次回に上映されるのが映画『モバイルハウスのつくりかた』なのだ。以下、映画紹介のHP
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にもとづいて、芝田先生を仲立ちとした不思議な縁の友人本田孝義作品を紹介したい。
1 映画のこと
@建てない建築家・坂口恭平 初のドキュメンタリー
「建てない」建築家がいる。−−−名前は坂口恭平。
「0円ハウス」「ゼロから始める都市型狩猟採集生活」といった著作で現代のライフスタイルに問いを投げかけ、故郷の熊本につくった“ゼロセンター”で新しい生き方を模索する。
坂口さんは早稲田大学建築学科在学中に路上生活者の家と出会い、家について、都市について、生活について根本的に考えることを始めた。
なぜ、建築家は巨大な建築物を建てるのだろう? なぜ、私たちは身の丈に合った巣のような家を建てることが出来ないのだろう?
数々の著作で路上生活者の生活をレポートしてきた坂口さんは、2010年11月、ついに初の建築作品“モバイルハウス”の製作にとりかかる。
A僕の先生は多摩川のロビンソンクルーソー
坂口さんを手ほどきする「師匠」は多摩川の河川敷に長年暮らす“多摩川のロビンソンクルーソー”。材料はホームセンターで購入。しめて制作費26,000円。二畳の家に移動用のかわいい車輪付き。師匠の叱咤激励を受けてようやく完成、設置場所は吉祥寺の駐車場。多摩川から設置場所の吉祥寺に移動という前日、東日本大震災が起こった……。
住むとは? 暮らすとは? 生きるとは? ここには私たちが生きていくためのヒントがいっぱい詰まっています。
2 坂口恭平さんのこと
坂口恭平(建築家/作家)
1978年熊本生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業後、2004年に日本の路上生活者の住居を収めた写真集『0円ハウス』(リトルモア)を刊行。
2006年カナダ、バンクーバー美術館にて初の個展、2007年にはケニアのナイロビで世界会議フォーラムに参加。
2008年、隅田川に住む路上生活の達人・鈴木さんの生活を記録した『TOKYO 0円ハウス 0円生活』(大和書房・河出文庫)を刊行し、翌2009年には自身も実際に多摩川生活を経験する。
他の著作に『隅田川のエジソン』(青山出版社・幻冬舎文庫)、『TOKYO一坪遺産』(春秋社)『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』(太田出版)がある。
2011年3月、故郷の熊本市に移住し“ゼロセンター”を開設。“新政府”樹立を宣言し初代内閣総理大臣を名乗る。
また、2012年5月26日から自身の『TOKYO 0円ハウス 0円生活』『隅田川のエジソン』を原作とした劇映画『MY HOUSE』(監督:堤幸彦)が公開予定。坂口恭平著『モバイルハウスのつくりかた』は2012年8月頃、集英社新書にて刊行が予定されている。
3 本田孝義監督のことば
僕が始めて坂口恭平さんのことを知ったのは、2008年、東京都現代美術館で開催された「川俣正 通路展」での川俣さんと坂口さんのトークショーでした。僕のお目当ては川俣さんだったので、実はそれほどよく覚えていません。
しばらくして、坂口さんの著作「TOKYO一坪遺産」をたまたま書店で手に取り、興奮して読み終えました。普段見過ごしている空間を鮮やかに描いた本でした。著者に興味を覚え、インターネットで検索すると坂口さんのホームページを発見。日記を丹念に読んでいくと、銀座4丁目に所有者不明の土地があり、そこに家を建てようとしていることが書かれていました。あんな面白い本を書く人がどんなものを建てるのか、見てみたくなってメールをお送りしたところお会いすることが出来ました。(銀座での企画は今のところ実現していません。)
坂口さんがフィールドワークする姿を追いかけても面白い作品になったかとは思うのですが、僕は「建築家・坂口恭平」としてどういう建築を作るのかを見てみたいと強く思っていました。
しばらく、そうしたチャンスはなかったのですが、2010年3月、「BO菜 ボートと野菜が東京を救う」という、防災とアートを絡めたイベントの中で坂口さんが「災害時に役立つ0円ハウスのつくり方」というワークショップをすることを知り、このワークショップを撮影させてもらったのが本作のスタートです。2011年3月11日以後、このワークショップを振り返ってみれば何か示唆的なものを感じます。
その後、坂口さんは2010年8月に「ゼロから始める都市型狩猟採集生活」を出版。この前後におびただしい数のトークショーを行っています。僕もほぼ全てのトークショーを撮影し、その一部を本編に使っています。
2010年11月、多摩川の河川敷にて、モバイルハウスの製作が始まります。正直言って、それまで撮影を続けていたにも関わらず、とても映画になりそうにはありませんでした。しかし、坂口さんと多摩川のロビンソンクルーソーの関係を撮影した時から、これは映画になる、という確信を得ました。
話は前後しますが、僕は2003年に『ニュータウン物語』というドキュメンタリー映画を作っています。この作品は、岡山県の自分が育った山陽団地というニュータウンの歩みを描いた作品です。当時、郊外論が盛んに論じられていて、郊外の負の側面が取り上げられていた反発から、自分が育った街を肯定しようと思い作った作品でした。しかしながら、この作品を作る際に、日本の住宅政策を調べる中で、住宅ローンを基本とした持ち家政策がとられてきたことに疑問を持っていました。(しかし、その疑問はこの作品では封印していました。)また、近年は非正規雇用の増大を背景に家に住むことすら奪われる状況に危機感を持ちました。
坂口さんが作ったモバイルハウスは、僕が持っていたこれらの疑問に直接答えを出すものではないかもしれませんが、ヒントはあると思いますし、家について考える契機になると思います。
ホームセンターから買ってきた角材を切って、組み立てられていくモバイルハウスを撮影しながら、僕は妙なすがすがしさを感じて興奮していました。そのすがすがしさが少しでも伝わればと今は思っています。
本田孝義
1968年岡山県生まれ。法政大学卒。5本の長編ドキュメンタリー映画を製作するのと並行して、多数の現代美術展で映像作品を発表している。主な作品に『科学者として』(1999)、『ニュータウン物語』(2003)、『船、山にのぼる』(2007)がある。
4 いろんなひとのコメント
五十嵐太郎(建築評論家)
この映画がとらえているのは、
坂口恭平のつくる新世界のスタート地点というべきものだ。
反建築家は、社会の「建築家」に向かっている。
※ 五十嵐太郎さんの原稿の全文は、映画パンフレットに掲載します
鎌仲ひとみ(映画監督)
「常識のデストロイヤー坂口恭平が作ったモバイルハウス。
誰しもが「かっこいい〜!」と言ってしまうのは、
現代の「方丈」=「ゼロハウス」が心の自由に通じているから。
そんな自由な精神を透明なまなざしで映し出した痛快映画!!」
石川直樹(写真家)
覚醒した男、坂口恭平のことを本当に知るには、
実際に会うか、この映画を見るしかない。
5 制作日誌
「モバイルハウスのつくりかた」のつくりかた
http:// mobileh ouse-mo vie.com /nikki. html 【随時毎週金曜日更新中】
6 リンク
坂口恭平http:// www.0ye nhouse. com/hou se.html
映画『MY HOUSE』(監督:堤幸彦、原作:坂口恭平)http:// myhouse -movie. com/
ヒポ コミュニケーションズ(録音)http:// www2.go l.com/u sers/hi ppo-com /
VIDEO ACT http:// www.vid eoact.j p/
ZERO PUBLIC坂口恭平新政府領土拡大計画 http:// www.zer o-publi c.com/
あらかじめ決められた恋人たちへ(音楽) http:// arakaji me.main .jp/
映画『船、山にのぼる』(本田監督の前作)http:// www.fun e-yama. com/
映画『渋谷ブランニューデイズ』(本田監督が応援している映画) http:// www.shi bu-bra. jp/
7 上映情報
@─東京─
ユーロスペース
6/30[土] 〜
連日21:00より【7/19(木)のみ休映】
※7/7[土]、8[日]、14[土]、15[日]、16[月・祝]、21[土]、22[日]の週末は
モーニングショー[AM9:50〜]がございます
詳細はこちらhttp:// www.eur ospace. co.jp/d etail.h tml?no= 399
坂口恭平さん画 “かわいいモバイルハウス”
イラストポストカード付き(限定数・劇場窓口のみ)
特別鑑賞券¥1400発売中!!
A─熊本─
映画「モバイルハウスのつくりかた」特別先行上映
日時:6/16(土)19:00〜(一回のみ上映)
場所:熊本Denkikan
※上映後、坂口恭平さんと本田孝義監督のトークショーを予定
詳細はこちらhttp:// denkika n100.bl og.fc2. com/pag e-1.htm l
B─大阪─
シネヌーヴォ【夏公開】
詳細はこちらhttp:// www.cin enouvea u.com/c oming/c oming.h tml
C─福岡─
IAF SHOP*
7月13日(金)19:30 14日(土)17:00/19:30 15日(日)17:00
16日(月・祝)17:00 20日(金)19:30 21日(土)17:00/19:30
22日(日)17:00 以上9回上映予定です。
詳細はこちら http:// urugall esk.exb log.jp/ 1757212 9/
D─京都─
京都みなみ会館
【秋公開】詳細はこちらhttp:// kyoto-m inamika ikan.jp /show
E─名古屋─
シネマテーク【秋公開】
詳細はこちらhttp:// cineast e.jp/(まだ上映日は未定、会場映画館がわかります。)
【櫻井 智志】