2016年04月25日

衆議院北海道5区補選の分析:池田まき氏の落選は残念だが野党統一候補のメリットを示す

訂正(4月25日):18歳選挙権の施行期日を勘違いしていました。2015年6月19日が公布で、施行が1年後からなので、2016年6月19日から、つまり今夏の参院選からの適用となります。お詫びして訂正します。分析結果には影響しません。

池田まき氏の選挙に関わった皆さん、お疲れさまでした。結果は残念ですが、以下の分析に示すように、野党統一候補のメリットを確認できたことは、来る参院選と衆院選へ向けての大きな成果です。

選挙結果は北海道選挙管理委員会が公表しています。

衆議院北海道第5区選出議員補欠選挙投・開票速報 | 北海道選挙管理委員会
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hs/shugihosensokuho.htm

自民党候補・和田よしあき氏の得票数135,842票と野党統一候補・池田まき氏の得票数123,517票の比は1.10となっており、2014年衆院選北海道5区での自民党候補・故町村信孝氏の得票数131,394票と民主党候補・勝部けんじ氏の得票数94,975票の比1.38を下回っています。

前回は自民・民主に加え共産の鈴木龍次氏が立候補して31,523票を獲得しており、3人の合計得票数は257,892票、投票率は58.43%でした。今回の2人の合計得票数は259,359票で、投票率は57.63%です。

今回の当日有権者数は455,262人で、無効投票数は3,009票です。前回の当日有権者数(無効投票数)がすぐに分からないので、今回と同数の無効投票数が発生したと仮定して推計すると446,519人となり、今回より若干少なくなっています。

今回、投票者数が若干増えて投票率が若干低下したのは、おそらく未成年者が有権者に加わって有権者数が増えたものの未成年者層が低投票率に終わったことによるものと想像できます。

このように投票者数に若干の変化はあるものの、前回投票者のほとんどが今回の補選で投票したと見なしてよいでしょう。

前回の共産党候補の31,523票と民主党候補の94,975票を合わせると126,498票となり、前回の自民党候補の得票数131,394票とこの合計得票数126,498票の比は1.04となります。

前回と今回を比べて、合計得票数が1,467票増え、自民党候補の得票数が4,448増えていますが、民主ないし共産に前回投票して自民に今回投票した有権者は、増分の1,467票がすべて池田まき氏に流れたと仮定して(これはこれで野党統一候補および池田氏個人が高く評価されたことになる)、最大限野党に厳しめに推測しても、この4,448人しかいません。これは前回の民主党候補の94,975票のわずか4.7%でしかなく、前回の共産党候補の31,523票が加算されるメリットの方が優に上回ります。

以上から、今回の自民党候補対野党統一候補の比1.10が前回の自民党候補対民主党候補の比1.38を下回ったことは、今回の野党統一候補が自民党候補に対抗する上で14年衆院選の民主党単独候補や共産党単独候補よりメリットがあったことを示しています。

太田光征
posted by 風の人 at 02:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | 選挙共同

2016年04月05日

民進党に野党選挙共同の促進と小選挙区制の廃止を要望

2016年2月2日、下記の要望書と街頭世論調査中間報告書を基に、野党選挙共同と小選挙区制の廃止などを民主党に要望しました。応対していただいたのは幹事長代理の近藤昭一衆議院議員です。

戦争法「成立」を受けての野党に対する要望書(2015年12月17日訂正版)
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/431413716.html
街頭世論調査「次の国政選挙、どこに投票する?/小選挙区制に賛成・反対?」
http://kaze.fm/documents/Street_Poll_Report_20160222.pdf

世論調査の最終結果がまとまったので、本日4月5日、吉岡滋子さんと共に民進党の衆議院控室を訪ね、民主党から移行した民進党に同様の申し入れをしました。今回対応していただいたのも近藤昭一衆議院議員です。

SANY20160405small2.jpg


今回は、下記要望書で特に参院選3人区での「1党1候補」原則も要望させていただきました。

野党選挙協力の促進を求める要望書
http://kaze.fm/documents/20160405Request.pdf
野党選挙協力の促進を求める要望書.pdf

例えば、来る参院選の千葉県選挙区では小西ひろゆき参議院議員のほかに水野賢一参議院議員が民進党から公認される可能性が指摘されていますが、同一の野党が3人区で2人を当選させることは困難でしょう。

千葉では未来を決める千葉の会などが小西ひろゆき参議院議員と浅野ふみ子さんを応援することにしています。

未来を決める千葉の会は2016年参院選で小西ひろゆきさん、浅野ふみ子さんを応援することに決定 | 民主党の小西ひろゆきさんと、共産党の浅野ふみ子さんを応援します。
https://miraichiba2016.wordpress.com/2016/03/19/%e6%9c%aa%e6%9d%a5%e3%82%92%e6%b1%ba%e3%82%81%e3%82%8b%e5%8d%83%e8%91%89%e3%81%ae%e4%bc%9a%e3%81%af2016%e5%b9%b4%e5%8f%82%e9%99%a2%e9%81%b8%e3%81%a7%e5%b0%8f%e8%a5%bf%e3%81%b2%e3%82%8d%e3%82%86/

新聞報道などで野党選挙共同のネックが共産党と組むことによる保守票の逃避だと指摘されていますが、「共産を含む野党統一候補」を忌避する野党支持保守層がいると仮定しても、東京でも全国平均でも同候補にメリットがあることを今回の客観的な世論調査結果でシミュレーションできると説明したところ、近藤議員には貴重な資料だとおっしゃっていただきました。

近藤議員本人も一層の選挙協力が必要だというお考えですので、民進党には党を挙げて衆院選を含めて野党選挙共同を加速していただきたいと思います。

上記世論調査では小選挙区制反対が民意であることも明らかになっています。定数削減と1票の格差だけの選挙制度論議を越えて、小選挙区制の廃止を国会の俎上に載せてもらうよう、改めて要望しました。

太田光征



「野党選挙協力の促進を求める要望書」の内容を転載しておきます。

野党選挙協力の促進を求める要望書

2016年4月5日


民進党御中

 野党選挙協力に向けての貴党の努力に感謝します。
 当団体は2016年2月2日、近藤昭一・旧民主党幹事長代理に下記の要望書と街頭世論調査中間報告書を基に同様の申し入れをさせていただきました。世論調査の最終結果が確定しましたので、ご報告して、改めて野党選挙協力について要望させていただきます。

・戦争法「成立」を受けての野党に対する要望書
・街頭世論調査「次の国政選挙、どこに投票する?/小選挙区制に賛成・反対?」

 投票先の質問では、得票率が自民党で33.0%、旧民主党で12.8%、共産党で20.2%、共産を含む野党統一候補で10.6%などとなり、野党第一党が共産党に交代した結果、旧民主党支持者の一部などが同統一候補に投票せず自民党に投票すると仮定しても、1人区における同統一候補は東京でも全国平均でも2014年衆院選の民主党単独候補よりメリットがあるとシミュレーションできます。
 衆院選を含む1人区での野党選挙協力を一層進めていただきますよう、お願いいたします。
 また、野党第一党の交代により、3人区で貴党から候補者2人の当選はかなり厳しいと思われますので、3人区では1党から候補者1人という原則を要望させていただきます。4人区以上でも同様の配慮が必要と思われます。
 小選挙区制の質問では、全体で63.5%、民主党を選択した層で68.0%、維新の党を選択した層で50.0%が小選挙区制に反対していますので、小選挙区制の廃止も国会の俎上に載せていただきたいと思います。
 以上、よろしくお願いいたします。

「平和への結集」をめざす市民の風

〒271-0076 千葉県松戸市岩瀬46-2 さつき荘201号
tel/fax:047-360-1470
http://kaze.fm/
join@kaze.fm
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2016年02月14日

社会民主党に野党選挙共同と小選挙区制の廃止などを要望

2016年2月2日の民主党幹事長代理・近藤昭一衆議院議員との面談に引き続き、2月12日に太田と大塚要治さんの2人で社民党幹事長・又市征治参議院議員の川村訓史秘書および中川直人党組織局長と下記要望書と街頭シール投票「次の国政選挙、どこに投票する?/小選挙区制に賛成・反対?」の報告書を基に面談してきました。場所は又市幹事長の国会事務所です。

戦争法「成立」を受けての野党に対する要望書(2015年12月17日訂正版)
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/431413716.html

また、生活の党と山本太郎となかまたちにも面談の申し込みをしたものの、国会議員が少なく対応できないという返事を2月3日にいただいたので、2月12日に党本部を訪問して要望書と報告書を直接手交しようと思いましたが、不在でしたので、ポストに投函してきました。さらに、同党の山本太郎参議院議員の国会事務所を訪ね、秘書の方に要望書と報告書を手渡しました。

同調査では、共産党を含む野党選挙共同の意義を示す実態、小選挙区制に反対は全体で64パーセント、民主党を投票先に選んだ層で68パーセント、社民選択層で87パーセントに及んでいる実態などが明らかになっています。

さて面談ですが、中川組織局長は安保関連法の廃止については引き続き努力していくと表明され、野党選挙共同については3人区以上では各党がそれぞれの選挙をすべきで、協力するのは32ある1人区だと主張されました。こうした考え方は各党も同じだろうとも。協力の仕方は無所属方式などいろいろある、他党に言えることは限られる、との認識です。

参院選へ向けて共産党提案の国民連合政府という条件での選挙共同はハードルが高く、安保関連法廃止のためという目的が現実的だと指摘されました。

要望書にある通り、小選挙区制が国民主権レベルで立憲主義を破壊している、立憲主義の回復という場合に小選挙区制の問題をもっと訴えてほしいと要望しましたが、これについて特にコメントはされませんでした。

野党が選挙で勝つことは望ましいのですが、勝てば勝ったで野党第一党に勝たせるべきだ、第二党以下は選挙で降りるべきだ、との圧力が依然として維持され、小選挙区制廃止のモチベーションは高まらず、政策があいまいな野党がいつまでも続くことになります。

政権交代しないと小選挙区制は廃止できないと先送りするより、政権交代の前に、本来であれば全党で、少なくとも野党の間で、小選挙区制の廃止で合意してもらうよう、市民が働きかけるべきでしょう。

太田光征
posted by 風の人 at 15:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 選挙共同

2016年02月05日

民主党に野党選挙共同と小選挙区制の廃止などを要望

2016年2月2日に太田と大塚要治さんの2人で民主党の幹事長代理を務める近藤昭一衆院議員の国会事務所を訪ね、下記要望書を基に同議員と面談してきました。近藤議員は議員個人としてではなく民主党としての対応となります。

KIMG0034-small2.jpg


戦争法「成立」を受けての野党に対する要望書(2015年12月17日訂正版、「04年」も「14年」の間違いです)
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/431413716.html

まず全1人区での野党選挙共同ですが、近藤議員は党内で多方面から意見を聞いているところで、急ぐといいことはないと指摘。ただ、市民の意見を受けて民主党内での議論は煮詰まってきており、3月頃までには決めたいとのこと。こちらからは、そうとはいえ、急ぐ必要があることを伝えました。

「平和への結集」をめざす市民の風では2015年11月1日から街頭シール投票「次の国政選挙、どこに投票する?/小選挙区制に賛成・反対?」を実施しています。現在、実施場所は都内20カ所、実施回数は24回に上り、回答者は957人以上に及びます。回答者が1000を超えたところで結果を公表する予定です。

この途中結果を基に、野党に厳しい状況であることを近藤議員に説明し、共産党を含む野党選挙共同の必要性を訴えました。結果に基づく分析によれば、共産党を含む野党選挙共同は各党単独より意義があります。

小選挙区制の廃止も当方は求めました。この問題については民主党内で検討しているわけではないが、導入当初から指定された死票の問題があると、近藤議員は指摘されました。

上記の街頭シール投票から、全体で約6割、民主党を選択した層で約7割の市民が小選挙区制に反対であるとの結果が出ており、この結果も近藤議員には伝えてあります。民主党は民意をくみ取ってほしいものです。

立憲主義と民主主義を取り戻すという点で当方も民主党も一致はしています。ただ、立憲主義と民主主義を取り戻すという民主党が小選挙区制の廃止を主張しないところが問題だと考えます。

選挙における死票は国会議員を通じて立法権を制御する権利をはく奪するもので、国政に対する最高の影響力としての国民主権を棄損することにほかなりません。国民主権の領域で立憲主義が破壊されているがゆえに、平和主義の領域で新たな立憲主義の破壊という事態がもたらされているのです。

太田からは、憲法の土台が国民主権であり、平和主義と基本的人権はこの土台に立つ柱であって、今にも水に流されようとしている砂の土台に立つ耐震偽造の柱の問題ばかりを訴える例を引き合いに出しました。

憲法を主催する主権者ゆえに膨大な死票によって国民主権を棄損する小選挙区制の廃止を求めていると説明した次第です。

各地の状況を聞けば、市民の意見で独自候補擁立の選挙方針は変えない、という野党がいる県もあり、厳しいものがあります。ただ、毎日新聞は下記のように報道しています。他紙は一本化を目指す方針で一致したとまで言い切っていませんが。近藤議員が言うように煮詰まってきているということでしょうか。

<参院選>野党候補一本化へ 5党幹事長が非公式会談
毎日新聞 2月4日(木)20時6分配信
「民主、維新、共産、社民、生活5党の幹事長が4日、東京都内の飲食店で非公式に会談した。夏の参院選に向け、改選数1の「1人区」で野党候補の一本化を目指す方針で一致した。共産に対する民主内の保守系の反発などで5党間の調整は難航しており、非公式協議を先行させた。」

しかし一方で相変わらず野党選挙共同に消極的な野党議員もいます。空気を読めないというか民意をくまない姿勢であり、非常に問題です。

市民の切実な声をさらに届けていきましょう。

なお、既に維新の党には2015年12月17日に党本部で同様の要望を伝えてあります。生活の党と山本太郎となかまたちにも面談の申し込みをしていましたが、国会議員が少なく対応できないという理由で断られました。非常に残念です。これから共産党と社民党に面談の申し入れを行います。

太田光征
posted by 風の人 at 00:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 選挙共同

2015年10月12日

共産党提案の国民連合政府などについての福山哲郎参院議員ほかの発言要旨(たかじんのそこまで言って委員会NP 2015/10/11)

そこまで言って委員会NP 2015/10/11 [1-2] - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=4_AdB0BI01U

福山議員を含め、参加者は共産党の提案内容についてよく理解していません。志位和夫氏の入閣を条件にしていないし、暫定内閣の後で解散をして広範な政策で有権者の期待に応える政権を作るので、暫定内閣では有権者の期待に応えることができないという福山氏の指摘は的外れです。

「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府」の実現をよびかけます
http://www.jcp.or.jp/web_policy/2015/09/20150919-yobikake.html

共産党が候補者を立てると与党を利するという指摘が当たるなら、同じことが民主党やその他の野党にもいえるはずです。民主党内には集団的自衛権賛成の議員が数多く存在し、辺野古新基地や消費税などは党の公式政策で、またTPPなどは民主党がレールを敷いたものであり、与党を利するどころの存在ではないのが民主党です。「与党を利することのない民主党」は共産党が候補者を立てないことで与党を利することのない安保政策、その他を有権者に保証できるのですか。

民主党はもっと謙虚になって「政策の中身で反自公」の野党選挙共同に取り組んでもらいたいと思います。

「与党を利することのない憲法レベルの政策」を選挙共同と連合政府で確実に有権者に約束するのが、共産党の国民連合政府の提案です。

27:00 共産党と一緒になるかもしれない(田嶋陽子)、ならないならない(福山)
28:20 領域警備法を出した。自衛隊を抑止力として使う。
30:10 警察対警察が軍対軍のレベルにエスカレートしてしまう段階にない。警察の後ろに自衛隊を控えさせる(佐藤正久)。それは民主党も同じ(福山)。
31:05 戦争法案と言ったことはない(福山)。
33:16 朝鮮半島有事で米軍が沖縄から出ていくことを認めるのか(長谷川幸洋)。周辺事態法を民主党が認めているので認める(福山)。なら集団的自衛権そのもの(長谷川)。周辺事態法は個別的自衛権で建てつけてある(福山)。
38:35 共産党や生活との選挙協力は?一般的にやれない(福山)。
39:40 志位和夫氏が閣僚になるということ(長谷川)。
39:48 一本のテーマで政権が終わると国民の期待に応えられない。基本的な政策で共産党とのすり合わせは難しい。
あの言い方は間違いなく連立政権で一緒にやらせてくれ、を前提に候補者を立てない、それが呑めないなら候補者を立てるとの司会者の主張に、そしたら与党を利するだけなので自分のことしか考えていないんですね、と言われる。
40:56 岡田氏が志位和夫氏の提案に乗りかかったとの指摘にそんなことない、と福山氏。
共産党が議席取りすぎていい感じになっているだけとの指摘にうなずく福山氏。9条について議論の余地はあると福山氏。


太田光征
posted by 風の人 at 01:01 | Comment(1) | TrackBack(0) | 選挙共同

2015年10月05日

国民連合政府のメリットはある:JNN世論調査で共産党提案の選挙協力に期待が37%

[転送・転載歓迎します。重複受信の際はご容赦ください。]

JNN世論調査で共産党提案の選挙協力に期待が37%。

「JNN世論調査 マイナンバー制度、約8割が「不安」」 News i - TBSの動画ニュースサイト
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2604940.html

14年衆院選の民主党の小選挙区得票率23%より高く、野党5党の比例区得票率47.8%の77%に相当。
共産党の14年の比例区得票率11%よりはるかに高く、既存の共産党投票層だけで37%に届くものではない。
野党5党による選挙協力で民主・維新の23%が自民に流れると仮定しても、小選挙区で統一野党の票と自民の票の乖離は縮まり、野党5党にメリットがある。
共産党と組むことで野党の保守支持層が逃避してデメリットになるという論は誤り。

2014年衆院選の結果データは下記などで確認できます。

平和への結集ブログ ≫ 2014衆院選――結果分析
http://kaze.fm/wordpress/?p=537
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_gisekihaibun.xlsx
比例区分析の(1)党派別得票数・獲得議席数

#国民連合政府

太田光征
posted by 風の人 at 20:55 | Comment(0) | TrackBack(0) | 選挙共同

2015年07月25日

選挙制度修正行為としての野党選挙共同

【要旨】
反自民を掲げ、違憲の存在である野党議員が選択し得る結集軸として確実で、憲法上も正しいのは、小選挙区制の廃止を含む公選法の改正。野党選挙共同の大義は選挙制度修正行為にある。これならば多くの政策で一致する必要がない。

【目次】
(1)違憲の国会議員は安保法制=壊憲法制の審議も憲法審査会の活動もできない
(2)国会議員が違憲である理由は「1票の格差」だけでない
(3)選挙制度修正行為としての野党選挙共同


(1)違憲の国会議員は安保法制=壊憲法制の審議も憲法審査会の活動もできない

今国会では野党がたびたび審議拒否をしては「正常化」することを繰り返してきました。漏れた年金情報の問題でもそうですが、これは与党対野党というより、役人の不祥事を野党が追及しているだけで、決定的な与野党対立の構図ではありません。この問題が安保法制=壊憲法制の審議より重大だという主張も国会議員の中にあったようで、確かに「ひとつの手」ではあるのでしょうが、最も重大なのは現国会議員が違憲の存在であるという問題です。

壊憲法制より前に違憲性が指摘されているのは、国会議員の身分そのものです。漏れた年金情報の問題などを理由とする以前に、国会議員そのものの違憲性を理由とすべきでしょう。

ここにきてようやく野党の中から「参院選改革への速やかな対応が国会正常化の条件」という指摘が出てきたと思ったら、壊憲法制の参院審議を27日に開始して、国会が「正常化」するのだそうです。

時事ドットコム:参院審議「入り口」で綱引き=安保法案、連休明け再協議−自・民
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2015071700746
榛葉氏はこの後の記者会見で、参院選挙制度改革をめぐる自民党の対応の遅れも批判。「自民党はずっとサボタージュしてきた。不信と不満は渦巻いている」と述べ、参院選改革への速やかな対応が国会正常化の条件と指摘した。

【揺れる安保政策】27日の参院審議入り調整 安保法案で自民・民主 国会正常化へ
http://www.47news.jp/47topics/e/267364.php
「自民、民主両党は22日、集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案の参院審議を27日に始める方向で調整に入った。民主党の榛葉賀津也参院国対委員長が、参院野党9会派の国対委員長らの会談で明らかにした。参院選挙制度改革に関する公選法改正案は24日にも参院を通過する見通しで、安保法案の衆院採決強行により空転が続く国会は正常化する公算が大きくなった。」


国会議員は「1票の格差」の問題に限ってみても、正当な選挙によって選出されていない違憲議員で、審議する資格がないのだから、最低限の公選法改正に取り組む権限しか持っていないと考えるしかありません。


(2)国会議員が違憲である理由は「1票の格差」だけでない

下記記事でも述べましたが、「1票の格差」以外も争点とする私らの選挙訴訟は、砂川事件裁判と同様、法治国家・立憲主義という価値の根幹に関わるものです。ところが選挙制度では「1票の格差」と定数削減だけがもっぱら問題にされます。

(米国)政府の権限・裁量は広く、主権者の権限は狭くという外形的立憲主義――砂川事件裁判、日米安保、集団的自衛権、選挙訴訟、放射性廃棄物処分場
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/421093816.html

「1票の格差」は重要でないわけではありませんが、これが違憲であるのなら、例えば住所非保有者からの実質的な選挙権はく奪はより重大で違憲です。誰でも気が付きます。「1票の格差」は選挙権を行使できた上での選挙権の不平等だと主張されることがある問題ですが、実質的な選挙権はく奪は文字通り選挙権そのものが行使できないのですから。

なぜこういう問題を国会議員、特に野党議員は追求しないのか。これで与党に対峙して政治を変革できるかということです。

通常の国会活動もそうですが、特に国民主権の最高度の発動機会としての改憲発議は、最高度に平等な国民主権が保障された上でなければ絶対に行うことはできません。

従って、憲法審査会の活動も違憲国会議員の活動だからできませんが、平等な国民主権に最も背を向けた小選挙区制の下ではなおさらです。

小選挙区制によって憲法要請である平等な国民主権(院内における主権者の意見の反映度合いの平等)が実現していません。具体的にいえば改憲発議要件の国会議員の3分の2というのが選挙時に投票者の約半数からしか支持を得ていない存在です。選挙時に投票者の5割程度の意見しか背負っていない小選挙区選出議員は全国民の代表(憲法43条)でもないし、国民の厳粛な信託(憲法前文)どころか軽薄な信託しか受けていないのだから、違憲の存在であり、改憲論議や改憲発議など許されません。

国会議員が違憲である理由はほかにもたくさんあります。下記記事をご覧ください。

第47回衆議院議員総選挙(2014年衆院選)無効請求訴訟を提起
http://kaze.fm/wordpress/?p=538
小選挙区定数の「0増5減」は無所属候補に対する差別を拡大して選挙の違憲性を強める
http://kaze.fm/wordpress/?p=539
2014年衆院選無効請求訴訟:原告適格を制限する過去判例と被告回答書に反駁する準備書面(2)を提出
http://kaze.fm/wordpress/?p=540
第47回衆議院議員総選挙(2014年衆院選)無効請求訴訟の上告理由書
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/419881121.html


(3)選挙制度修正行為としての野党選挙共同

現時点で野党が反自公で一致できる政策はあるのでしょうか。集団的自衛権反対でさえ一致できていません。「安倍政権の下での集団的自衛権の行使容認」に反対している野党は、有権者にどういう公約を示そうというのか。選挙共同したとしても、その後の方針が不明です。

「反自民」というだけでは政策がバラバラで結集軸になり得ません。政策がバラバラの野党による選挙共同には大義が必要です。

メディアも機会あるごとに必要性を煽っている野党の結集ですが、その結集軸をさっぱり示しません。メディアは言いませんが、それには民意を反映しない「民意を反映しない小選挙区制を修正するために選挙共同が必要」だと主張すればいいのです。当然、小選挙区制の廃止が公約となりますが、自民党を前提とする二大政党制を優先してこれを言いたくない政党の「反自民」の本気度が問われます。

政策がバラバラである以上、他党の政策を支持・応援するという意味合いではなく、与野党の違いと各党への支持を越えて、各有権者の投票価値の平等という憲法上の要請を実現することに、選挙共同の意義を見いだすしかありません。自民党に勝つという大義ではなく、自民党を含む全党の得票率と議席占有率が一致するよう、選挙制度を修正するために選挙共同するのです。多くの政策で一致しなければ選挙共同できないという思いこみもこれで克服できます。

市民運動の取り組みで結集軸を増やすのは当然としても、現時点で反自民しか一致点がない野党、違憲の存在である野党議員が選択し得る結集軸として確実で、憲法上も正しいのは、小選挙区制の廃止を含む公選法の改正しかないでしょう。

太田光征
posted by 風の人 at 19:52 | Comment(0) | TrackBack(0) | 選挙共同

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