インドとパキスタンが90年代に核実験を強行したことに対して、日米は経済制裁を行ったが、米国のブッシュ政権が2001年にパキスタンを対アフガニスタン戦争の拠点とし、インドとともに制裁の解除を行った。それどころか、米国は日本に対してパキスタンに対する経済援助をするように要求し、日本はそれを呑んでしまう。
そのパキスタンは後に、北朝鮮・リビア・イランにウラン濃縮用の遠心分離器を供与。結局、日本は米国の軍事外交政策に追随することで、核兵器開発に手を貸してしまったことになる。
今度は日米が世界の潮流から外れる対インド原子力協力を進める。
核拡散防止条約(NPT)にも包括的核実験禁止条約(CTBT)にも加盟せず、核実験をしないという約束をしないインド。原発反対派の住民を弾圧し、死傷者を出している。
安倍政権は核兵器の増産を進めているインドに原発を輸出して経済成長を狙っている。アベノミクスは核拡散の経済政策。
以下、転載。
太田光征
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日印両首相に対する 「日印原子力協力協定に向けた交渉停止を求める要望書」への 団体賛同のお願い
http://www.oklos-che.com/2013/05/blog-post_4534.html
5月27日からインドのシン首相が来日し、安部首相と日印原子力協力協定に向けた交渉が行われるとみられます。原発輸出だけでも言語道断な行為であるのに、核保有国への原発輸出に事実上のゴーサインを与えることになるこの協定は、なんとしても阻止しなければなりません。
緊急の取り組みです。どうかみなさまの団体賛同をお願いいたします! 集約先は下記です。sdaisuke@rice.ocn.ne.jp
「団体名」「英語名またはローマ字」「都道府県」をメールしてください。締切は5月26日15:00 なにとぞよろしくお願いいたします。
よびかけ:原水禁、原子力資料情報室、ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン
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日印原子力協力協定に向けた交渉停止を求める要望書
2013年5月27日
安倍晋三 総理大臣
インドのマンモハン・シン首相が、5月27日から日本を訪問する予定です。野田民主党政権のもと、シン首相は、2012年11月15日から来日予定でしたが、衆議院解散により直前にキャンセルされました。予定される日印首脳会談での主要議題の一つは、日本からインドへの原発輸出を可能にする日印原子力協定に向けた交渉の推進についてです。
インドは、核拡散防止条約(NPT)に加入しないまま、1974年にカナダから導入した原発技術を用いて核実験を行い、1998年には再度実験を強行しました。包括的核実験禁止条約(CTBT)にも加盟せず、「核保有国」であることを主張しています。
石油関連の資源エネルギーに乏しいインドは、核燃料サイクル開発に積極的であり、ウラン鉱山から再処理施設までほとんどすべてを所有しています。しかし、それらのウラン鉱山や核関連施設の周辺では、これまで多くの健康被害や人権侵害が報告されています。
過去2回のNPT未加入での核実験に対してアメリカに主導された国際社会は、非常に厳しい原子力関連貿易に関する規制を「原子力供給国グループ(NSG、48カ国加盟)によって課してきました。日本政府も規制を厳守し、インドに対して原子力協力を一貫して拒んできたところです。唯一の戦争被爆国として、平和推進の立場、さらに「国民感情」からも対印協力はできないとしてきました。
ところが2000年代中期、低迷する国際原子力産業界に押されて、ブッシュ米政権は対印原子力協力に方針を転換、国際原子力機関(IAEA)、NSGなどに「インド特例措置」を認めさせました。しかしNSGは、「国際社会としてインドへの原子力協力を容認した」のではなく、日本を含む「加盟国が独自の方針で対応する」ことを認めただけです。
こうした国際社会の変化のなかでもインドは、今後は核実験をしないという約束をせず、IAEAによる核関連施設への査察(保障措置)を全面的には受け入れず、原発増設と核兵器の増産を進めています。
インドへの原発輸出が可能となった国際原子力産業界は、すでに大規模な原発施設を受注しています。これら各地での原発新増設計画に関しては、情報公開、住民への説明などが全く行われておらず、住民の訴えはことごとく無視され、しかし計画は強行されています。
これらインドでの原発施設増設には、東芝、日立、三菱重工などが、外国企業との合弁会社や外国子会社を用いて参入を進めています。それは日本から直接のインドの原子力関連への貿易、投資、技術移転ができないためです。
日本政府は、経済界の強い要求に応じて「成長戦略としてのインフラ輸出」の柱に原発輸出を掲げています。最有望の市場であるインドでの商機を失いたくないとの経済界の要求から、日本政府は原発輸出による経済成長、そして対印原子力協定の締結へ突き進んでいます。
2010年6月の民主党政権下において、インドとの原子力協定に向けた交渉開始が突然発表されました。その時、被爆地である広島と長崎をはじめ、全国から「核拡散防止よりビジネスを優先するのか」と激しい反対の声が上がり、多数の新聞メディアも反対を掲げました。
日印交渉は、日本側が「再度の核実験の場合には、協力を停止する」との条件を示し、インドが受け入れを拒絶したため、2010年11月に中断しました。とこが、福島原発事故の渦中にありながら、野田首相は2011年12月のインド訪問での首脳会議において「交渉再開」を約束したのです。しかし、国内での脱原発の動き、インドでの原発反対運動が強まるなか、交渉は停滞してきました。
インド側は、日本が示した条件の撤回、さらに協定推進を求め、日本を含む国際原子力産業界は強い圧力を続けています。
2012年12月就任後の安倍政権は、まさに「原発輸出」のトップセールスを進めています。それは、首相みずから各国訪問、原発売り込みを先導し、トルコ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦との原発輸出のための原子力協定締結に合意しました。また、既に原子力協定が発効したベトナムでは、原発建設協力が進められています。
シン首相来日にあたり、あらためてさらに強いことばで日本政府を代表する首相に要求します。
インドとの原子力協定は、戦争被爆国として国際平和の実現に努力してきた日本の誇り、さらに福島原発事故を発生させ、いまだに放射性物質を放出し続ける日本の責任をかなぐり捨てるものです。福島原発では作業員が被曝を強いられ、数えきれない人々が苦しみの中での生活を余儀なくされている時に、懲りもせず原発を輸出しようとする動きを、私たちは絶対に許すことはできません。
日本政府に対して、インドとの原子力協定締結に向けたあらゆる試みの停止と、交渉停止を要求します。そして、世界への原発輸出を放棄し、福島原発事故からの教訓として、世界に原発の廃炉を主張していくべきです。
またインドでは、経済成長を求める産業界と大都市住民の電力需要だけが強調され、原発建設計画予定地、さらに南インドのクダンクラム、西インドのジャイタルプールなどでは住民反対運動で治安部隊の弾圧により死者まで発生しています。核兵器と原発の非人道性から目をそらしたインド政府が、各地で原発に反対する人々に対して激しい弾圧を行っていることは許せません。民衆の声を無視すること、情報を隠すこと、民主的な手続きをないがしろにすること、原発推進機関と規制機関がなれあうことが、原発事故の遠因となるのです。
こうした住民たちの人権無視に荷担することは、日印友好の名を汚すものでしかありません。私たちは、首相がインド政府に対して、原発建設をめぐる住民への暴力的弾圧を一切やめるよう求めるべきだと考えます。
私たちは福島原発事故を経験し、破局的な原発事故が人々の命や自然に対して何をもたらすのかを、日々まざまざと見せつけられています。
シン首相には、広島と長崎を訪問して平和資料館を訪れ、被爆者の証言に耳を傾けるよう求めます。原発被災地である福島を訪れ、現在も4基の原発から放射性物質が放出され続ける中で、人々がどのように苦悶しつつ生きているのか、事故収束にあたる多数の労働者がどのような過酷な被曝環境の中で働いているのか、海や森や田畑で何が起きているのかを知る責任がインド首相にはあります。
チェルノブイリ原発事故と福島原発事故は、原子力発電所が人間の安全で平和な生活を破壊し、民主主義とは相いれないものあることを示しました。福島事故を経験した日本の人々は、政府・産業界による原発輸出に強く反対します。
私たちは以下のことを要求します。
1. 日印原子力協力協定に向かういかなる話し合いも行わないでください。
1. 福島事故での経験から、危険な原子力発電所の輸出による「成長戦略」を放棄してください。
1.インド政府に対して、インド国内で原発に反対する人々への弾圧の即時停止と、クダンクラム原発の即時閉鎖を求めてください。
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日印原子力協力協定に向けた交渉停止を求める要望書
2013年5月27日
マンモハン・シン首相
私たちは5月27日からあなたが来日されると聞き、予定される日印首脳会談において日本からインドへの原発輸出を可能にする日印原子力協力協定に向けた交渉がなされることに大きな危惧を抱いています。
2010年6月、民主党政権下においてインドとの原子力協定に向けた交渉開始が突然発表されました。その時、被爆地である広島と長崎をはじめ、全国から「核拡散防止よりビジネスを優先するのか」と激しい反対の声が上がり、多数の新聞メディアも反対を掲げました。そのとき多くの人々が両国の協定に反対した理由は次のようなものです。
インドは、核拡散防止条約(NPT)に加入しないまま、1974年にカナダから導入した原発技術を用いて核実験を行い、1998年には再度実験を強行しました。しかし、包括的核実験禁止条約(CTBT)にも加盟せず、「核保有国」であることを主張しています。また、原子力供給国グループにおいてインドに特例措置を認めるガイドラインの改訂にあたり、今後核実験をしないという約束をしませんでした。自国産の核物質を核兵器製造に転用しないためのIAEAによる査察も部分的にしか受け入れていません。そのような状況下で、原発増設と核兵器の増産が進められています。
そして今、前述の懸念が放置されたまま、それでも日印政府が原子力協定に突き進もうとしていることに対して、私たちは満身の怒りをもって抗議します。私たちは福島原発事故を経験し、破局的な原発事故が人々の命や自然に対して何をもたらすのかを、日々まざまざと見せつけられています。
シン首相には、広島と長崎を訪問して平和資料館を訪れ、被爆者の証言に耳を傾けるよう求めます。原発被災地である福島を訪れ、現在も4基の原発から放射性物質が放出され続ける中で、人々がどのように苦悶しつつ生きているのか、事故収束にあたる多数の労働者がどのような過酷な被曝環境の中で働いているのか、海や森や田畑で何が起きているのかを知る責任がインド首相にはあります。
またインドでは、経済成長を求める産業界と大都市住民の電力需要だけが強調され、原発建設計画予定地、さらに南インドのクダンクラム、西インドのジャイタルプールなどでは住民反対運動で治安部隊の弾圧により死者まで発生しています。核兵器と原発の非人道性から目をそらした政府が、インド各地で原発に反対する人々に対して激しい弾圧を行っていることは許せません。民衆の声を無視すること、情報を隠すこと、民主的な手続きをないがしろにすること、原発推進機関と規制機関がなれあうことが、原発事故の遠因となるのです。
原子力はまぎれもなく斜陽産業であり、民主主義とは相いれないものです。福島事故を経験した日本の人々は、日本から海外へ原発が輸出されることに強く反対しています。私たちは以下のことを要求します。
1. 日印原子力協力協定に向かういかなる話し合いも行わないでください。
1. インド国内で原発に反対する人々への弾圧を即時停止してください。
1. クダンクラム原発の稼働を断念し、即時閉鎖してください。
1. 原発を輸入して新増設を行うことを止めてください。