独島(竹島)問題に関する全国ネット声明
8月24日衆議院本会議で韓国の李明博大統領の竹島(韓国では独島)上陸と、香港の活動家の尖閣諸島上陸に対する抗議決議が採択された。29日には参議院本会議でも同様の決議を採択。竹島問題では、韓国側が引いた経済水域(いわゆる「李承晩ライン」)に抗議した1953年の「日韓問題解決促進決議」以来、59年ぶりである。
決議は「(竹島は)わが国固有の領土であるのは歴史的にも国際法上も疑いはない」「不法占拠を韓国側が一刻も早く停止することを強く求める」と強調する。そして、外務省は、国際法上の根拠として1905年1月28日の閣議決定及び2月22日の島根県告示による竹島の島根県への編入を「近代国家として竹島を領有する意思を再確認したものであり…有効に実施されたものである」(外務省ホームページ)としている。しかし、当時すでに日露戦争が開始されており、日本は朝鮮に対し、1904年2月23日にはソウルを軍事的に制圧した上で、内乱鎮圧を目的とした日本軍の展開の容認とそのための「必要の地点の臨検収用」を認めさせた(第4条)「日韓議定書」に調印させ、8月21日の「第1次日韓協約」調印後は外国人を外交顧問として送り込み、外交案件について事前に日本政府と協議することを認めさせた。このように、竹島の島根県への編入の閣議決定等は事実上朝鮮が外交権を剥奪された中で強行されたものであり、植民地支配の歴史と密接不可分の問題なのである。カイロ宣言は「日本国は又暴力及貪欲に依り日本国の略取したる他の一切の地域より駆逐されるべし」としている。1905年の島根県への一方的編入こそ「略取」以外のなにものでもなく、日本政府がポツダム宣言と同時に受諾したカイロ宣言に従えば、このような主張は無効と言うべきだ。
戦後補償を拒否し続けている日本政府が、閣議決定等をもって竹島の領有権を主張する姿に未だに植民地支配の反省をしない日本政府の姿を見て、韓国の人々が怒りを感じるのは当然のことである。
一方、15年に及んだ日韓国交正常化交渉(日韓会談)で日本政府は一貫して「植民地支配は合法」と主張した。結局、日韓両政府は竹島問題を含む植民地支配の清算を棚上げし、被害者を切り捨て、日米韓の軍事同盟を最優先させて1965年に日韓条約・請求権協定を締結し、「経済協力」の名の下に独占資本に莫大な利益を供与してきた。そして、両国政府は自国民に向けて竹島を「固有の領土」と宣伝し、民族排外主義をあおり、政権維持、アジアの緊張激化、軍事力強化に利用してきた。李明博大統領の独島訪問は、大統領選を11月に控え、レームダック化している政権維持を狙ったパフォーマンスでしかない。領土問題をめぐる対立激化は戦後補償問題の解決にも深刻な影響を及ぼしている。韓国・朝鮮・台湾の元BC級戦犯者の補償立法は今国会に上程さえできなかった。マスコミを巻き込んだ挑発合戦は即刻中止すべきだ。
しかし、このようにエスカレートするに至った原因は日本政府にある。韓国では2005年に日韓会談文書が全面公開され、日韓請求権協定で未解決となっている問題の見直しを進めてきた。昨年8月30日、韓国の憲法裁判所は、「慰安婦問題、被爆者問題は日韓請求権協定で解決していないと政府が公式に表明したにも関わらず、日韓請求権協定に基づく交渉や仲裁による解決に踏み出さないのは韓国の憲法違反である」と勧告した。その勧告に基づき、昨年末の日韓首脳会談では歴代大統領としては初めて、李明博大統領が野田首相に慰安婦問題の解決を申入れ、韓国政府としても正式に日韓請求権協定に基づく再交渉を日本政府に申入れたが、現在まで日本政府は無視し続けている。協定に基づく外交的解決にも応じない不誠実な日本政府に対する韓国民の怒りのマグマが、領土問題という形で噴出したのだ。
今問われているのは、切り捨てられてきた植民地支配の清算問題を正面から外交的に解決することだ。その中でしか竹島領有権問題を根本的に解決することはできない。
2012年9月4日
強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク
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以上、転載
太田光征