2008年03月14日

オーストラリア下院の選挙制度は優れているか?

オーストラリア下院の選挙制度は、優先順位付連記投票制を採用した完全小選挙区制です。一選挙区内の全候補者に対して、一位から順に優先順位の番号を振り、低順位候補の票を高順位候補に割り振って、過半数の票を獲得した候補者を当選させます。こうしたテクニカルな側面に注目してか、この選挙制度を積極的に評価する日本の有権者もいます。

票の割り振り方を、名古屋大学の浅川晃広氏の論文から引用して説明しておきます。

2004 年オーストラリア連邦総選挙結果の分析
http://www.otemon.ac.jp/cas/pdf/31/asakawa.pdf

第一番目の得票は「第一選好票」(First PreferenceVote)と呼ばれ,また第二番目の得票は「第二選好票」(Second Preference Vote)と呼ばれている.当選の決定要因としては,まず,すべての候補に「第一選好票」を割り振り,過半数を獲得すれば当選する.もし過半数が獲得できなければ,最下位の候補を落選させ,その「第二選好票」(すなわち 2 番をつけた候補)を残りの候補に配分する.これを,一人の候補が過半数を獲得するまで繰り返し,当選者が決定される.


票の割り振り方の実際例が、こちらのサイトに掲載されています。
http://web3.incl.ne.jp/matsuura/geographic01.htm

単記非移譲式投票制を採用した日本の現行小選挙区制に比べれば、はるかに民意を反映する制度とはいえます。しかし、「第一選好票」が死票になる点は変わりません。一見優れたように思える優先順位付連記投票制は、死票を生む小選挙区制ゆえのマッチポンプ的手当てに過ぎません。民意の切捨てを容認する小選挙区制という制度であるから、民意を集約する手当てを施しているだけです。民意の反映を重視するなら、最初から民意を切り捨てる制度設計を採用しなければよい。

得票率49%での当選はけしからんが、得票率51%なら一人だけ当選させても構わない、という小選挙区制の考え方には無理があります。残り49%の民意を切り捨てるのは明らかにおかしい。

日本の現状に、オーストラリア下院の選挙制度を当てはめれば、民主党優遇制度になるでしょう。その方がいいと考える有権者がいるかもしれませんが、政権交代(維持)のためだけならば、民主党だけに票を集中させる必要はありません。比例代表制のような死票が出ない選挙制度であれば、野党は全体で与党と互角に勝負可能です。野党がいがみ合うことも、小手先の選挙共同もする必要がなくなります。

国会政治の現実が、政党政治である現状を考慮すれば、無所属候補にも配慮した比例代表制が、最も公平で民意を反映する制度と言えるでしょう。郵政選挙のように、自公に偽装勝利をもたらす心配もありません。そのような選挙制度の一例として、中選挙区比例代表併用制をすでに提唱しています。

中選挙区比例代表併用制を提案する
http://kaze.fm/wordpress/?p=164

小選挙区制、定数の少ない中選挙区制は、現状では保守二大政党制、大連立という寡頭政治をもたらす危険な仕掛けです。野党には、自公の延命に手を貸す小選挙区制や定数の少ない中選挙区制に反対し、比例代表制を基本にした民意を反映する選挙制度改革で結束してもらいたい。それが野党連合路線を担保することにもなるでしょう。

太田光征
http://otasa.net/
posted by 風の人 at 15:19 | Comment(1) | TrackBack(1) | 一般
この記事へのコメント
すると大統領制度のところは、49.9999%の「民意」を切り捨てていることになりますね。

日本国憲法も法案の成立や、総理大臣の指名もすべて過半数の議席でよいのです。

そもそも、総理大臣になれるのは、一人だけです。憲法が、その一人を過半数で決めろと、言っている以上、国民の"50.0000000000001%の意思"をまず最優先に反映することが、先でしょう。

現行憲法の既定のまま、完全比例代表にすると、10%しか獲得議席がなくても全体の過半数に影響をあたえることができるわけです。

そもそも、完全比例代表論者は、単記式の、政党名を一つだけ記入する方式しか主張していない場合が多いいですね。


コンドルセのパラドックスを持ち出しているようですが、完全比例代表もゲーム理論的には、「民意をゆがめる」ことがあります。

Instant run off 方式を改良した方式としてApproaval Voting がありますよ!!

Posted by けんと at 2013年09月23日 16:50
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