2008年03月04日

アメリカ当局(米警察)の三浦和義氏の「不当逮捕」と日本のマスメディアのあきれるばかりの報道姿勢について

「三浦元社長 米で逮捕」というニュースが日本国中を電撃的に走った当初から、私たちの国のマスメディアはこぞって、この国の裁判ですでに「無罪」が確定している三浦和義氏を「容疑者」呼ばわりしてきました。メディアという「公共」媒体を使って人を貶めることに汲々として恥じないこのようなマスメディアの行為(その無知、無能、人権感覚の欠如、犯罪性)は決して許されることではないだろう、と私はその報道の当初から激しい憤りを感じてきました。

「容疑者」とは司法手続及び法令用語の「被疑者」とほぼ同義で、「捜査機関によって犯罪を犯したとの嫌疑を受けて捜査の対象となっているが、まだ公訴を提起されていない者のこと」をいいます(フリー百科事典『ウィキペディア』「被疑者」→「4 容疑者の語について」)。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A2%AB%E7%96%91%E8%80%85

マスメディアはなぜ「一事不再理」(同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われないこと。日本国憲法第39条)の原則がある私たちの国の法廷で「無罪」が確定している三浦和義氏を「容疑者」(準犯罪者)呼ばわりして恥じることがないのでしょうか?

日本のマスメディアは、犯罪捜査について、米国では「属地主義」、日本では「属人主義」を採用していて、日本の「一事不再理」の原則は米国では適用されないという米捜査当局の見解を無批判に受容して三浦和義氏を「容疑者」呼ばわりし続けているようですが、米当局(米警察)の見解を鵜呑みにするだけで、同当局の三浦和義氏「不当逮捕」をなんら問題視しないこの国のマスメディアの報道姿勢は、歴代自民党政府にも増して対米追
随的といわなければならないでしょう(この日本のマスメディアの為体(ていたらく)ありて、この国の政府の為体あり、ということでもあるでしょう)。

しかし、日本の「一事不再理」の原則は米国では適用されないという米捜査当局の見解は二重、三重に誤っています。

第1。米国憲法修正5条にも「何人も同一の犯罪について、再度生命身体の危険に臨まされることはない」という規定があること(米国法ではOUBLE
JEOPARDY》(二重の危険)の法理というようです)。

第2。国際人権規約(自由権)の14条7項にも「何人も、それぞれの国の法律及び刑事手続に従って既に確定的に有罪又は無罪の判決を受けた行為について再び裁判され又は処罰されることはない」と明記されていること。

第3。国際刑事裁判所規程20条にも「いかなる人も、本裁判所によってすでに有罪とされまたは無罪とされた第5条に定める犯罪について、他の裁判所において審判を受けないものとする」と明記されており、「一事不再理」の原則は国際的に承認されている国際的なルールであること。

第4。三浦和義氏が逮捕された地であるカリフォルニア州の04年改正前の州法でも「米国内の他州や他国で有罪または無罪判決を受けた場合は」訴追できないことが明確に定められていたこと(02年にロサンゼルス郡保安官が殺害されてメキシコ人容疑者がメキシコに逃亡する事件が起きたことから、法改正の機運が高まり、04年9月に改正法が成立。条文から「他国」が削られたといいます。「改正」後のカリフォルニア州法は「一事不再理」の原則を定めた国際的ルールを明らかに逸脱しています)。

上記の法的問題の整理は「ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)」ブログからの引用です。

■三浦和義氏には一事不再理の適用があるはず(2008年2月28日)
http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/ceeb3137ddd35554bb7f5d196f7d4697
■傲慢な米カリフォルニア州に抗議をするよう法曹三者に申し入れよう!(2008年3月2日)
http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/68339fc2ce7c8c17f1a3449b2385baa0

この問題については次の各ブログも警鐘を鳴らしています。

・「Henkyo News」ブログ
■三浦さん米警察が拘束:再び日本マスコミの無責任ぶり(2008年2月25日)
http://www.icchome.net/news/2008/02/post_133.html
■日本マスコミは「二重の危険」に関する議論が広がると困るのか(2008年2月26日)
http://www.icchome.net/news/2008/02/post_134.html
■日本マスコミ、サイパンの判事とメディアに過熱取材がとがめられる(2008年2月27日)
http://www.icchome.net/news/2008/02/post_135.html

・「つれづれなるままに 〜弁護士ぎーちの雑感〜」ブログ
■[米国法] 三浦知義氏の逮捕(1)(2008年2月26日)
http://d.hatena.ne.jp/attorney-at-law/20080226/1203957902

・「NPJ通信 マスメディアをどう読むか」
■「三浦逮捕」のニュースバリュー(丸山重威 2008.2.28)
http://www.news-pj.net/npj/maruyama/index.html

ご参照ください。

そして、この国のマスメディアのあきれるばかりの報道姿勢について、危機意識を共有していただけたら幸いに思います。


東本高志
posted by 風の人 at 17:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 一般
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