「昭和を生きた母」を前面に出して宣伝されました。
戦争に反対したということには触れられませんでした。
一番気になったのは、この映画への賛辞に、
「声高に反戦を叫ぶのではなく」という言葉が多かったこと。
今の日本では、声高に反戦を叫んではいけないらしい。
嘆かわしい限りです。
戦前の精神史にこだわり続けた橋川文三は、こう書いています。
「日本で抵抗が成り立たないのは、どんな政治的状況も
『あるがままの自然』として受け止められるからである」と。
そもそも、抵抗して変えられるものと捉えられていないと。
言いたいことはよく理解できます。
抵抗が成り立たない精神構造というか、感覚なんですね。
いわゆる大衆的な人ほどそうですから、どんなにインテリが
それを批判しても現実は変わらないわけです。
この現状を変えるのは、まさに岩に爪を立てるような困難な闘い。
でも、それをしなければなりません。
学生時代からこの問題に取り組んできた私の結論は、
「日本社会は内側からしか変えられない」ということ。
外から批判すればするほど自閉しますから。
ものを考える少数の人間が嘆き合っていても、孤立するだけ。
どうしたら実効性のある反戦運動ができるか。
どうしたら、何も考えたくない人々にメッセージを届けられるか。
目下、私のテーマはこれです。
川西玲子
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