以下の河内さん、東本さんの意見はこの問題を考える上での一つの有効な「回答」になっていると思われ、私も賛同するので、ご紹介します。
太田光征
http://otasa.net/
中選挙区比例代表併用制を提案する
http://kaze.fm/wordpress/?p=164
河内謙策と申します。(このメールの転送・転載は自由です)
来る総選挙と政界再編に向けて、“平和への結集をめざす市民の風”が「今こそ平和・環境・福祉・地方分権・選挙制度改革を柱に野党連合を結成し、政権交代を!」というアピールを発表しました(http://kaze.fm/参照)。私は、これを支持する立場で本MLに投稿したところ、多くの方からコメントをいただきました。コメントをいただいたすべての方々に感謝するとともに、批判的なコメントをいただいた方に対し、以下のとおりの私見を述べさせていただきたいと思います。
私が第1に述べたいことは、日本の抜本的改革を多くの市民が望んでいるので、野党連合の必要性があり、それが一番現実的だ、ということです。
私にたいする多くの批判は、後述する民主党の問題に集中していました。しかし、批判的コメントを寄せられた方の多くは、なぜか自分の改革の道筋を述べられませんでした。日本の抜本的改革の必要性を認めるのか否か、認めるとすれば、どのような改革の道筋があるのか、これを吟味し、自分の回答を提起しない批判は、一時期の私を含めた旧左翼と新左翼がよくやった、批判のための批判と言われかねないのではな
いでしょうか。
今野党連合が本当にできて、力を合わせれば、自民党支配を終わらせることができる大きな可能性があることは見易い道理だと思います。数十年ぶりのチャンスです。昔流にいえば、変革の客観的条件は成熟しているが、主体的条件に問題があるのです。だから、“皆団結し、野党連合を作って、自民党支配を終わらせましょう”という呼びかけがなされて良いはずなのに、市民の風以外誰も言い出さないという異常な状態が続いているのです。日本の市民に“日本の改革は不可能だから、自分の支持する政党に投票しましょう”と言えば、市民からブーイングが返ってくるだけでしょ
う。
もっとも村岡氏は、その点に目配りをされて、<左派・市民の共同>を提起されたいようです([AML17862][wsfj7618]参照)。しかし、村岡氏の言う“左派”とは何でしょうか。きわめて漠然としていますが、村岡氏が「私たちは、事態の根底に、利潤を動機・目的とする資本制生産の矛盾が貫流しているという視点は依然として有効だと考えている。したがって、そこを突破する方向を<社会主義>として展望し、それらのことを意味するために<左派>と表現する」と述べているところをみれば、社会主義を展望する勢力のようです。しかし、社会主義を展望して共同を実現し、それで日本の国民の多数を結集できるはずがありません。村岡氏の構想は“白昼夢”でしょう。
私が第2に述べたいことは、多くの方がコメントで政界再編について触れられなかったのは不思議だということです。昨年の大連立劇は記憶に新しいことですが、あの動きは終わっていません。その証拠に、森元総理大臣は『WiLL』3月号で、「これはもう完全に潰れたんですか?」という大下英治氏の質問に対し、「まだあるだろうと思い、傷つけられないから話せないんです」と述べています(同誌50頁)。また、水木楊氏は、小説家特有の鋭い構想力で、「小泉純一郎“大連立”総理の誕生」を描いています(『文藝春秋』2月号124頁)。日本の平和活動家の多くは、単なる権力闘争だ、と見ているようです。もちろん権力闘争の側面はありますが、大連立とか中連立を通じて日本の支配層がどんな政策を実行しようとしているのか、を見抜く必要があると思います。野党の一部を取り込んで、自分たちだけがやるのではありませんよ、という形をとらなければならない政策とは何でしょう。水木楊は消費税増税だといっていますが、私は、それに加えて、自衛隊海外派兵恒久法ないしは憲法改正だと思っ
ています。それに、大連立か中連立をつうじての国民に対するイデオロギー効果があります。国民が、“政治は所詮ゲームさ”と考えるようになったら、日本の平和運動は改憲を待たずして大打撃を受けるでしょう。したがって、政界再編に市民がノーと言う必要があり、そのための対案としても野党連合構想が有効なのです。
私が第3に述べたいことは、民主党の評価・民主党の参加問題です。私は、民主党は、共産党や公明党のような世界観政党とは考えていません。民主党には多様な人がいて、それが自民党の出方や世論の動向の中で方針を決めていっていると思っています。したがって、“民主党の本質は”という発想の仕方は誤りであり、民主党の現在の方針が永久不変のものとは考えません。また、民主党を支持している広範な市民や
労働組合の力がなくて、日本の抜本的改革は不可能だと思っています。私は、1970年代に革新自治体創生に威力を発揮した、いわゆる社共共闘路線をとりません。それゆえ、民主党に野党連合の参加を呼びかけることは当然だと思っています。
このような私見に対し、民主党に呼びかけても参加を得るのは困難だよというのならともかく、民主党に参加を呼びかけるべきでない、という意見は私には理解できないのです。“民主党が危険だよ”という意見を強調される方は、ぜひ東本氏が民主党との共闘を考えるべきとして挙げている4つの例を御検討いただきたいと思います([AML17794]参照)。また私は、民主党の野党連合参加に消極的な方に、沖縄の経験も考えていただきたいのです。沖縄では、2001年の参議院選挙で、共産党が、2000年の衆議院選挙の6.9万票を大きく下回る4.6万票しかとることができませんでした。このときの相手は民主党でなく照屋寛徳氏でしたが、その敗因の一つが照屋寛徳氏にたいする厳しい批判でした。厳しい批判は、それが正しくてもかえって市民にきらわれることがある、と深刻に考えた共産党員が中心になって、独自候補擁立派の共産党員を説得し、2004年の参議院選挙では、共産党として民主党らと連帯し、糸数慶子さんを統一候補に推すことになったということです。
私が述べたい第4の点は、政党と市民の新しい関係=協力・共同の関係を日本でつくらなければならないということです。日本では、政党にとって市民は単なる客体で、市民にとって、政党の方針に対し、イエスかノーと言う自由しかないようです。そうではなく、政党が市民の意見をとりいれて方針を検討したり、方針を変更したり、することや、市民運動がもっと気楽に政党に相談することがあって然るべきなのではないでしょうか。市民と政党の協力・共同を強調しているのは、そういう意味です。自衛隊のISAF参加問題についても、野党と市民が協議し、市民の批判に係らず民主党がそれを野党の共通(!)政策にと固執したとすれば、民主党にとっては“多数の市民を敵に回しても野党連合に参加しないことが本当にプラスか”を考えなければならなくなるでしょうし、市民にとっても“野党連合による変革を断念するのが本当によいのか”を検討することになるでしょう。そういう局面になる以前に、ある政党が危険かどうかで市民同士がいがみあってしまうというのは、本当に悲しいことです。“そんな夢のようなこと”という人には、沖縄で出来たことがなぜできないのですか、と言いたいのです。
私が述べたい第5の点は、もっとフェアに誠実に論争をしようよ、ということです。今回の論争の中では、少し悪口が目立ったと思います。平和の風の新アピールで述べてもいないのに“民主党中心”の構想だとか、根拠も無しに民主党の応援団だとかいう批判がなされたのは誠に心外です。私が民主党・小沢代表のISAF参加合憲発言批判のアピールを平和の風の新アピールと同時に紹介しなかったのは、単に私が急いでいただけです。それを「偽装」と同じだ、というのは発言する人の見識を疑わせるものです。論争は、あくまでも、発表された見解を中心に、お互いが信頼するという前提でしたいものです。「右翼」は団結し、「左翼」はいがみあってばらばら、という恥ずかしい状態は、もう終わりにしたいと心から願っています。
以上、率直に述べさせていただきました。諸氏の御検討よろしく御願い申し上げます。
河内謙策
民主党については私たちも厳しい見方をしています。河内さん(本MLに「2008『平和への結集』アピール」を紹介した)は言及されていませんが、私たちは、左記アピールとともに下記の「憲法9条を高く掲げた『国際協力』の道を探求しよう ― 私たちは自衛隊のISAF参加に反対します ―」という民主党・小沢代表の「ISAF参加合憲」発言を批判するアピールも同時に採択、発表しました。私たちは民主党を手放しで評価しているわけではありません(http://kaze.fm/wordpress/?p=183)。
問題は、「現実」を変革する(したい)という視点から、「現実政治」という大状況をどう見るか、ということだろうと思います。民主党の批判するべきところ(たくさんありますが)は仮借なく批判して、しかし、「共闘」の思想を持ち続ける、という姿勢が、私たちに求められている姿勢だというべきではないでしょうか? もちろん戦後60年続く自民党政治(悪政)という大状況を変革するために、です。
4つの例を示してみます。
@2月10日にある岩国市長選挙では民主党は実質的に井原勝介前市長を推薦する立場です(民主党は公式には「自主投票」と言っていて、この立場のあいまいさはもちろん問題にしなければなりませんが)。岩国基地への空母艦載機移転問題での国の理不尽を糾すためにも井原前市長にはぜひとも勝利していただかなければなりません。そのためには民主党との「共闘」が必要です(「政党からの推薦や支持を受けない」という井原前市長の意思とはまた別次元の話です)。民主党との「共闘」がなければ、この選挙は負けるかもしれません。
A3月23日には熊本県知事選挙があります。同選挙では「川辺川ダム建設」問題が大きな争点として浮上していますが、40年続いたこの問題を決着させるためにも「ダム建設反対」を明確にした県知事を誕生させる必要があります。そのためには民主党の力が必要です。民主党熊本県連は、「自民党との相乗りはできない」「知事選では建設中止を問うていく」立場を明確にしています(熊本日日新聞 2008年1月12)。現在の力量では共産党や社民党だけの力で県知事選を勝利させることは無理です。民主党との「共闘」の思想なくして熊本県知事選を勝利させることは不可能です。
B先の東京都知事選で「浅野陣営」と「吉田陣営」の共闘が実現していれば、石原3選を阻止しえた可能性はきわめて高かった。その共闘が実現しなかったために、石原都政の悪政がさらに4年間続くことを許した、ということ。
C先の参院選で民主党が負けて、自民党が勝利していたら、「憲法改悪」は否も応もなく現実のものにならざるをえなかったでしょう。先の参院選における民主党の勝利が「改憲」気運をとめたのです。そのことは客観的に認める必要があるでしょう。
毛利さんもおっしゃるように、今国会においても「民主党が大変危険な役割をして」いることを私は否定しません。私たちはだから上記のような民主党を批判するアピールも出しました。
批判するべきところは批判して、しかし、「共闘」を模索することなしに、自民党の悪政が続くこの閉塞した大状況を変えることはできないだろう、と私は思うのです。
なお、昨日の河内さん発信の「2008『平和への結集』アピール」には「アピール賛同のお願い」文が欠落していました。あらためて下記をご覧いただければ幸いです。
http://kaze.fm/
東本高志@大分
タグ:野党連合
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