2007年12月07日

小沢一郎氏の憲法解釈・アフガンISAF派遣論と民主党の「テロ特措法対案」(1):国権の発動なくして自衛隊の運用はあり得ない

遅まきながら、小沢氏が雑誌『世界』11月号に寄稿した論文「今こそ国際安全保障の原則確立を」と民主党の「テロ特措法対案」について論評していきたいと思います。

まずは『世界』論文の方から。重要部分を引用します。

言うまでもなく、日本国憲法第9条は国権の発動たる武力の行使を禁じています。……個々の国家が行使する自衛権と、国際社会全体で平和、治安を守るための国連の活動とは、全く異質のものであり、次元が異なるのです。国連の平和活動は国家の主権である自衛権を超えたものです。したがって、国連の平和活動は、たとえそれが武力の行使を含むものであっても、日本国憲法に抵触しない、というのが私の憲法解釈です。


小沢氏は、国連決議に基づく平和活動であれば、日本国憲法で禁じている「国権の発動たる武力の行使」には当たらないと解釈しています。しかし、憲法は武力行使の性質・目的を一切捨象して、国権の発動による武力行使を一律に禁じていることは明らかです。

日本はその主権を国連安保理に譲り渡し、安保理の委任統治国になっているわけではありません。自衛隊を運用し、武力を行使するのであれば、国権を発動するしかないのです。小沢氏の憲法解釈は、憲法枠内の解釈だけで簡単に退けられます。

国権の発動なくして国軍の運用などあり得ないことは、現実政治もよく示しています。戦争犯罪などを裁く常設の“公共裁判所”として、国際刑事裁判所(ICC)があります。アメリカは頑としてこの裁判所への参加を拒んでいますが、多国籍軍に参加するアメリカ軍兵士の訴追を恐れているからです。

要するに、アメリカは、多国籍軍において、裁判権という国権を保持したままでアメリカ軍を運用すると宣言しているのです。アメリカがICCに反対する理由の一つに、その主権が侵害される恐れを挙げていることからも、明らかです。国立国会図書館がまとめた下記の文章を読むとよく分かります。

アメリカは、公共利益のための“公戦”ではなく、国益のための“私戦”を戦うのだと告白しているようなものです。


国際刑事裁判所をめぐる各国の対応
―支持国と反対国それぞれの議論―
国立国会図書館 ISSUE BRIEF NUMBER 589(2007. 5.29.)
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/0589.pdf
(文末の数字は参照文献を示すものですが、掲載は割愛します。)

(1) 米国

米国は、ICCに反対する理由として、主に以下の 4 点を挙げている。@ローマ規程が原則として締約国のみを拘束する条約形式を取っているにもかかわらず、その管轄権を非締約国にも及ぼしうるICCは、米国の主権を侵害するおそれがある。Aローマ規程は、チェック機能を有しない(unchecked power)訴追システムを作り上げており、抑制と均衡を重視する米国の司法システムとは相容れない。Bこれまで国際社会が侵略に法的な定義を与えることに成功しなかったにもかかわらず、ローマ規程は侵略の罪をICCの管轄下に置かれる犯罪に含めており、今後、ICCにおいて侵略の罪が定義されると、国連憲章第 39条において認められた、侵略行為の存在を決定する安保理の権能が脅かされる。CICCの管轄権行使について定める規定は、米国に好意を抱かない国によるICCの利己的な利用を許し、彼らの政治的動機に基づいた訴追に米国民をさらすおそれがある30。

米国は、これまで様々な手段をもってICCに反対してきた。特にG.W.ブッシュ政権は、2002 年 5 月 6 日にローマ規程の署名を撤回し31、安保理では、ローマ規程非締約国の国民がICCの管轄権の行使から免除されることを認める決議を採択するよう働きかけてきた。また、ローマ規程第 98 条に基づき、米国民がICCの管轄権下に入らないことを保証する二国間協定の締結を各国に呼びかけ、同協定を補強する国内法上の措置として、米国要員保護法や、二国間協定を締結しない国への援助を停止する法律を制定している。

(i) 安保理決議

2002 年 7 月 14 日、安保理による捜査または訴追の延期の要請を認めたローマ規程第 16条に基づき、安保理は、国連の平和維持活動に参加している非締約国の要員に対して、ICCが 12 か月間管轄権を行使しないことを求める決議第 1422 号を全会一致で採択した32。この決議は、12 か月ごとの更新を規定しており33、2003 年 6 月に決議第 1487 号によって更新された34。しかし 2004 年の更新時には、イラクの安定に向けて欧州諸国と協働する必要があったため、米国も決議の更新を断念したといわれている35。

また、2003 年 8 月 1 日に採択された、リベリアへの多国籍軍派遣に関する決議第 1497号では、非締約国の要員は、その活動から生じるいかなる行為についても自国の管轄権に排他的に服することが規定された36。この包括的免除規定は、ローマ規程第 13 条(b)項に基づいて、ダルフールの事態をICCに付託する決議第 1593 号にも盛り込まれた37。なお、同決議は、軍人や当局者だけではなく、非締約国の国民すべてを対象としている。

これらの決議は、ICCに反対する米国と、ICCを支持する国々の外交的譲歩の結果採択されたものである38。しかし、ローマ規程第 16 条は、個々の事件ごとの捜査または訴追の延期を規定しているに過ぎず、包括的な管轄権免除を認めているわけではない。また、第13 条(b)項は、ICCへの事態付託権限を安保理に与えているだけである。したがって、これらの安保理決議は、ローマ規程の内容と照らして妥当とは思われないし、安保理があたかもローマ規程を改定したかのような決議を採択することは、安保理の権能を定めた国連憲章第 25 条に照らせば、権限踰越(ultra vires)の可能性があると指摘されている39。


太田光征
http://otasa.net/


posted by 風の人 at 14:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | 一般
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