(1)コンドルセ式選好投票制
コンドルセが教えているのは、候補者すべてに選好順位を付けて総当たり戦をさせないと、どの候補者が最も支持されているのかを判定できない、ということです。下掲は、小選挙区で、過半数の有権者が政策として脱原発を、人柄としてBよりCを選ぶような例。
A候補:原発推進
B候補とC候補:脱原発
投票者:306人
過半数:154人
(a)投票者103人の選好順:A > C > B
(b)投票者102人の選好順:B > C > A
(c)投票者101人の選好順:C > B > A
総当たり戦の勝者はC候補。
Aは0勝:
103人:A > B
103人:A > C
Bは1勝:
102人:B > C
203人:B > A
Cは2勝:
203人:C > A
204人:C > B
(2)オーストラリア下院式優先順位付き連記投票制
オーストラリア下院(小選挙区制)の優先順位付き連記投票制(米国ではRanked Choice Voting=RCVと呼ばれ、日本のメディアでは優先順位付き投票制と呼称)では、(1)の例の場合、第1選好の得票数が最下位のC候補を問答無用に落選させて、つまりパターン(c)投票者が第1選好で投票したC候補への票を死票とし、それを第2選好のB候補に移譲してB候補を当選させます。
でも、総当たり戦に基づく真の選好順はC > B > Aなので、民意測定の精度はコンドルセ式選好投票制より劣ります。ただ、例えば4人が立候補して、第3位が当選者となる場合もあり得るので、フランス型決選投票制よりは高精度です。
(3)フランス型決選投票制
フランス型決選投票制(大統領選挙と下院小選挙区選挙)では、優先順位付き投票はせず、問答無用に3位以下を切り捨て、得票数が1位と2位の候補が2回目の選挙に臨みます。1回目の選挙で2位の候補者が2回目で当選する場合があるので、単純小選挙区制よりはマシです。
確率的というか経験的に、(1)のコンドルセ式選好投票制でも、(2)のオーストラリア下院式優先順位付き連記投票制でも、ひっくり返って当選するのは第1選好で2位の候補が多いようなので、フランス型決選投票制で済ませる、という考え方もできます。ただ、2回の選挙をやるので、莫大な経費がかかるという欠点があります。
太田光征
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