「やや先行する礒崎を、松本、矢野がほぼ並んで懸命に追う」。左記は朝日新聞(2007年7月20日付)の参院選序盤の大分の選挙情勢の分析です。「社民・民主共闘」が実現していれば、同紙の選挙情勢の分析は次のようになっていたでしょう。「やや先行する松本を、礒崎が懸命に追う」。
ここまで大分の「革新」を追いつめたのは、民主党大分県連代表の吉良州司(衆院大分1区)です。なぜ社民・民主共闘は崩れたのか? いま、吉良の周辺で囁かれているところによれば、吉良州司の次の野望は大分県知事の座。彼は4年後の大分県知事選に出馬するという自らの野望を実現させるために連合大分の分断と松本文六の当選阻止(社民・民主共闘の切り崩し)を策謀した、というのが私の見方です。吉良は名代のプチ右翼です。彼が会社員として東京・国立市に在住していたときの「反共・反日教組」の立場からの当時の上原革新市政(教育行政)批判は当地の人々にも知られているところであり、彼が戦前的復古主義者の多い「新しい歴史教科書をつくる会」に強いシンパシーを抱いていることも知る人ぞ知る、です。その吉良にとって大分の「護憲」派勢力を駆逐し、連合大分を右傾化させることは、自らの野望を実現させるための至上命題といってよいものなのです。
その彼の野望のために3年前に吉良自身が説得して立候補し、「社民・民主共闘」によって当選した同じ民主党の仲間である足立信也現参院議員の次の再選は危うくなりました。吉良は仲間の将来を憂うことよりも、自らの野望を実現させるための策謀に忙しい。彼の策謀とは、大分をかつての社民王国から「新しい歴史教科書をつくる会」的な「改憲」「プチ右翼」の砦に改変しようというものです。左は、私のこの4年間の吉良観察から導き出される推論です。
さて、その吉良が白羽の矢をたてた候補者である矢野大和が民主的であるはずがありません。矢野は先日、毎日新聞が実施した「憲法改正」「9条改正」の賛否などを問う参院選立候補予定者アンケートに次のように回答しました(2007/7/5時点)。憲法改正について「該当なし」。9条改正について「該当なし」。自衛隊存続の問いについては「保有明記」。矢野は、憲法、9条改正については明言を避けていますが、自衛隊については「保有明記」と回答しています。「明記」とは「憲法明記」を意味するはずのものですから、矢野は実質的には「改憲」を主張していることになります。憲法、9条改正問題について「該当なし」と明確な態度を表明しないのは、憲法改正が大きな争点のひとつとなっている今回の参院選の候補者として卑怯な態度といわなければならないでしょう。矢野のこの卑怯さは、策謀によって大分の社民・民主共闘を瓦解させた吉良仕込みというべきでしょうか。
矢野大和が羊頭狗肉(落語家の皮を被り、中身はタカ派)のまぎれもない「改憲」派であることは7月16日の民主党前代表の前原誠司の矢野支援のための来県でいっそう明白になりました。民主党の小沢代表はこの5月9日、矢野大和公認問題に関して「民主党としては公認・推薦候補は擁立しない。あとは個人のレベルの問題」との方針を発表しました(東京新聞 2007年5月13日)。それなのになぜかりそめにも同党代表を務めた経歴を持つ前原前代表が党の方針に反してまで矢野大和の応援に来県したのでしょう。理由はひとつしかありません。前原は、民主党県連代表のプチ右翼吉良州司とその吉良の肝いりの下に大分選挙区候補者となった矢野大和とは「強硬なタカ派」「改憲論者」としての思想を共有する「同志」だからです。
前原が自民党と民主党の垣根を取り払い民主党を第2自民党、または「自民党の補完勢力」にしようとしていることはつとに有名です。前原は「中国脅威論」や「日本国憲法第9条改正」の立場を明確に打ち出しており、民主党内からも「改憲のネオコン」と評されています。インターネットのフリー百科事典『ウィキペディア』によれば、前原の兄貴分とされる現杉並区長の山田宏はいわゆる「従軍慰安婦」問題に関する米下院委決議案の抗議書に首長として公然と名を連ねてはばからない反動右翼です。山田(杉並区長)→前原→吉良→矢野大和(そして、私はこのメンバーに自民党候補者の礒崎陽輔を加えたいと思います。礒崎は吉良の高校時代の親友。「改憲」論者としての思想も共有しています。吉良の社民・民主共闘崩しの策謀にはもっと根の深いものが横たわっているのではないか、という邪推を私は捨て切れません)は「プチ右翼思想」保持者としての共通項、また「掟破り」(吉良は「社民・民主共闘」を崩し、前原は党の方針に違背する)という共通項でも括られているというべきなのです。
先にも述べましたが、今回の参院選は、憲法「改正」問題が大きな争点のひとつだといわれています。先の国会で安倍内閣は国民投票法を成立させました。その安倍首相自身が今回の参院選は「9条改憲」の是非について国民の審判を仰ぐ選挙であると位置づけてきたからです。事実、同法の成立によって3年後には憲法「改正」発議が可能になります。今回の選挙で当選した議員がその憲法「改正」発議に加わり、同「改正」法案の「成立」「廃案」のカギを握る可能性はきわめて強いのです。憲法改悪に反対してきたわれわれとしてはこの大分選挙区においてもどうしても「護憲」派議員を実現させなければなりません。それがいま、党派を超えて私たち大分県民に課せられている重大な責務というべきではないでしょうか?
私たちは4年後に「プチ右翼知事」を誕生させるわけにはいきません。また、私たちの県の「革新」を分断させようとするこのような民主党大分県連代表の「吉良の手法、手腕」(大分合同新聞)を野放しにしておくわけにもいかないのです。私たちは「護憲」の一点で団結しなければなりません。
東本高志
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