2022年04月10日

ウクライナ危機:日本の国会とメディアは情報戦に荷担するな

米国・西側による対ロシア情報戦に基づいて、ロシアについての妄想が作られています。対ロシア情報戦では、ロシア軍による蛮行ひいてはロシア軍に対する憎悪の「水増し」も行われているとみるべきでしょう。これらはロシアによるウクライナ侵略反対という大義を超えており、ロシアそのものの解体を狙う米国の戦略を支えるものです。さらには中国・北朝鮮のイメージへと自動的に重なる形で、東アジアでの軍事的緊張を高める方向に作用します。残念ながら、こうした効果を持つ情報戦に、日本のメディアと国会が荷担しています。

ウクライナ危機:ゼレンスキーに国会で「ロシアが化学兵器攻撃を準備」発言を許した責任は重大
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/486375216.html

ウクライナ反戦運動の目標は、ロシア軍の撤退、ドンバス内戦の終結、米国による対ロ・対中戦争の抑止にあるはずです。日本の役割は、火消し役を務めることであり、戦争を煽ることではありません。

NBCの下記記事は、全体として米国による情報戦の有用性を認めているようなものですが、ご紹介します。

米国は過去の慣例を破り、ロシアとの情報戦のために、確かな根拠がなくとも機密解除した情報を使用している
In a break with the past, U.S. is using intel to fight an info war with Russia, even when the intel isn't rock solid
https://www.nbcnews.com/politics/national-security/us-using-declassified-intel-fight-info-war-russia-even-intel-isnt-rock-rcna23014

タイトル自体がふざけています。プロパガンダによってイラク戦争を開始したことなどにはまったっく触れていません。米国は情報戦を先手の手段と位置付けているわけですが、物理的な敵基地攻撃論(ただの戦争)と同じ考え方です。(外見上の)ウクライナが攻められたらどうする論であって、米国が戦争を仕掛けたらどうするかを批判しているわけではありません。

以下、抜粋翻訳です。

<考え方は、クレムリンの戦術に先手を打ち、軍事作戦を複雑化させ、「モスクワのプロパガンダを弱体化させ、この戦争が世界でどのように認知されるかをロシアが決定付けることを阻止するため」(この戦略に詳しい西側政府当局者)というもの。>(太田:米国のプロパガンダによる認知誘導をも認めているようなもの)

<複数の米政府関係者は、情報の正確性に対する信頼が高くない場合でも、米国は情報を武器として使ってきたと認めている。化学剤の場合ように信頼性の低い情報を抑止力のために使うこともあれば、ある当局者が言うように、米国は単に「プーチンの頭の中に入ろうとしているだけ」である。>

<2人の米政府当局者は、プーチンの側近がプーチンに嘘をついているかどうかについての情報は決定的なものではなく、確かな証拠よりも分析に基づくものであると語った。他の当局者は、情報は非常に信頼性が高く、最高レベルで吟味されていると述べ、これに異議を唱えた。>

<米政府当局者は、中国がロシアへの武器供与を検討している兆候はないと述べた。バイデン政権は、そうしないよう中国に警告するためにそれを出した。>

<「我々は、米国さらに広くその同盟国やパートナーが、戦わずに勝つこと、今やいわゆるグレーゾーンで戦うこと、そして進行中の物語の戦争で弾薬を供給することを実現させるために、この支援(訳注:情報戦)を要請する」と、大将らは当時の国家情報長官代理のジョゼフ・マグワイアに書き送った。>


太田光征
posted by 風の人 at 15:55 | Comment(0) | 一般
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