2021年衆院選で特筆すべきことに、公明党は17年より比例区得票率を減らしているにもかかわらず、17年の21議席から21年の23議席へ増やすというウルトラCを成し遂げています。
その一因は、れいわ新撰組の比例区東海ブロックで当選圏内に入った小選挙区との重複立候補者が、比例区での当選要件である小選挙区での得票率10%要件を満たさなかったため、本来のれいわの取り分が公明に移ってしまったことによるものです。
この仕組みはおかしなものです。小選挙区では確かに政党対政党の比較評価がなされている側面がありますが、それは主に比較二大政党間での比較評価であり、あくまでその小選挙区の限られた候補者の間での順位争いにすぎません。ある小選挙区で得票成績が良くない候補者でも、他の小選挙区で立候補すれば良い得票成績を収めることもあり得るので、得票率10%要件をクリアすることも可能になります。
また例えば、比例区で10%程度の得票率を稼ぐ小政党でも、それが小選挙区で候補者を立てれば同様の10%程度の得票率を稼げるかといえば、そうとは限らず、小政党の候補者には小選挙区で票が集まりにくいのです。小選挙区制は、政党対政党の比較評価には不向きの制度です。
また、「復活当選」に対する悪いイメージも、小選挙区制と比例代表制の比較基準が異なることを無視したものです。いまこの日本で比例区得票率が10%未満の政党には議席を与えるべからず、と考える有権者はあまりいないでしょう。小選挙区での得票率10%未満の持つ意味合いは、そういうことなのです。
比例代表制では、足切り条項(阻止条項)として、規定の得票率未満の政党には議席を与えないという制度設計もあります。私は足切り条項に賛成しませんが、これはあくまでも比例区選挙の結果としての政党対政党の比較評価の問題であり、その限りで一定の得票率を満たさない政党は満たす政党より得票成績が悪いから議席を与えない、という考え方が成り立つわけです。
ところが小選挙区での得票率10%要件を比例区での獲得議席数に連動させる仕組みは、比例区の足切り条項とは似て非なるものです。現行法制の下では、あくまで政党対政党の比較評価は比例区に委ねられているのです。にもかかわらず、比例区で勝負がついて確保されるべき議席数を確保できないのはおかしい。
小選挙区制と比例代表制は異なる比較基準を採用しているにもかかわらず、これらを連動させて、小選挙区での比較成績で比例区の獲得議席数に影響を及ぼす仕組みは、比例区を11ブロックに細分化して、小政党の得票を死票にする仕掛けと同様の効果を持ちます。
以上のように、狭い小選挙区での得票率10%要件を比例区の獲得議席数に連動させる仕組みにはまったく合理性がありません。
現行比例区制度の骨格を当面維持するにしても、より比例性が確保される最大剰余法などの議席配分計算法や全国一括式の議席配分法などへの改正と合わせ(下記記事参照)、小選挙区の得票率10%要件を比例区の獲得議席数に連動させる仕組みは直ちに廃止する法改正が必要です。
2021年衆院選比例区:全国一括集計した得票数で比例配分した場合の議席数(比例区でも死票が発生する)
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/484286009.html
太田光征
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