2016年10月15日

落選運動を禁止する規定は公職選挙法にない

本稿は2007年07月14日の記事ですが、日付と内容を随時更新します。

以下、2016年7月26日追記

市民個人や市民団体は選挙期間中でもマイクを使って選挙運動でない落選運動や政治運動を行うことができると何度も何度も指摘してきましたが、この認識はほとんど広まっていないようです。

神戸学院大学の上脇博之教授も「ウェブサイト等・電子メールを用いていない落選運動」は適法だと指摘している通りです。

公職選挙法に注意!〜「落選運動を支援する会」共同代表の上脇博之教授による「落選運動のススメ」(下)(「落選運動」解説編) | IWJ Independent Web Journal
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/308570#idx-11
<つまり、「ウェブサイト等・電子メールを用いた落選運動」そのものは、改正公選法によって初めて認めら(保障さ)れたものではなく、改正前から認めら(保障さ)れている、ということです。また、「単に特定の候補者の落選のみを図る活動を念頭」に置いている「落選運動」は、「ウェブサイト等・電子メールを用いていない落選運動」を排除するものではなく、むしろ含むことは明らかですから、後者の落選運動も現行の公選法は規制されてはいない、ということになります。>

以下、2016年7月4日追記(「2013年7月6日追記」もご参照ください)。

総務省のインターネット選挙ガイドラインに示されているように、電子メールを含むウェブサイトによる落選運動や政治運動は、インターネット選挙「解禁」の前から規制されていません(インターネット選挙は「解禁」前から禁止されていないと私は解釈しています)。

選挙期間中でも、当選させたい政党や候補者の名前を示さない限り、インターネット以外の表現手段(チラシ、拡声器…)でも、市民個人や市民団体・労組は自由に落選運動を含む政治活動を行うことができます。ただし、落選運動の手段としての戸別訪問と署名集めは禁止されています。

公選法が選挙期間中にもっぱら規制対象にしている主体と活動は、<あらゆる主体>による「選挙運動」と、<「市民個人・市民団体・労組」ではない「政党・政治団体」>による「政治運動」だけなので、政治運動の規制対象でない主体(市民個人・市民団体・労組)による活動(「選挙運動ではない落選運動」を含む政治運動)は選挙期間中でも自由なのです。(この段落、2016年10月15日に表現を修正)

総務省|インターネット選挙運動の解禁に関する情報
http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo10.html
ガイドライン(第一版:平成25年4月26日)6ページ
http://www.soumu.go.jp/main_content/000222706.pdf

ウェブサイト等・電子メールを用いた落選運動※4
※5現行どおり、規制されない。ただし、新たに表示義務が課される。
ウェブサイト等・電子メールを用いた落選運動以外の政治活動
※6現行どおり、規制されない

rakusen.jpg


以下、2016年4月27日追記。

公選法では未成年者による選挙運動が禁止されていますが、落選運動は禁止されていません。

(未成年者の選挙運動の禁止)
第百三十七条の二  年齢満二十年未満の者は、選挙運動をすることができない。
2  何人も、年齢満二十年未満の者を使用して選挙運動をすることができない。但し、選挙運動のための労務に使用する場合は、この限りでない。



以下、2013年7月21日追記。

公職選挙法
http://goo.gl/CBdWd

(選挙運動の期間) 第百二十九条 「選挙の期日の前日まで」
(インターネットなどによる落選運動) 第百四十二条の五「選挙の期日の公示又は告示の日からその選挙の当日まで」(2016年4月27日追記:落選運動の期間に定めはありません。)

(選挙運動の期間)
第百二十九条  選挙運動は、各選挙につき、それぞれ第八十六条第一項から第三項まで若しくは第八項の規定による候補者の届出、第八十六条の二第一項の規定による衆議院名簿の届出、第八十六条の三第一項の規定による参議院名簿の届出(同条第二項において準用する第八十六条の二第九項前段の規定による届出に係る候補者については、当該届出)又は第八十六条の四第一項、第二項、第五項、第六項若しくは第八項の規定による公職の候補者の届出のあつた日から当該選挙の期日の前日まででなければ、することができない。

(インターネット等を利用する方法により当選を得させないための活動に使用する文書図画を頒布する者の表示義務)
第百四十二条の五  選挙の期日の公示又は告示の日からその選挙の当日までの間に、ウェブサイト等を利用する方法により当選を得させないための活動に使用する文書図画を頒布する者は、その者の電子メールアドレス等が、当該文書図画に係る電気通信の受信をする者が使用する通信端末機器の映像面に正しく表示されるようにしなければならない。
2  選挙の期日の公示又は告示の日からその選挙の当日までの間に、電子メールを利用する方法により当選を得させないための活動に使用する文書図画を頒布する者は、当該文書図画にその者の電子メールアドレス及び氏名又は名称を正しく表示しなければならない。



以下、2013年7月8日追記。

7月8日、総務省選挙課に落選運動について照会しました。メールでも「1人区、2人」の場合もOK(従って、7月6日追記の一部を訂正します)。なぜか、選挙運動規制などの媒体規制は数量規制という考え方に基づくから。

個人によるビラ・拡声器を使用しての落選運動を規制する規定はない。官邸前のような集まりが公選法の規制政治団体になるかどうかは実態による(実際は規制されていない、過去の照会と同回答)。

個人によるビラ・拡声器を使用しての落選運動が規制されないといっても、今度は「1人区、2人」の場合に選挙運動になる可能性が高まる(表現の内容による)。



以下、2013年7月6日追記

インターネット選挙は旧公職選挙法でも禁止されていませんでしたが、ウェブなどが「文書図画」とされてしまう改悪が行われてしまいました。インターネット広告を無所属候補は禁止され(第百四十二条の六 )、メールによる選挙運動を有権者は禁止され(第百四十二条の四)、インターネットによる選挙運動・落選運動にツイッターアカウントやメールアドレスなどの表示が義務化され(第百四十二条の三、第百四十二条の五)、インターネット空間に制約が持ち込まれました。相変わらずの制限選挙思想に基づいています。

総務省|インターネット選挙運動の解禁に関する情報
http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo10.html

インターネット関連以外での改定はほとんどありません。以前と同様、公示後の政治活動に対する制限は、「政党その他の政治活動を行う団体」にしか適用されないので、その他の団体や個人による政治活動は何ら制限されません。官邸前の連続行動であれデモであれ当然に可能です。ビラの頒布や拡声器の使用もOKです。

また、落選運動は選挙運動とは異なるので、ビラの頒布や拡声器の使用の制限など、一連の選挙運動規制は落選運動にほとんど適用されません(戸別訪問や署名運動が落選運動の手段として禁止される)。

落選運動が選挙運動と異なることは、公職選挙法の改定部分や総務省によるインターネット選挙ガイドラインなどから明らかです。

第百四十二条の五「インターネット等を利用する方法により当選を得させないための活動に使用する文書図画を頒布する者の表示義務」が新設されたのは、落選運動と選挙運動が違うからに他なりません。

同ガイドライン6ページの説明がもっと明瞭でしょう。「ウェブサイト等・電子メールを用いた落選運動」については「現行どおり、規制されない。ただし、新たに表示義務が課される」とされ、「ウェブサイト等・電子メールを用いた落選運動以外の政治活動」についても、「現行どおり、規制されない」と説明されています。いずれも政党等・候補者・有権者が対象です。

同ガイドライン29ページには落選運動の定義があり、当選目的がない落選運動を落選運動(「当選を得させないための活動」)と定義しています。つまり、実際の目安は、1人区であれば、落選運動の対象者以外に候補者が2人以上いればOKということ(2013年7月8日の追記を参照)。

※ 落選運動について
総務省|インターネット選挙運動の解禁に関する情報
改正公職選挙法(インターネット選挙運動解禁)ガイドライン(29ページ)
http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo10.html#index03

○ 公職選挙法における選挙運動とは、判例・実例によれば、特定の選挙において、特定の候補者(必ずしも1人の場合に限られない)の当選を目的として投票を得又は得させるために必要かつ有利な行為であるとされている。
したがって、ある候補者の落選を目的とする行為であっても、それが他の候補者の当選を図ることを目的とするものであれば、選挙運動となる。
ただし、何ら当選目的がなく、単に特定の候補者の落選のみを図る行為である場合には、選挙運動には当たらないと解されている(大判昭5.9.23刑集9・678等)。
○ 本改正における「当選を得させないための活動」とは、このような単に特定の候補者(必ずしも1人の場合に限られない)の落選のみを図る活動を念頭に置いており、本ガイドラインでは、当該活動を「落選運動」ということとする。
○ なお、一般論としては、一般的な論評に過ぎないと認められる行為は、選挙運動及び落選運動のいずれにも当たらないと考えられる。


一方で、「政党その他の政治活動を行う団体」でも、公示後でもインターネット媒体に「候補者の氏名」を記載してもよいことになりました(その他の団体や個人についての規定ではないから、その他の団体や個人が公示後でもインターネット媒体に「候補者の氏名」を記載してもよい)。

(連呼行為等の禁止)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO100.html

第二百一条の十三  政党その他の政治活動を行う団体は、各選挙につき、その選挙の期日の公示又は告示の日からその選挙の当日までの間に限り、政治活動のため、次の各号に掲げる行為をすることができない。ただし、第一号の連呼行為については、この章の規定による政談演説会の会場及び街頭政談演説の場所においてする場合並びに午前八時から午後八時までの間に限り、この章の規定により政策の普及宣伝及び演説の告知のために使用される自動車の上においてする場合並びに第三号の文書図画の頒布については、この章の規定による政談演説会の会場においてする場合は、この限りでない。
一  連呼行為をすること。
二  いかなる名義をもつてするを問わず、掲示し又は頒布する文書図画(新聞紙及び雑誌並びにインターネット等を利用する方法により頒布されるものを除く。)に、当該選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)の特定の候補者の氏名又はその氏名が類推されるような事項を記載すること。
三  国又は地方公共団体が所有し又は管理する建物(専ら職員の居住の用に供されているもの及び公営住宅を除く。)において文書図画(新聞紙及び雑誌を除く。)の頒布(郵便等又は新聞折込みの方法による頒布を除く。)をすること。
2  第百四十条の二第二項の規定は、前項ただし書の規定により政治活動のための連呼行為をする政党その他の政治団体について準用する。




2007年07月14日の記事

12日に、総務省選挙課に問い合わせたところ、公職選挙法には個人による落選運動を禁止する規定はない、ただし2人が立候補していて、結果的に一方の当選に利する行為であれば、選挙運動になることがある、という旨の回答をもらいました。

今度の参院選の場合、(1人区で)2人のみ立候補している選挙区は、沖縄選挙区しかありません。したがって、ほとんど落選運動はOKだと私は判断します。

なお、近藤ゆり子さんも選挙課に話を聞かれ、以下の重要なことが(再)確認できました。

Q:公職選挙法の所轄(行政として条文を「解釈」する部署)は?
A:総務省自治行政局選挙課である。 (中央選挙管理会は選挙の執行等の機関)

→東京都選挙管理委員会が公式サイトで選挙運動の「説明」として、落選運動を含ませていますが、東京都の判断は越権行為であると私は判断します。

Q:『実務と研修のためのわかりやすい公職選挙法』(選挙制度研究会編)と『東京都選挙管理委員会「選挙運動」について』の違いは知っているか?
A:知っている。

Q:落選運動を考える者にとっては大きな違いになる。 自治行政局選挙課としての「公職選挙法における『選挙運動』の定義」はないの
か?
A:(直接答えず)「S5.9.23 大審院判決に『単に特定候補のみの落選はかる行為は選挙運動とはいえない』というものがある。公職選挙法は変わったが、このは判例は生きていると考える」。


以下、2009年8月21日追記

公示後の政治活動に対する制限は、政党その他の政治活動を行う団体にしか適用されないので、個人による政治活動は何ら制限されない。

総選挙における政治活動の規制
http://www.houko.com/00/01/S25/100C.HTM#s14-3

第201条の5 政党その他の政治活動を行う団体は、別段の定めがある場合を除き、その政治活動のうち、政談演説会及び街頭政談演説の開催、ポスターの掲示、立札及び看板の類(政党その他の政治団体の本部又は支部の事務所において掲示するものを除く。以下同じ。)の掲示並びにビラ(これに類する文書図画を含む。以下同じ。)の頒布(これらの掲示又は頒布には、それぞれ、ポスター、立札若しくは看板の類又はビラで、政党その他の政治活動を行う団体のシンボル・マークを表示するものの掲示又は頒布を含む。以下同じ。)並びに宣伝告知(政党その他の政治活動を行う団体の発行する新聞紙、雑誌、書籍及びパンフレットの普及宣伝を含む。以下同じ。)のための自動車、船舶及び拡声機の使用については、衆議院議員の総選挙の期日の公示の日から選挙の当日までの間に限り、これをすることができない。

更新についての判断基準
http://katteren.blog97.fc2.com/blog-entry-6.html

まず基本としておさえておくべきは、禁止されているのは「第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為として」の頒布・掲示であることです。これらは「選挙運動のために使用する」、つまり、投票呼びかけなど当選を得させる目的の文書です。ですから、目的が選挙運動目的でなければ、名前が載っていても問題ないのです。

文書図画の頒布
http://www.houko.com/00/01/S25/100B.HTM#s13

第142条 衆議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙においては、選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号に規定する通常葉書並びに第1号から第3号まで及び第5号から第7号までに規定するビラのほかは、頒布することができない。この場合において、ビラについては、散布することができない。

文書図画の頒布又は掲示につき禁止を免れる行為の制限
http://www.houko.com/00/01/S25/100B.HTM#s13

第146条 何人も、選挙運動の期間中は、著述、演芸等の広告その他いかなる名義をもつてするを問わず、第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為として、公職 の候補者の氏名若しくはシンボル・マーク、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者を推薦し、支持し若しくは反対する者の名を表示する文書図画を頒布 し又は掲示することができない。


公職選挙法の規定では、落選運動は選挙運動に当たらないため、公示後の活動も可能。

8月13日22時6分配信 産経新聞


以下、2009年8月28日追記
落選運動の内、戸別訪問と署名運動は、禁止されています。

[参考]
http://www.tsumura.org/katsudo/senkyo/00.html


「選挙運動」の定義について

公職選挙法に選挙運動の定義はありませんが、最高裁(大審院)判例で定義が示されています。

「選挙運動とは、一定の議員選挙につき、一定の議員候補者を当選せしむべく、投票を得もしくは得しむるにつき、直接又は間接に必要且有利なる周旋勧誘もしくは誘導その他諸般の行為をなすことを汎称するもの」

[参考]
http://www.tsumura.org/katsudo/senkyo/00.html


2010年5月22日追記
(自動車、船舶及び拡声機の使用)
第141条 次の各号に掲げる選挙においては、主として選挙運動のために使用される自動車(道路交通法(昭和35年法律第105号)第2条第1項第9号に規定する自動車をいう。以下同じ。)又は船舶及び拡声機(携帯用のものを含む。以下同じ。)は、公職の候補者1人について当該各号に定めるもののほかは、使用することができない。ただし、拡声機については、個人演説会(演説を含む。)の開催中、その会場において別に1そろいを使用することを妨げるものではない。


[参考]
インターネット上の選挙活動は自由である
http://www.irev.org/senkyo/free.htm
インターネット選挙になるべきだった選挙−− あなたも公職選挙法に「違反」してみませんか
http://www.irev.org/shakai/isenkyo1.htm
インターネット選挙は公職選挙法違反か−−「馬」は「自動車」か
http://www.irev.org/shakai/isenkyo2.htm
ネット時代の勝手連と公選法
http://katteren.blog97.fc2.com/
落選運動の勝手連?〜 「選挙運動」の定義
http://katteren.blog97.fc2.com/blog-entry-2.html#comment27
勝手連は政治団体か?
http://katteren.blog97.fc2.com/blog-entry-1.html
サクジョ・ヘイサという都市伝説
http://katteren.blog97.fc2.com/blog-entry-3.html
落選運動
http://kabuombu.sakura.ne.jp/archives/seiji-rakusen.htm

太田光征
http://otasa.net/
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