「候補者アンケート」をどう読むべきか? もちろん、「候補者アンケート」は私たちが候補者を選択しようとする際の大切な参考資料のひとつです。しかし、同候補者アンケートの回答はどれほど信用できるものか。同アンケートには「真実性」が確実に担保されているわけではありません。可能性として候補者がホラを吹くことだって、ウソをいうことだってありえます。読み方を誤れば、私たちは、とんでもない候補者に1票を投じるということにもなりかねません。
以下、「候補者アンケート」の私流の読み方について。
参院選福島選挙区を例にとります。このほど郡山市のNPOメディア・イコールが、同選挙区で立候補を表明している4人に対し、「男女共同参画政策」に関する公開質問状を送付しました。各候補者の回答は同NPOのサイトで読むことができます。
http://park18.wakwak.com/~npo-equal/
同回答を一見した限りでは、その回答は候補者全員がほぼ類似していて、これで候補者の資質などを比較しようとしてもその判断に困ります。
一見したところの「政策の類似性」についてはたとえば次のようです。民主党と共産党の参院選候補者の回答を比較してみます。
■民主党参院選候補者(福島選挙区)の回答
◆1 男女平等社会の実現について
「男女共同参画社会基本法の施行後、性別役割分担意識に基づく制度に一定の変化が見られるものの、未だに男女の役割を固定的に捉える考えが根強いのも事実です。また男女の賃金格差など雇用の場において女性に不利な状況も見受けられます。こういった慣行や制度の解消に向け、地道に職場、地域、家庭が一体となって取り組んでいくことが必要だと思います」
◆6 憲法「改正」問題について
「国民主権、基本的人権の保障、平和主義という現行憲法の原理に立った上で、9条、24条のあり方を考えるべきと思います、特に24条の改変はいかがなものかと思います」
http://park18.wakwak.com/~npo-equal/kaneko.pdf
■共産党参院選候補者(福島選挙区)の回答
◆1 男女平等社会の実現について
「憲法が施行されて60年、世界は女性差別の撤廃が大きな流れです。女性の活躍の場は確実にひろがり、力を発揮しているにもかかわらず、国際的に改善が指摘されている民法や賃金格差など、女性の人権と地位向上の遅れは放置できない課題です。戦前の価値観・家族観を日本社会に押し付け、浸透を図る、歴史逆行の危険な動きを許さず、男女の平等な社会を実現するために力をつくします。性的マイノリティーの人権を守ります」
◆6 憲法「改正」問題について
「『世界の宝』ともいうべき憲法9 条を守るため、思想信条、党派の違いを超えた共同を発展させるために力をつくします。「集団的自衛権は憲法上行使できない」としてきたこれまでの政府の憲法解釈を変える動きに反対します。自公政権による侵略戦争美化を許さず、首相の靖国神社への参拝や真榊奉納などは、今後、きっぱり中止することを要求します。政府・与党が、「従軍慰安婦」問題でおわびを表明した河野官房長官談話(93年)や、日本の植民地支配と侵略への反省を明らかにした終戦50 周年の村山首相談話(95年)を厳格にひきつぎ、その立場で行動すべきです。防衛省・自衛隊による憲法違反の情報
収集や国民監視活動の全容を明らかにし、ただちに中止することを求めます」
http://park18.wakwak.com/~npo-equal/miyamoto.pdf
あなたならどちらの政党候補者の主張を支持しますか? どちらの政党候補者の主張も似ていて判断しにくいでしょう。
この類似性(子細に見ればもちろん違いがありますが)の原因のひとつは、「男女共同参画政策」は少なくとも建前上は政府の重要な施策のひとつでもあり、超党派の女性議員による議員立法として成立した「男女共同参画社会基本法」という法律もあることから、この点に関する各政党、各候補者間の政策の違いが見えにくいということがあります。
もうひとつは、記述式のアンケートであり、その記述の視点、観点は、候補者サイドに一任されているため、各候補者間に論点のずれが見られ、そのことが各候補者の主張の比較を困難にしている、という事情があげられます。
たとえば、憲法「改正」問題についての民主党候補者の回答。「国民主権、基本的人権の保障、平和主義という現行憲法の原理に立った上で、9条、24条のあり方を考えるべきと思います、特に24条の改変はいかがなものかと思います」は、おそらく「憲法9条」擁護の立場の人がこの回答を読んでも違和感を感じないでしょう。
しかし、この民主党候補者は、先に毎日新聞が実施した参院選立候補予定者アンケートの回答(2007/7/5時点)では次のように答えています。憲法「改正」については「該当なし」、9条「改正」については「すべきでない」、自衛隊については「現状のまま」。
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/senkyo/07saninsen/votematch/
さらに「福島県九条の会」の公開質問への回答では次のように答えています。憲法9条について「9条は1項のみ残し、2項は自衛軍の保持を明記するなど変更を加えるべきである」。
毎日新聞アンケートに「9条は改正すべきでない」と答えた回答と「福島県九条の会」の公開質問状に対して「自衛軍保持を明記」と答えた回答は明らかに矛盾します。「明記」とは「憲法明記」を意味するはずですから、この民主党候補者は実質的には「改憲」を主張していることになります。
私が見たところ、「男女共同参画政策」や「環境問題」「農業問題」などのアンケートでは、各候補者は政党の違いを超えてほぼ同様の回答をしています。「環境を守る」ことに反対する候補者はいないでしょうし、「地産地消」に反対する候補者もいないに違いないからです。
また、記述式回答では、候補者は、問われている内容よりも自分の論点のみを主張する(都合の悪い回答は避ける)傾向がありますから、回答に書かれていることがらだけでは候補者の真の「政策」を判断しがたい場合が多々あります。
私たちは「アンケート」結果を参照する場合、多角的な観点からその「アンケート」結果を分析する、という視点を持つべきでしょう。候補者の回答を無批判に受容する、という姿勢はとりたくないものです。
東本高志
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