2007年07月08日

自衛隊による駆除を目指す立法化に反対します

「生命の輪」メンバーの方の訴えを転載します。

2007/06/30

自衛隊による駆除を目指す立法化に反対します

「害獣対策に自衛隊活用 自民チーム立法化方針」というタイトルの記事(朝日新聞 07/6/10)によれば、宮路和明衆院議員を座長とする自民党の有害鳥獣対策の検討チームは、「有害鳥獣駆除」のために知事らが自衛隊の派遣を要請し侵入防止柵やワナの設置、草刈りなどの作業にあたれるように議員立法による法整備を進めているということです。チームのなかには銃による一斉捕獲、駆除を求める声が強いとも書かれていますが、6月27日に同チームによる緊急提言がまとめられたことを伝える朝日新聞記事(「銃使わずOBで」07/6/28)によれば、現職自衛官の銃使用による駆除は見送り、在職中に狩猟研修などをして自衛官OBが駆除にあたれるように育成する方針になったようです。また、狩猟免許についての規制緩和なども考えられているようです。背景として鳥獣による農作物被害がここ数年全国で約200億円になり減っていないこと、ハンターはこの30年で約半数以下になっていることなどがあげられています。
  
私は埼玉県の農村地域に住んでいるので被害の話しは身近に聞きます。数年前にはイノシシ被害対策のために行政の協力も得て、防除専門家にお話しを聞きました。そのなかで、侵入防止柵なども動物の習性を理解せずに設置すれば有害無益になること、駆除のためにハンターが山に入り、里には出ないで自立しているイノシシたちまで追い回して結局被害も増えてしまうこともあることなどを聞きました。出席いただいた農家のなかで、それまでいろいろな方法を試しても被害が減らなかったけれど、そのときのお話しで聞いたアドバイスに従って対策をたてたところ、それ程の費用も使わずにほぼ100%の効果を得た方もありました。しかし、中には兼業農家で防除対策までは手が回らず、腹いせのためだと知りながらハンターにイノシシたちを撃って欲しいという方もありました。
  
朝日新聞の記事にあるとおりハンターの数は減っています。しかし、鳥獣の捕獲数(殺されているものの数)は減っているどころかこの30年の間に増えているものも目立ちます。イノシシについては2004年に狩猟、駆除および特定計画によって殺された頭数は約26万7千頭で30年まえの5倍以上になります。ニホンシカについては2004年に約17万頭が殺され、これは30年まえの約10倍になります。狩猟鳥獣全体について見ると、2004年の捕獲数は約228万にもなりますが、これには毎年約1万頭が殺されているニホンサルその他非狩猟鳥獣の数は含まれていません。被害額は2000~2004年でほぼ毎年200億円ですが、被害面積は2000年に18万ヘクタールだったものが2004年には14万ヘクタールに減っています(環境省鳥獣保護事業ワーキンググループによる平成18年7月14日会議資料による。)

「鳥獣問題」の主要な原因のひとつとして、1955年以降の拡大造林計画によって日本の森林面積の約41%が杉檜などの針葉樹からなる人工林に変えられ、手入れも不十分のまま日も差し込まない、生き物たちにとって住みにくい場所になってしまっていることがあげられます。それに加えて、農業の衰退がとまらず、食料の自給率は約40%にまで落ち込み、農村過疎化に歯止めが掛らず、里地が一部里山化していることもあります。山に住みにくくなった生き物たちが里にでると人の姿もなく、食べ物があるのですから、問題も起こるわけです。

生きるためになくてはならない水の源である山、災害から里を守る山林が各地で危機的状況にあります。自然再生、里山保全、回復を求める声がようやく高くなっていますが、一度壊された自然は工事や金を掛けるだけでは回復しません。太古の昔から山や河川、原野や海に生き、互いに育て合い生かしあってきたあらゆる生物たちこそ自然再生の主役です。果実を食べて種を蒔く鳥たちや、タヌキたち。固い木の実をあちこちに埋め込んで樹木を育てるのに役立っているネズミたち、そして昆虫類、キノコ、微生物などあらゆる生物と植物のつながりのなかでこそ山林が育ってきたのです。将来の世代のためにも掛替えのない宝である野生生物たちを、私たちは追いやり追いつめ山や川、海と一緒に危機的状況に追込んできました。
  
今必要なのは、対症療法的な駆除よりも、まずこれまでの農林政策について見直し、グローバリズム経済に追随してますます農業を追いつめるのではなく、地域住民とも連携して地産地消型の農業の再生をはかることではないでしょうか。そして、野生生物の生息地の回復と保全こそ、問題の根本的解決のために必要不可欠でしょう。生態系や鳥獣のことについての知識や経験を持つ人材を積極的に育成し、彼らが農林水産事業者や行政と連携して動けるような仕組みを整備することも必要です。山についても、鳥獣のことも地域の暮らしについても知らない自衛隊員達が、防除柵やワナを設置するなどしても「有害無益」なことになるでしょう。特にワナは錯誤捕獲などの問題もある残酷な猟具です。鳥獣被害対策に自衛隊を使えるようにするための立法化の計画に強く反対します。

--------------posted by ohta
posted by 風の人 at 10:14 | Comment(2) | TrackBack(0) | 一般
この記事へのコメント
机上で論じてる間って其れほど無いと思います。猶予は残り少ないです。失礼ですが田舎の集落をご覧になった事ありますか? お国は自衛隊 一部では電柵が持てはやされてますが、 みなさん元は何が起因して始まったかを思い出すべきです 田舎の農家は皆なんか単発的な抵抗を随時してます
Posted by ミカン at 2007年09月13日 20:39
自分は違う意味で反対します。
一般の方は御存じ無いかもしれませんが、自衛隊の一般隊員はほとんど射撃練習をしていません。
試しにネットで「自衛隊 口鉄砲」で検索してみて下さい。
Posted by ヒロポン at 2013年02月27日 10:50
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