2015年8月7日
(宣言にあたって)
2015年の夏。戦後70年・・・、しかし本当に「戦後」と言っていいのか、もしかしたら「戦前」や「戦中」なのではないか。
そんな気さえするこの頃です。アジア・太平洋戦争が終わりを
告げた時、わたしたちは、二度と戦争に手を染めてはならないと、世界の人びとに向けて誓いました。
その誓いが今、根底から覆されようとしています。
どうしてこんなことになったのでしょう?
日々の暮らしに追われて、政治や社会への関心を失くしたからでしょうか。世代を超えた記憶の継承を怠ったからでしょうか。
行政に白紙委任し、消費者としての日常に慣れ過ぎたからでしょ
うか、答えは簡単ではありません。
現政権を生み出したわたしたち自身の責任も問わなければなりません。わたしたち杉並の市民は何度も議論を重ねました。
そこから生まれたのがこの宣言です。
(宣言文)
「戦争はもうこりごり」。これが敗戦後のスタートでした。
日本兵の戦死者は230万人。そのうち140万人は餓死や病死
だとみられています。被害の体験ばかりに目が行きがちですが、
それでは戦争を語ったことにはなりません。
日本軍は、奪い・殺し・焼くという残虐行為に及んだことも多々
ありました。戦場で日本兵は慰安所の前に並びました。祖父や父、夫や兄弟もそうしたことと無縁ではありません。これまで語ることを避けてきた加害の記憶です。
明治以来日本は、江華島(カンファド)事件を皮切りに、日清・日露戦争を経て韓国を併合しました。その後中国大陸への侵略を進め、さらに東南アジアへと戦争の拡大を図り、アジア・太平洋戦争へ突入しました。
日本が侵略と植民地支配に乗り出さなければ、アジアで2000万人もの命が奪われることはありませんでした。各都市への空襲も沖縄の地上戦も、広島・長崎への原爆投下もなかったのです。
戦後は、朝鮮戦争やベトナム戦争に深く関わりました。沖縄には米軍基地を集中させ、今また辺野古に新たな基地をつくろうとしています。
戦争は常に「平和・自存自衛」という大義のもとで始められ、多くの市民やメディアは情報統制のもと、戦争に加担しました。民主主義は、国民の知る権利と言論の自由によって支えられるものですが、現政権は、秘密保護法を強行し、違憲とされる戦争法案の成立を企てています。
さらに、福島原発事故に関わる責任をあいまいにしたまま、再稼動を目論んでいます。わたしたちはどうすればいいのでしょう。
敗戦から9年目の1954年、ビキニ環礁での水爆実験があった直後、杉並の市民は真っ先に水爆反対の声をあげました。声は国内だけでなく世界に広がりました。
そのときの記憶は今も鮮明です。
民主主義と平和主義と立憲主義が危機に瀕している現在、戦争法案阻止に声を上げる若者たちが、杉並を含め全国で立ち上がりました。世代を超えた連帯が始まっています。
わたしたちは信じます。一人ひとりが歴史の負の遺産と向き合い、「もしも自分だったら…」と問い続けていく。その道のりの中にこそ、未来を拓く鍵があるのだと。
わたしたちは応援します。威圧に屈することなく、自立し市民と共に歩むメディアと、国家からの介入を許さない自由で豊かな教育をいっしょに育てようと。
わたしたちは思います。外国籍の市民も分け隔てなく、一人ひとりが主権者として当たり前に尊重され、安心して暮らせる社会をつくろうと。
わたしたちは願います。たがいの性別や世代、また歴史や文化が違うからこそ、生き生きした言葉を交わし、人間としての共感を大切にしていこうと。そして、何より戦争のない平和な世界をともにつくろうと。
これが、わたしたち杉並の市民の戦後70年宣言です。
「杉並の市民による戦後70年宣言 」実行委員会
永田浩三・梁 東準・小関啓子・仲里克彦・矢内一弘・小林久枝・岡田良子小島政男・東本久子<順不同>
<賛同団体>
杉並の教育を考えるみんなの会・NO WAR杉並・戦争をさせない1000人委員会・秘密保護法に反対する杉並アピールの会
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以上、転載
太田光征
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