2015年05月31日

第47回衆議院議員総選挙(2014年衆院選)無効請求訴訟の上告理由書

2015年5月29日、第47回衆議院議員総選挙(2014年衆院選)無効請求訴訟の上告理由書を東京高裁に提出してきました。

2015年5月28日付上告理由書
http://otasa.net//documents/2014senkyo/2015_Reasons_for_Final_Appeal.pdf

以下は上告理由書の要旨で、番号は理由書内の番号です。


1 選挙人は所属選挙区以外の選挙区についても選挙無効請求訴訟を提起できる(原告適格制限)
8 住所非保有者の選挙権制限(選挙無効の原因の制限)

公選法の204条の規定では選挙の効力に関し異議がある選挙人はだれでも選挙規定の違反(同法205条)を無効原因として選挙訴訟を提起できます。

ところが、東京高裁判決は従来の訴訟と同様、所属選挙区以外についての訴えと、他者に係る選挙規定(住所非保有者からの選挙権剥奪)についての訴えを却下し、いわゆる民衆訴訟としての選挙訴訟が特定の選挙人などの権利保護を目的とせずに違法な選挙の結果を排除する公益上の要請から認められた制度であるとする過去最高裁判例に違背する判決となっています。


3 比例区における投票価値の格差の違憲性

東京高裁判決は、投票価値の格差一般を違憲と判断した下記平成24年10月17日大法廷判決に違背して、投票価値の定義「投票の有する影響力」を削除し、いわゆる「1票の格差」(1議席当たりの有権者数ないし人口の選挙区間での比)だけが投票価値の格差だと錯覚し(たように見せ)、「政党間」で「1議席あたりの得票数」を比較する政党間1票格差の違憲性を認めませんでした。

「憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される」(平成23年(行ツ)第64号選挙無効請求事件平成24年10月17日最高裁判所大法廷判決・集民第241号91頁)

原審原告らは投票価値を「政党・候補者の議席配分・獲得議席数に与える影響力」と明確に定義しています。国会議員は選挙区の代表ではなく全国民の代表であることからして、投票価値を考える場合の有権者グループの区分け基準は選挙区だけでなく、投票先政党別など、種々に考えられるのです(訴状13ページの表「投票価値の格差をめぐる従来の定数是正訴訟と本件訴訟の比較」参照)。

政党間1票格差は、自民党細田博之氏の「比例区中小政党優遇枠案」の評価で、読売新聞も指摘し、産経新聞も概念化しています。
現行の衆院比例代表制はブロック間で異定数・異種選挙制度を適用しているため、同一投票結果・同一価値を実現していません。これは、訴状18ページで示したように、東北ブロック(定数14)より四国ブロック(定数6)で得票率が高い共産党および同党に投票した有権者が前者で候補者を当選させることができ、後者で候補者を当選させることができなかった事態を指します。四国ブロックの定数6は比例代表制などとはいえません。単なる中選挙区制です。

東京高裁判決は、どの選挙制度でも死票が生じるという理由で、こうしたブロック間死票率格差(定数自体の格差、異定数・異種選挙制度の適用)も投票価値の格差とは認めませんでした。ちなみに、スイス連邦最高裁はブロック間死票率格差=定数自体の格差=政党間1票格差を違憲と判断しています。


4 当選枠配分の格差(比例区の定数枠から無所属候補を締め出す小選挙区比例代表並立制は制限選挙規定であり違憲である)

東京高裁判決は、当選枠配分の格差をめぐっても、政党の重要性を根拠に、制限選挙規定をあからさまに認めています。


5 比例区選挙の立候補者数規定は制限選挙規定であり違憲である

比例区には候補者2割要件(政党要件のない政治団体にのみ各比例区ブロックの定数の2割の候補者擁立を義務付けた比例区立候補規定)があります。

東京高裁判決は、候補者2割要件の立法目的を政策本位、政党本位の選挙の実現とするが、選挙で政党よりも得票数すなわち国民の政治的意思が多く集まり、政党よりも支持される政治団体が存在する今日の状況(2013年参院選の緑の党対みどりの風)を無視して、政党と政治団体を区別しなければ政策本位、政党本位の選挙が実現しない点について、何ら反証していません。


6 小選挙区における投票価値の格差の違憲性

小選挙区では、いわゆる「1票の格差」(選挙区間)と「投票価値の格差」「政党間1票格差」(全国レベル、公明党を基準にして共産党の82.78倍が最大)を争点にしましたが、東京高裁判決は1票の格差2倍超について、投票価値の格差の是正の必要性すなわち違憲性を認めながら違憲ではないとする論をいまだに繰り返し、1票の格差2未満の違憲性を否定しています。

小選挙区における定数配分の格差で問題なのは、自民党など特定党派が強い地方に有権者数当たりの議席が多いという点などで、1票の格差そのものが無条件に問題なのではありません。

東京高裁判決は、小選挙区制がもたらす政党間1票格差を定数配分の格差が増幅させるという争点に何ら答えていません。


7 小選挙区制は優先的憲法要請と数科学的知見に違背し、違憲である

小選挙区制を含む多数代表制は多数意見さえ測定できないというコンドルセのパラドックスがあります。東京高裁判決は小選挙区制が「全国民の代表」(憲法第43条1項)に反することを示す同パラドックスに反証していません。

平等な国民主権を院内まで保障し、憲法前文「国民の厳粛な信託」、第43条「全国民を代表する選挙」という定量的要請に応えためには、選挙で投票者の総意が生票として議席に反映され、主権者の総意が院内に反映されなければなりません。死票の最小化が定量的憲法要請から導かれる定量的な選挙制度条件です。

死票を最大化する小選挙区制は「国民による国会での意見の多数決」さえ保障しない「国民の多数意見と国会の多数意見の乖離」(院内における「国民主権の格差」)を最大化する制度であることが自明で、国民の軽薄な信託を受けてごく一部の国民の代表を選出する不当・不平等な選挙制度となります。


9 高額選挙供託金規定は制限選挙規定であり違憲である

東京高裁判決は、「真に国民の政治意思を形成する」という架空の立法目的を捏造し、選挙供託金制度を定めた国会裁量権の合理性をこの架空の立法目的に照らして判断していて、問題になりません。実際の立法目的はあからさまな制限選挙である泡沫候補の立候補抑止、候補者乱立の抑止、選挙公営費の一部負担です。

第47回衆議院議員総選挙(2014年衆院選)無効請求訴訟(事件番号:平成27年(行ケ)第5号)訴状
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_Lower_House_Election_Complaint.pdf
準備書面(1)
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_Lower_House_Election_Brief1.pdf
準備書面(2)
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_Lower_House_Election_Brief2.pdf
甲第1号証Excelブック(下掲選挙分析Excelブックを印刷用にレイアウトしたもの)
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_koudaiichigoushou.xlsx
選挙分析Excelブック
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_gisekihaibun.xlsx

2015年3月30日東京高裁判決
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_Election_Tokyo_High_Court_Ruling.pdf

ブログ記事(現在、データベースの不具合で表示できません)
第47回衆議院議員総選挙(2014年衆院選)無効請求訴訟を提起
http://kaze.fm/wordpress/?p=538
小選挙区定数の「0増5減」は無所属候補に対する差別を拡大して選挙の違憲性を強める
http://kaze.fm/wordpress/?p=539
2014年衆院選無効請求訴訟:原告適格を制限する過去判例と被告回答書に反駁する準備書面(2)を提出
http://kaze.fm/wordpress/?p=540

太田光征
posted by 風の人 at 10:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 選挙制度
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