2007年05月10日

国民投票法案:「国会の外に国民があると考へるのか」

こちら↓の記事への補足です。

日本国憲法誕生過程に遡って解釈する憲法96条(憲法改正条項)
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/41239098.html

当時の審議経過から抜粋します。
枢密院委員会記録
http://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/04/111_1shoshi.html
1946年4月〜5月

昭和二一、四―五
憲法改正草案枢密院審査委員会審査記録(その三)
(未定稿)
(第九、十、十一章関係)
竹腰 九二条に国会が発議して国民に提案するとはいかなることか。
入江 国会の意思が各院三分の二づつで決まる。更にそれを国民に提案すること
を決めると云ふことを国会の発議と云ふ。
竹腰 すると国会の外に国民があると考へるのか。
入江 国会の議決の後に更に国民の承認を経ると云ふ主旨である。

「国会が発議して国民に提案するとはいかなることか」というもっともな竹腰委員の質問に対して、入江法制局次長は、「国会の意思が各院三分の二づつで決まる。更にそれを国民に提案することを決める」という意味に「発議」を解釈ないし「定義」しています。「提案」は「更なる」行為とみなしているのです。国会活動が「すでに」持っている国民への提案という意味合いを軽視しているかのようです。

国民は、国会審議に口をはさむ必要はない。ただ、国会から出された最終案に対する賛否を国民投票で示すだけでよい――こういう「不完全な国民主権」を想定しているように考えられます。「国会の外に国民があると考へるのか」という竹腰委員の質問は、真意はともかく、本質を突いているのです。

国会活動すべてが本来国民への提案であり、国民との協働活動であるという意識が、頭では分かっていても、実際上は薄いこと、それゆえ「国会内」での発案がすでに持つ「国民への」提案という意味合いが意識されにくいこと、さらに、「発議し」と「国民に提案して」の間に文言がなく、それゆえ「発議」が国民投票直前のプロセスととらえられがちなことから、「発議」を最終議決=最終提案と解釈してしまう――こう「定説」の成立、定着を説明することができます。

オマケ:国民投票運動スポットCM規制はザルほか

太田光征
posted by 風の人 at 15:28 | Comment(1) | TrackBack(6) | 一般
この記事へのコメント
太田さん、ご無沙汰しております。
トラックバックありがとうございました。
安倍内閣にはこの程度の法案しかつくれないのでしょう。法案にはまったく同意できませんが、ザル内閣にふさわしいザル法案だと思います。

11日の委員会採決、民主党も妥協しそうな雰囲気だそうです。

国会速報
http://www.news-pj.net/
kenpoushingi/
Posted by 和法 at 2007年05月10日 23:55
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