他の対石原候補者たちが福祉医療の充実、情報公開(ガラス張りの都政)、護憲、誠
実な政治姿勢、などを掲げていたが、それは都知事を選ぶ決め手にはならなかった。
革新立候補者の演説には、車椅子の人たち、お年寄りが大勢詰めかけていた。それは
石原都知事の演説でもそうだったのだろう。
福祉医療の充実は、有権者にとって政治における一番の関心事だったと思う。しか
し、すべての候補者が、福祉医療の充実を掲げていたのだから、選ぶ決め手とはなら
なかった。
環境問題についてもすべての候補者がそれなりに政策を述べていた。また情報公開に
ついては、それほど人々に重きをおかれなかったと思われる。平和憲法を大事にとい
う訴えは、さらに人々の関心(生活感覚)から離れていたのではないか。
限られた日数で、よほど知名度がない限り人柄を知ってもらうのはむずかしく、現職
がどこの都道府県でも強いことが示された。選挙制度の問題は大きい。
選挙戦の中で各候補者が相手の良い政策を取り入れたものに変わっていくので、ます
ます有権者には政策の違いがわからなくなる。政策だけでは決め手とはならない。演
説だけ聞いているとどこの党なのかわからない。
選挙戦を通じて良い政策がクローズアップされるということが、ささやかな救いにも
思われるが、それも選挙の間だけの事だろう。姿勢を低くし、都民の心をつかんだ石
原知事もすぐまた元通りになるだろう。
東京都では、今年の卒業式でも、君が代での不起立に対して34人の教員を処分して
いる。このことは都民にとって何の波紋も投げかけていないという事を、選挙の結果
がものがたっている。教育現場はますます管理強化され、教員はがんじがらめにな
り、学校は閉塞することになるだろう。その痛みは教員以外にはなかなか理解されな
い。現場の先生たちのこれからの苦労を考えると胸が痛む。内心の自由がおびやかさ
れるどころか、教員の給料に嵳をつくるという政府案が7日の朝日新聞に大きく報じ
られていた。要するに教育予算をかけないための人件費削減なのだ。
教育が、教育者がこれほど軽く扱われた事はなかった。教育基本法改定から、この方
向はすごい勢いで進んでいる。
よく考えてみれば、少数者、弱いものが切り捨てられるのは、その弱さゆえなのだと
思う。大きな声を持っている者は、切り捨てられはしない。
差別が、差別する側にとってはどういう事かわからないと同じように、強者は弱者の
痛みはわからない。常に力を持っている方が勝つ。
「格差社会」が大きな争点にならなかったという事は「格差」がなぜ広がるのかみん
ながわかっていないということ。そして東京では格差がすでに十分広がっていてし
まっていて少数者や弱者の声が届かなくなっているからだろうと感じる。社会的弱者
が強者に勝つためには団結以外に道はないと思う。
「やさしい街づくりの会」 タマラ
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