CW Expert Opinion on the UN Report on Syria ≪Mideast Shuffle Mideast Shuffle
http://mideastshuffle.com/2013/10/01/cw-expert-opinion-on-the-un-report-on-syria/
筆者らはシリアのグータにおける化学兵器攻撃についての国連報告書を検討している間、専門家や鋭い見解を提供していた他の方々から、多くの意見を求めた。筆者らは「シリアの国連報告書に厄介な問題がからむ」と題する記事で自分たちの見解を公表している。
Questions Plague UN Report on Syria(シリアの国連報告書に厄介な問題がからむ)
http://english.al-akhbar.com/blogs/sandbox/questions-plague-un-report-syria
[訳者による“Questions Plague UN Report on Syria”の翻訳]
シャーミン・ナルワニらによるシリア国連化学兵器調査団報告書の分析
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/375697201.html
サリンや戦闘で使用されるその他の神経ガスについて詳しく学ぶには、直接的な経験でイラン以上のものを探すことは難しいだろう。イランは直接的に、そして幾度も、1980年から1988年にかけてのイラクによる化学兵器の使用に苦しめられた国である。
Chemical warfare - Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Chemical_warfare#Iran.E2.80.93Iraq_War
その当のイランにおいても、Abbas Foroutan医師ほどにサリンその他の神経ガスについて語ることができる資格を持つ者は少ない。Foroutan医師については、その2004年に発表した論文が、米国陸軍化学防御医学研究所化学兵器被害者治療部門のジョナサン・ニューマーク大佐によってニューロロジー誌でレビューされている。
[訳者による参照]
The birth of nerve agent warfare: lessons from Sye... [Neurology. 2004] - PubMed - NCBI
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15136687
レビューしたニューマーク大佐は、Foroutan医師の業績を「世界の文献において戦場での神経ガス被害者を直接的経験によって臨床的に記述した唯一のもの」と指摘し、化学戦被害者の治療についての米国およびNATOによる理解に貴重な貢献をした仕事と見なしている。
「Foroutanが学んだ教訓は、頼もしい医療救助システムをタイムリーで適切な神経ガス治療と組み合わせることで、今後の戦場でより多くの命を救うことができるという自信を我々に与えてくれる」
Foroutan医師は筆者らの要請により、国連のシリア報告書を検討し、極めて重要な知見を提供してくれた。それらは国連のグータ調査団が実施した環境・人体試料検査の問題を取り上げたものである。
Foroutan医師は神経ガス被害者についての独自の経験に基づいて、グータの被害者が示したあからさまな症状の不規則性を指摘した。
1.サリンは目の炎症を引き起こさない。我々はイラクがイランに仕掛けた戦争の間、数多くの症例を観察したが、被害者は目に関して、短い期間に一時的な赤みを示したに過ぎない。今回、症例の22%が5-7日後に依然として炎症を示している。
2.縮瞳(瞳孔の縮小)が症例の14%で観察されている一方で、失見当識が症例の39%で起こった。この比率は道理にかなわない(訳者注:重い症状が軽い症状より多い)。患者について完全な生データの表を公表して、この症例やその他の症例の症状・兆候の間で相関指数を計算できるようにしなければならない。
3.19%でけいれんが起こったとする報告について:被害者本人からの報告は、けいれん時に意識を失っていた可能性があるので受け入れられない。被害者のけいれんを他の人間が報告するのでない限り、これらの報告は他の面で信頼できない。
4.アトロピンの処方について:この医薬品はサリン曝露に対して最も欠かせない解毒剤で、迅速に静脈注射で大量投与すれば、患者を救うことができる。アトロピンの大量投与で重症から迅速に回復したことは、患者が神経ガス(サリン)と同様の物質に曝露したことを示唆している。残念ながら、提供された情報はまったく不完全なもので、この治療に患者が正確にどのように反応したのかについての記述がない。
5.脈拍数や血圧のようなバイタルサインについての記述は、サリンによって古くから観察されるところでは、遅くなったり低くなったりし、アトロピンによって上昇するが、これらも重要な診断兆候であるものの、残念ながら患者記録に残っていない。ぜんそく患者で聞こえるノイズと同様に、被害者の肺における「喘鳴(ぜんめい)」の聴診も重要な兆候になるが、記述されていない。このような無視は異常である。
6.アセチルコリンエステラーゼと呼ばれる酵素の血漿と赤血球細胞における活性はサリンのような神経ガスによって顕著に低減するが、数週間すると再活性化(再合成)され、正常に戻る。サリンはアセチルコリンエステラーゼの阻害物質である。世界中の専門家はこの酵素の実験室データ(酵素活性を報告する)の重要性を熟知している。神聖なる防衛(イラン・イラク戦争)の間、我々は前線の救急センターでルーチンの診断検査としてその測定を行うようにしていた。重要なのは、軽度から重度の症例において、それが例外なく低減するということだ。なぜこの検査が実施されなかったのか。
7.一週間も後になって生体試料中でサリン分子を同定したと主張するには、高い確率で技術的ミスが発生するため、世界の他の専門家が分かるよう、測定手法について正確な報告をする必要がある。
8.環境試料について:写真によれば、多くの場所が日光にさらされており、サリンが非常に揮発性であるという事実により、サリンを検出したという主張を行うには、専門家によるさらなる記述が伴っていなければならない。
私としての意見としては全体的に、この報告書は医学的に重大な注意をもって受け入れるべきであり、国際的な専門臨床医のチームによって再度検討されるべきである。私の意図はサリンの否定にあるのではなく、少なくとも臨床的見地からして、本報告書の証拠は神経ガス(サリン)の存在がこの事件で証明されたとするには不十分であるということである。(訳者注:Foroutan医師の見解)
Foroutan医師はまた、国連による検査におけるサリンについての仮定に関して非常に重要な指摘、つまり偽陽性につながり得る検査についての指摘をしている。国連報告書の付属書7では、2つの異なるラボによって検査された試料多数について、異なる結果が記録されている。
国連調査団報告書
http://www.un.org/disarmament/content/slideshow/Secretary_General_Report_of_CW_Investigation.pdf
「自然の分解や主要成分に伴う不純物によってサリンや副生成物について偽陽性の認識ないし診断がなされるという可能性がある。重要な点は、検査チームがサリンの使用を前提にして実験手法を組み立てた節があることである。このような理由から、実験およびラボ測定のすべてについて、試料調製や分析手法の詳細、また分析機器で得た曲線のグラフやファイルとともに公表すべきだ。押し付けられた戦争(イラン・イラク戦争)の期間中、イラン兵士のマイコトキシン中毒による症状の報告が、ベルギーの信頼できるラボからあった。マイコトキシンは尿および血漿の試料から間違いなく検出されたが、後になって我々はそれが偽陽性だと伝えられた。戦争後の国連調査において、イラクはマイコトキシンの製造に関して何らの活動も行っていなかったことが証明されたのである」(訳者注:Foroutan医師の見解)
筆者は、以上の検討結果が「Abbas Foroutan教授が率いるシャヒド・ベヘシティ医科大学での医学会合で議論された」と伝えられた。
幸運にも筆者らは国連報告書についての明晰な見解を求めてForoutan医師にコンタクトすることができたが、筆者がこの情報をいま公表できたのは、Foroutan医師がわざわざ清書して、そのコメント全体を翻訳した大学同僚を通じて筆者に送っていただいたことによる。
太田光征
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