2013年5月9日(ファクス全2ページ)
改憲要件を緩和する96条改憲について、改憲の「中身の議論」を棚上げにしての「改正手続き」を先行させるやり方を批判する考え方があります。しかし、自民党は十分過ぎるほど問題だらけの中身の改憲草案を既に公表しており、それらの中身の1つとして憲法96条の改憲を主張しているのです。
自民党の改憲草案は、国民の人権を守るために国民が憲法で権力者を縛るという立憲主義を逆転させ、個人のための国家から国家のための個人という考え方に転換し、国家が国民に義務を課し、国民に憲法を守らせ、国民を支配するための手段へと憲法を変質させてしまうものです。
個人の尊重を捨て去り、人々(の福祉)を意味する現憲法の「公共(の福祉)」を国益や天皇・お上などを意味する「公益」や「公の秩序」に置き換えて、基本的人権を「公益」や「公の秩序」で縛り、国連決議なしに米国の起こす戦争への協力を国民に義務づけ、天皇の憲法順守義務を免除し、基本的人権・平和主義・国民主権を根底から切り崩します。
立憲主義を具体的に担保するのが硬性憲法規定96条です。いずれも世界常識である立憲主義と硬性規定は一体不可分の関係にあります。立憲主義の破壊が自民党改憲草案の命であり、自民党による96条改憲は立憲主義破壊の中身そのものです。
96条改憲を単に改正手続きを変えるだけと捉えることはできません。96条改憲は立憲主義の破壊と擁護をめぐる戦いの土俵です。96条改憲で負けることは、この戦いの緒戦に負けることを意味します。
96条改憲という「中身」での論戦におけるご健闘を期待しています。
なお、小選挙区制下での96条改憲はなおさら論外である、という内容の要望書をただ今検討中です。こちらに案を載せています。
ポスト2012衆院選の国民主権運動の呼び掛け
http://kaze.fm/wordpress/?p=441
朝日新聞が5月2日付で憲法世論調査の結果を発表しました。それによれば、「1票の格差」(定数配分の格差)が是正されない状態で選ばれた議員が改憲発議をすることについて、「問題だ」が54%、「問題ではない」が38%でした。
朝日新聞の憲法世論調査(2013年5月2日)
http://kaze.fm/wordpress/?p=452
この点からも、96条改憲は論外であると考えます。
太田光征
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