政党・メディアの皆さま
2013年4月28日
安倍首相が読売新聞に96条改憲について述べています。
衆参各院の「3分の2以上」の賛成を必要とする96条の発議要件について「2分の1に変えるべきだ。国民の5割以上が憲法を変えたいと思っても、国会議員の3分の1超で阻止できるのはおかしい」(読売新聞 4月16日「安倍首相、憲法改正「まず96条」…発議要件」)
小選挙区制を中心とする現行の選挙制度では、得票率(有権者の意見)と議席占有率(国会議員の意見)が大きく乖離しているので、国会議員3分の1の背景にはそれ以上の有権者の支持があり得ます。
実際、例えば、昨年の衆院選で民主・維新・公明・みんなの4党は全議席の33%、ちょうど3分の1を獲得しましたが、比例区得票率では計57%、つまり過半数の支持を獲得しています。国民の意見と国会議員の意見の一致度を評価する場合、単純に数で比較できないのです。
自民党は昨年の衆院選で投票者の過半数の支持を得ずして全議席の過半数を獲得して、衆院で法案を成立させられる状況にあります。また、96条改憲を狙っている自民・維新・みんなの党は3分の2の支持(比例区得票率計57%)を得ずして全議席の3分の2以上(76%)を獲得して、衆院レベルで発議できる条件にあります。さらに、自民党は脱原発を望む7割以上の国民の意見を無視しています。
これらの事実を棚に上げて、現96条の下であたかも国民の権利が阻害されているとする安倍首相の主張は、身勝手、おためごかしというものです。国民主権を尊重する思想に基づくものとは思えません。
国民の意見と国会議員の意見の乖離が問題だと認識するなら、選挙における得票率と議席占有率の乖離をもたらす現行選挙制度、特に小選挙区制をまず改めるのが、国民主権を尊重する者の立場であるはずです。
定数配分是正訴訟で今年3月に広島高裁岡山支部が下した判決( http://bit.ly/YEZzrO )でも、「国民の多数意見と国会の多数意見の一致」をもって国民主権が保障できると判断されています。
ということは、小選挙区制では国民主権を保障できないと判断しているも同然です。
「1票の格差」訴訟の意義
http://kaze.fm/wordpress/?p=451
政党とメディアの皆さまには、平等な国民主権を保障すべき選挙制度とからめて96条改憲の議論を深めていただきたいと思います。
太田光征
【96条改憲と国民主権の最新記事】