2013年03月08日

「1票の格差」(地域代表性格差)は「1票の価値の格差」ではない

(1) 「1票の格差」は「1票の価値の格差」ではない

升永弁護士らの「一票の格差」訴訟活動を紹介している記事です。

【「一票の格差」訴訟】首相官邸「聞いてなかったことにしよう」ホラー (月刊FACTA)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130304-00000000-facta-pol

「ただ、原告団は議員に課徴金を課すのが目的ではない。それを武器に、政府と各党に対し最後通牒をつきつけるという。その中身は?もう一度解散して『総選挙やり直し』、?小選挙区議員300人は旧区割りでなく、全国完全比例代表選挙で行うという期限付きの緊急立法を成立させる――という条件だ。選挙後に誕生する内閣は「選挙管理内閣」で、1−2年内に新しい選挙制度を決めて、そのうえで解散総選挙を行え、と求める。」

「人口比例選挙を行えと言っている。だから、格差0の比例選挙が一番」

現在の政治を考えると「選挙管理内閣」という選択肢が最善です。これには賛成。

升永氏らが主張している「1票格差」は選挙区ごとの議員1人当たり有権者数の違い(選挙区間1票格差)で、これは1票格差ではなく、地域代表性格差というべきものです。選挙区間1票格差が解消されても1票価値が増えたり減ったりするわけではなく、例えば2012衆院選の小選挙区における死票率56%にほとんど影響はありません。

具体体を挙げましょう。1人区Aが1人区Bと比べて有権者数が2倍とします。升永氏らの表現では、1人区Bの有権者は1人区Aの有権者と比べて「0.5票」しか持たないことになります(この表現は間違っています)。しかし、両選挙区とも10万票で当選者が出る場合もあるだろうし、1人区Aで得票数20万票、1人区Bで得票数10万票で候補が当選する場合もあるでしょう。そうすると、議員1人当たりの投票者数は、1人区Bの方が少なく、1人区Bの「1票の価値」が高いことになってしまいます。

1票の価値というものは、それが「生票」になって初めて価値を持ちます。生票を投じた投票者数で比べなければ、1票の価値は比較できません。地域代表性格差を1票格差という言葉で語ることには意味がないのです。

「格差0の比例選挙」という場合に想定されている格差が、本当の意味での1票格差。比例選挙であっても、例えば全国一区であれば、ある地域を基盤とする候補はまったく当選しない場合もあり、地域ごとの当選議員1人当たり有権者数ないし投票数は同じとは限らず、地域代表性格差は解消されません。

しかし、比例選挙では有権者の意思が反映され、<政党については>議員1人当たり投票数が実質的にほぼ同じとなり、1票価値の平等が実現するので、地域代表性格差があっても、平等な国民主権が実現しているといえます。

[参考]

1票の格差とは何か
http://kaze.fm/wordpress/?p=381

(2) 比例選挙の結果、<政党については>議員1人当たり投票数が実質的にほぼ同じになる理由

「議員1人当たりの当選に要する票数を同じにする選挙」を考えてみれば分かります。

私は賛成しませんが、電子投票制度と複数回の投票を認めれば、議員1人の当選に要する票数をまったく同じにし、完全な1人1票を実現することができます。

政党について見れば、第1回目の投票で過剰な生票をもらった候補に投票した有権者の一部が、2回目以降の投票で1回目の投票を修正し、おそらく同じ政党に属するものの第1回目の投票で当選できなかった候補に投票するでしょう。つまり、同じ政党を支持する有権者の間で、票の融通をして、各候補の票数が同じになるようにします。

こうして政党の候補については、最終的に得票数が並び、獲得議席は通常の比例選挙(非拘束名簿式の参院比例区)の結果とほぼ同じになるでしょう。

要するに、比例選挙というのは、政党について言えば、簡略なプロセスで「議員1人当たりの当選に要する票数を同じにする選挙」に近似させた選挙といえます。

太田光征
posted by 風の人 at 00:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | 選挙制度
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