2012年10月29日

梼原町に行ってきました

地方の自立を説く新政党がありますが、自立とはこういうものでしょう。

太田光征

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みなさま

こんにちは、長崎の西岡です。

なかなかメールが書けませんが、皆様のメールしっかり読んで元気をいただいて

います!

今週、高知県梼原町へ、二度目の訪問をしてきました。

山間部に位置することから、かつて「土佐のチベット」と呼ばれた梼原町は

いま環境モデル都市として全国の注目を集めています。

風力、太陽光、小水力、地中熱、バイオマス。町中が自然エネルギーの

見本市のよう。友人たちと再訪して、素晴らしい方々との出会いがありました。

ぜひ皆様に紹介したくて、報告記を書かせていただきます。

(1)前・町長の中越さん

町に到着するやいなや、前町長の中越さんが軽トラックで出迎えて

くれました。バブル期にゴルフ場を作らないかと、ある人から机に

札束を置かれたけど断った、という中越さん。たくさんお話を伺ったのですが

一番感動したのは「任期中に小中学校のプールを全部取り払った」話でした。

「この町には四万十川の源流がある。子どもは川で遊ばせよう。川のこわさも

教えよう。そのかわり、大人が責任もって子どもが遊べる川をつくろう」。

町営プールは別につくり、農業排水が流れ込んでいた川を整備し、高度フィルタ

を取り付けて5メートル下まで見えるような浄水設備で水質をチェックしている、

という中越さんの話に涙が出ました。いま、国の中枢でこの台詞を言える人が

いるだろうか、と。

(2)現・町長さんと総務課長さん

美術館かと見まごうような木造の町役場に入ると、カーテンから職員の名札

まですべて地元の木を使うこだわりぶり。ガラス張りの町長室でお話を伺いました。

矢野町長さん

「へんぴな土地だからこそ、国や県が何かしてくれるのを待っていても来ない。

ならば自分たちでやっていこう、という気質がこの町にはあるのです」。

2006年に隣町で高レベル核廃棄物処分場の話が持ち上がったとき、町をあげて

反対し、計画撤回へ導いたことを尋ねたら、総務課長さんが

「命か金かと問われたら、貧しくても命です」ときっぱり。

「自然エネルギー推進に反対する町議とかいないんですか?」と聞いたら、笑って

「そういう人は出馬しても当選しないと思います」。(!)

↑ちなみに選挙の投票率は驚きの88〜90%。あと10%は高齢や入院で投票に

行けない方とか。

若者の「定住政策」について

町長さん「田舎しか知らないのでなく、一度外に出て、将来的に帰ってくれたら

いい。そのために保育園から英語を教え、学生6名を毎年イギリスに留学させて

います」。(スケールでかーっ!)

「孤独死させない」がモットーの町では、高齢者のお家にセンサーをつけて、

住人が一日動かないと近所に通知がいくシステムを導入しています。

(倒れていてそれで助かった人もいたとか)。感嘆していたら課長さんが、

「機械は誤作動するものです。機械にたよるのはちょっと・・」

(なんて示唆に富んだ言葉なんだー!)

(3)農家民宿にて

農家民宿「いちょうの樹」で、おかみさんの絶品手料理に舌鼓。

里芋の煮っころがし、アユの塩焼き、芋の茎の塩もみ、たきこみごはんなどなど。

いろりの火がこんなに暖かいなんて知らなかった。

炭火で香ばしく焼いたシイタケに、しょうゆをちょっとたらして、焼酎と

いっしょに頬張ると気分はもう桃源郷〜〜(これで一泊二食付6500円!)

町長さんが言っていました。「今の日本は“お袋の味”じゃなく“袋の味”に

なっている」。

コンビニのパンやスナックで空腹はしのげても、「食すること」ってもっと

神聖な営みじゃないんだろうか。口にしたとたん体が喜ぶような手料理

そのものが教えてくれます。これは、いのちをつなぐ材料なんだよ。

食をおろそかにすることは、いのちをおろそかにすることなんだよ、と。

町長さんの言葉をかみしめました。「大切なのは都ではない。野です」。

(4)町民運動会にて

翌日、ちょうど開かれていた町民運動会に飛び入り参加しました。

町の実行委員が考えた競技は、車いすのお年寄りが、箱に入った長さの

違うヒモをひいて、チームで足したヒモの長さを競うゲームや、ワラから

縄をなう速さを競う「縄ない」。(5分で10メートル!)

はちきれんばかりの笑顔、笑顔。

自然が大切にされているところは、人も大切にされているんだ。

人が身近ということは、人の病や死も身近ということ。

だから、力いっぱい守ろうとするのかもしれない。

逆に、いのちの尊厳を実感できなければ、人は、自分や、ほかのいのちを

簡単に使い捨ててしまうのかもしれない。

「理解しただけでは人は動かない。納得し、共感してはじめて動くのです」。

町長さんの言葉を思い出して空を見上げたら、ぬけるような青空に真っ白い

風車が二基、ゆうゆうと回っていました。

―了―

西岡由香
posted by 風の人 at 10:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 一般
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