2012年10月24日

経済同友会の倒錯した1票格差・選挙制度論

なぜ経済同友会が1票格差の問題に熱心なのか、疑問だった。差別の極致たる原発を維持することに熱心な同会が1票格差に関心があるとは、あまりにも不釣り合いである。

同会は「投票価値の平等」実現の目的を「物事を決められる体制に変える」ことであると明言し、衆議院の選挙制度は「民意を集約」するもの、つまり小選挙区制がよいとしている。

「投票価値の平等」を実現し、民意を切り捨てる。



経済同友会提言
http://www.doyukai.or.jp/kakusa/torikumi.html

このサイトを見ると、何と「維新八策」と似通っていること。統治機構改革、道州制、国と地方の役割分担、TPP…。

「維新八策」こそリセットが必要
http://kaze.fm/wordpress/?p=375

経済同友会提言:2012年5月17日
「政党・政策本位の政治の成熟化と統治機構改革 〜「決断できる政治」の実現に向けて〜」(2011年度政治・行政改革委員会 委員長:永山 治)

「日本国憲法の下で現在行われている政治は、コンセンサスが得られないと物事を決められない体制だが、参議院の1人区で各地方の実情だけを踏まえた人が政治家になり、その1人区の勝敗で参議院の勝敗が決まるため、参議院が賛成しないと何事も通らない体制になっている。これを、物事を決められる体制に変えるのが「投票価値の平等」実現である。」

憲法のせいで「コンセンサスが得られないと物事を決められない体制」を問題視し、「投票価値の平等」を実現したい狙いを述べている。つまり、コンセンサスを必要とすることなく、「物事を決められる体制に変えるのが『投票価値の平等』実現」なのである。

同会にとって「投票価値の平等」は民主主義にとっての問答無用の前提ではなく、特定の政治目的を達成するための手段になっている。

「小党間の離合集散で政権が決まることは民主主義として望ましいとは言えず、政権選択を担う衆議院議員選挙については、『民意の反映』よりも『民意の集約』にウェイトを置いた制度設計が、参議院議員選挙については、真の良識の府を構成するにふさわしい人材を選抜する制度設計が必要である。」

こう述べて衆議院議員選挙で小選挙区制を支持している。コンセンサスは必要ないし、民意は切り捨ててよい。これまでの小選挙区制選挙の実績で示されているように、投票者数にして過半数に満たない民意であっても、つまり投票者数ベースの生票・死票間1票格差が甚大であっても、有権者数ベースの選挙区間1票格差がなければ、問題ない、物事を決められるからよい、というのだ。

経済同友会提言:2007年5月31日
「3つの軸から政治改革の加速を−政治参加、政・官関係、『戦後レジーム』脱却」(2006年度政治委員会 委員長:丹羽宇一郎)

「もはや、『国民から政府に対する命令』とも言われる憲法に、一票の価値を常に等しくすることが原則である旨を明記すべきである。憲法に明記されていれば、国会が対応を怠っても、裁判所が違憲判決を出しやすくなる。」

滑稽である。そんな意識がある国会議員なら、その前に1票格差は是正されている。

こうなってくると、何が何でも改憲したいがための改憲ルートを開発するために1票格差の是正を持ち出しているのか、と勘繰りたくなる。

維新の会と同様に二院制改革の改憲が提言されている。こちらがより本丸なのだろう。

経済同友会提言:2005年5月20日
「わが国『二院制』の改革−憲法改正による立法府の構造改革を」(2004年度政治の将来ビジョンを考える委員会 委員長:池田守男)

こうした主張にメディアが呼応する。

時論公論 「1票の格差・最高裁判決で問われる政治の責任」 | 時論公論 | 解説委員室ブログ:NHK
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/135038.html

選挙制度が主権者の平等な主権を保障する制度であるとすれば、選挙制度は衆議院であれ参議院であれ変わるはずがないが、NHK解説員は「選挙制度の抜本的な見直しは、参議院のあり方、そのものを変える大きな問題です」と、改憲にまでつながる論点を持ち出す。

そして国民がお願いしてもいない「決められない政治」フレーズを潜り込ませて、政治が選挙制度改革に真正面から取り組んでこなかったことに対する国民の怒りを代弁する。このフレーズも選挙制度改革以外の論点へ誘導するものだ。

当然、産経は「違憲状態」判決の社説で改憲誘導を忘れていない。それを有権者の政治不信と絡めているのもNHKと同様である。

「違憲状態」判決 衆参とも急ぎ格差是正を
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121018/trl12101803130001-n2.htm

「重要なのは、選挙制度の抜本改革で二院制のあり方など憲法上の問題を含めて議論することだ。両院の制度を別個に論じ小手先の定数是正にとどまるなら、有権者の政治不信も決定的になる。」

太田光征

1票の格差とは何か
http://kaze.fm/wordpress/?p=381
posted by 風の人 at 02:16 | Comment(0) | TrackBack(0) | 選挙制度
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/298745991

この記事へのトラックバック