2012年06月22日

関西人は今のところ関電の期待を裏切る節電を実施(2012年6月)

関西の皆様、この調子でよろしくお願いします。

[要旨]
関西人は2012年6月、大阪の最大気温が30℃前後の平日に11年並みか、それ以上の節電実績を上げている。30℃前後の需要実績2100万kWを前提に、関西学院大学の朴勝俊准教授が11年の実績値に基づいて計算した気温感度(気温が1℃上昇したときの電力需要増加量)47.8万kW/℃を適用すれば、10年の大阪における最高気温36.6℃の日の今夏需要見通しは2415万kWとなり、関電が8月に原発なしで確保できるとする供給力2542万kWを下回る(政府予測の供給力2630万kW、環境エネルギー政策研究所予測の供給力2946万kW)。

関電は2011年夏の節電実績が190万kWで、需要が10年より6.5%減少したとしている。しかし関電は関西人を見くびって、「定着した節電」をその65%、120万kWとし、今夏の電力需給見通しを発表している。

関西電力管内の「定着している節電」の算出について
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120502/shiryo4-2.pdf
今夏の需給見通しと節電のお願いについて
http://www.kepco.co.jp/pressre/2012/pdf/0519_1j_01.pdf

関西学院大学の朴勝俊准教授の分析によれば、2011年夏の関電管内における節電実績は11%であった。

2011年夏の関西電力管内における電力ピークに関する一考察(関西学院大学准教授・朴勝俊)
http://www.sdgovernance.org/internal/docs/SDG-DP-JNo11-03.pdf

今年の6月、大阪の最大気温が29℃以上の平日における関電の最大電力需要は次のようになっている。

電力需給のお知らせ [関西電力]
http://www.kepco.co.jp/setsuden/graph/index.html#

日           6 7 14 18
気温(℃)       29.7 30.1 30.9 29.7
最大電力需要(万kW)  1967 2002 2061 2096


飯田哲也氏が昨夏の関電管内における最大電力需要と気温の関係をまとめたグラフと比較すれば、今年6月の30℃前後の平日における最大電力需要は昨夏と変わらないか、低くなっている。ただ、確かな傾向を掴むにはもう少しデータが必要になる。

国家戦略室 - 政策 - 第4回 需給検証委員会 議事次第
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/archive08_04.html
第4回需給検証委員会「供給と需要の精査」(環境エネルギー政策研究所・飯田哲也、2012年5月7日)
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120507/iida_shiryo.pdf

関電管内における2011年の最大電力需要と大阪の最高気温の関係(環境エネルギー政策研究所)


30℃の平日における最大電力需要を2100万kWとして、朴准教授が11年の実績値に基づいて計算した気温感度(気温が1℃上昇したときの電力需要増加量)47.8万kW/℃を適用すれば、36.6℃の平日における電力需要は2415万kWとなり、関電が8月に原発なしで確保できるとする供給力2542万kWを下回る(政府予測の供給力2630万kW、環境エネルギー政策研究所予測の供給力2946万kW)。

2011年夏の関西電力管内における電力ピークに関する一考察(関西学院大学准教授・朴勝俊)
関電管内における2011年の最大電力需要と大阪の最高気温の関係(関西学院大学の朴勝俊准教授)


36.6℃とは、「猛暑」とメディアが盛んに表現する10年の大阪における最高気温(8月19日)で、この日の電力需要が同年最大となる3095万kWだった。11年の大阪における最高気温は8月9日に記録した35.6℃で、10年とほとんど変わらないが、この日の電力需要も同年最大となる2784万kWであった。

府市エネルギー戦略会議の開催状況(4月)参考資料3
http://www.pref.osaka.jp/attach/15930/00093425/3_sankou3.pdf

なお、産経が広めている気温感度は原発事故以前のもの。朴准教授によれば88.4万kW/℃になる。

電力使用制限令 関電「計画停電」避けられず 「制限令出さないのは政府が責任を取りたくないから」
http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/120517/wec12051723000014-n1.htm
「関電管内では気温が1度上昇するとエアコンの利用増などにより70万〜80万キロワットの電力需要が増えるとされている。」

関電は「定着した節電」と「随時調整契約」を盛り込んでも、今夏の需要は10年の3095万kWからわずかに108万kWしか減少せず、2987万kWだとしている。

メディアも分析に要する時間が十分あったにもかかわらず、関電の見通しを無批判に報道し、電力不足14.9%のデマ拡散に貢献した。

太田光征

※「常時接続」(でも料金一定)だからといって、モデムの電源を常時オンにしている方が多いのですが、使わないときはオフにしましょう。電源をオフにしても接続サービスが解約されるなんてことにはなりません。
※ 節電効果は総和なので、電力消費に占める割合が低いからといって家庭での節電に意味がないわけではありません。夜間の節電も揚水発電の供給力を増すことに貢献します。
posted by 風の人 at 01:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 原発停止と電力需給
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