2012年01月01日

不明確な判断基準で従来どおり保安院が評価するストレステスト:柏崎・刈羽原発の閉鎖を求める科学者・技術者の会のニューズレター

永岡さんからの転送ですが、その中からまず、井野博満氏が2011年11月11日に開催された「発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価に係る意見聴取会」の第1回で提出した意見書の要点を抜き出しておきます。


●ストレステストは、事業者がストレステストを実施し、その結果を保安院が検討し、安全委員会がその妥当性を確認するという従来どおりの枠組みであり、原発に批判的なメンバーを加えるべきである。

●ストレステストの判断基準が不明確であるため、合否の判断が恣意的・主観的になる。原子力安全委員会委員長の斑目氏も誤りを認める安全指針の見直し、政府「事故調査・検証委員会」報告の評価が先行されるべきである。(昨年12月の同委員会中間報告では地震の影響に関する評価がない。)

●保安院は、福島第一、第二原発をストレステストの対象外としているが、福島事故の現実を再現できるものでなければストレステストの意味はない。

●2011年4月11目の福島県浜通り地震(M7.0)で湯ノ岳断層が動いたことから、基準地震動の見直しも必要ではないか。

●2011年10月末に提出された開西電力大飯3号機の報告書では、基準地震動の信頼性についての記述がなく、近くの海底活断層に連続して陸側活断層が動く可能性の評価もなされていない。

●過去の時点の施設状況が評価対象となっており、例えば、同機で2008年に圧力容器関連の溶接部に深さ20ミリ超のひび割れが発見されたが、こうした劣化個所の現状についての記述がない。


誤字脱字は気づく範囲で修正してあります。

太田光征
http://otasa.net/

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 永岡です、柏崎・刈羽原発の閉鎖を求める科学者・技術者の会のニューズレターが来ました。その中で、原発のストレステストに関するところが重要であり、例により紙面をスキャンしてテキストお越ししたものをお送りいたします。例により、少々の誤字脱字はご容赦願います。


「ストレステスト」および柏崎刈羽原発の運転再開についての見解

「柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会」は、9月15日に、原子力資料情報室」、「プラント技術者の会」と共同で院内集会を開催し、以下の見解を発表しました。



柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会

意見1.現時点で発表されている「ストレステスト」の内容は、EUでおこなわれているものに比べ、網羅性もなく、透明性もない。EU仕様書をベースとしているにも拘わらず、そこからの意図的かつ悪質な改ざんが随所にみられる。

福島第一原発事故原因の解明の視点も抜け落ちており、極めて不十分である。これをもって原発の運転再開是非の判断とすることは認められない。

理由 

(1)  [ストレステスト]は、3.11福島原発事故以降、EUで実施されつつあるものが参考にされている。EUのストレステストは、手続期限が明確であり、「公開と透明性の原則」を基本として、市民の理解を得ることの重要性を明快に示している。

また、事故発生のシナリオの検討においても、地震以外については、確率論的ではなく、決定論的手法が採用され、安全裕度の評価だけではなく、原発の安全欧に関して網羅的な検証が求められている。とりわけ、過酷事故時の、管理体制(放射線管理や検ばく管理を合む)の検証と改善策についても、詳細な報告を求めている。

(2) これに対して、我が国で実施されようとしている「ストレステスト」は、上記のEUで行われているそれとは、内容は全く別のものであると評価せざるを得ない。

すなわち、「過度の保守性を考慮することなく現実的な考慮を行う」などと明記されていること、技術的な要求項目が大幅に削られていること、地震以外の事項(電源喪失事故や冷却材喪失事故)にまで確率端的安全評価を認めていること、二次評価においては、材料強度について「降伏点を超えた塑性変形後も安全余裕の範囲」とする評価を認めていること、など、安全を重視する立場からは、到底受け入れられない内容と皆っている。

(3) また、ストレステストは、EUのそれを含めて、システムの検証が中心であり、設備・機器の往年劣化や損傷についての診断にもとづく検討が要求されていない。

事故のあった福島第一原発が、いずれも運転開始から30年以上を経過した老朽した原発であったことや、これら原発において冷却材喪失事故が配管破断によって起こった可能性については言及されていない。

(4) このような内容のない「ストレステスト」に合格したとして、原発の安全性を確保できたとするのは、これまでの原子力行政の不備にさらに屋上屋を重ねるものであって、到底認められないし、市民の理解を得ることもできない。

意見2.柏崎・刈羽原発は、即時停止すべきである。運転の再開に関しては、福島原発事故の原因究明を踏まえて、安全設計審査指針、安全評価審査指針及び耐震設計審査指針等を改正した上で、慎重に判断すべきである。安易な「ストレステスト」の実施を運転再開のロ実にすることは許されない。

理由

(1) 3・11福島原発事故は、未だ収束しておらず、膨大な放射能をまき散らしている。福島原発事故は、長時間の全電源喪失を想定しなくても良いとされてきた安全設計審査指針及び安全評価審査指針が、完全に誤っていたことに、大きな原因がある。柏崎刈羽原発も、こうした誤った指針に基づき設置・運転されているのであって、その安全性に関して、重大な疑義がある。従って、運転中の柏崎刈羽原発については、即時停止すべきである。

(2) 福島原発事故の原因究明は、その原因を津波のみに求める見解もあるが、専門家から、津波以前に地震で配管嶮所が生じ冷却材喪失事故が発生したのではないか、との指摘がされている。いずれにしても、原因究明は、まだ始まったばかりであって、現時点で、事故原因を確定することは時期尚早である。福島原発事故の原因を踏まえて、他の既存の原発の安全欧を確認することが必要であるが、その前提条件が満たされていない。

(3) 問題は、正しく福島原発事故の原因を究明し、これを踏まえて、日本の全ての原発の安全性が確認されなければならないということである。「長時間の電源喪失」の想定を求めておらず、また、共通原因故障を想定しない、という現行の安全基準(安全設計審査指針、安全評価審査指針及び耐震設計審査指針、さらにいわゆる維持基準)が誤りであることは、班目原子力安全委員長自身も認めているとおり、誰の目にも明らかである。ようするに、福島原発事故の原因を踏まえて、まずこれらの指針の誤りを改正することが先決であり、個別の原発の安全性の確認、とりわけ運転の再開については、こうした改正された指針に基づいて判断するということが、本来あるべき姿である。

(4) そして、指針の改正にあたっては、これまでのように原発推進に賛成する者だけではなく、原発に批判的な意見を有する専門家を含めて、内外の英知を結集し、かつ、情報公開を徹底して行うことが必要である。安易な「ストレステスト」の実施を運転再開のロ実にすることは評されない。

以 上



ストレステストについての意見

2011年11月11日 井野博満

これは、11月14目に開催された「発常用原子炉施設の安全性に関する総合的評価に係る意見聴取会」の第1回に際し、委員である井野博満さんが提出した意見書です。



1.従来の枠組みのままでのストレステストの真偽でよいのか

 福島原発事故は、これまでの安全審査に不備があったことを如実に示した。すなわち、福島原発事故を防ぐことが出来なかった立地審査指針、耐震設計審査指針、安全設計審査指針、安全評価審査指針の内容的不備、および、これらに基づいて行われた具体的安全審査の不備を示すものである。

これらの不備な内容の安全指針類の検討がなされない状態で、位置付けの不明なストレステストを実施することは安全欧評価を混乱させることになる。

 加えて問題なのは、ストレステスト評価の枠組みが、事業者がストレステストを実施・評価し、その結果を保安院が官見聴取会での検討を経て確認し、安全委員会がその妥当性を確認するという従来の安全審査と同じ枠組みになっていることである。

このストレステストに関する意見聴取会を進めるに際して、まず重要なことは、原発に批判的な考えをもつ市民や地元住民をメンバーに加えるべきことである。現状では、メンバーがいわゆる専門家に限られている。メンバー構成の根本的な見直し・拡大を求める。



2.市民・住民の参加がなぜ必要か

 今回の原発事故により、安全神話が崩壊し、原発のリスクがゼロでないばかりか過小評価されてきたことが明白になった。ストレステストが、リスクゼロ、すなわち、大事故は絶対に起きないことを証明するものでないことは明らかである。

とするならば、ストレステストの結果が再稼働の条件として適切なものであるかどうかについて意見を述べ判断する主体は、被害を受ける可能性のある地域住民であって、いわゆる専門家はその助言をする立場であると考えるべきである。この意見聴取会のメンバーに市民・住民の参加を求めるゆえんである。

 加えて、今まで安全審査に関わってきた専門家は、事業者の立場を代弁し、安全でないものを安全だと判断し、ときにはごまかしの論理を組み立ててきたという「実績」がある。公正な立場で安全審査に携わってきたとはみなされていない。そういう負の歴史を踏まえる必要がある。

 以上の理由から、ストレステストの審議プロセスに住民参加は不可欠である。意見聴歌会のメンバーに市民・住民を加えるとともに、保安院のまとめ作成に際しては、公正な運営のもとでの公聴会を開催する必要かおる。



3.ストレステストの位置づけについての疑問

 技野・海江田・細野三大臣署名の文書「我が国原子力発電所の安全性の確認について(ストレステストを参考にした安全評価の導入)」(平成23年7月11日)によれば、一次評価は、定期点検中の原発の運転再開の可否についての判断のために行い、二次評価は、すべての原発を対象に運転の継続または中止の判断のために行うとしている。しかし、これは論理的に矛盾している。福島原発事故を受け、安全審査の瑕疵が問題になったのであるから、本来ならばすべての原発の運転を停止し、一次・二次の区別なく検査を受けるべきである。

 また、一次評価・二次評価の実施計画(保安院7月21日、参考3)において、二次評価の事業者報告は本年内(2011年12月末)を目処とするとされているが、一次評価の報告が11月初めにおいていまだに大飯3号機1件であることを考えると、一次評価と二次評価の時期は重なってきている。

一次評価・二次評価は内容的に見ても連続しており区別して実施する意味はない。

 そもそもストレステストが原発の運転の可否を判断するためのものであるならば、個別の原発ごとに可否を議論・判断するのでなく、運転継続を求めるすべての原発についてのストレステストが出そろったところで、横並びにして議論をすべきなのではなかろうか。そのようにして初めて、各原発の安全評価上の相対的位置が理解できると考える。つまり、すべての原発に危険性があると考えている私流の表現を使えば、「非常に危ない原発」と「かなり危ない原発」との位置関係が理解でき、廃炉にすべき原発の緊急性の順序が評価できると考える。

 浜岡原発については、運転停止の措置が取られたが、同様の措置が必要と考えられる原発が数多くある。照射脆化の著しい玄海1号機などがその一例である。



4.ストレステストの判断基準が明確でない

 このように一括して議論・判断すべきと考えるのは、ストレステストの審査基準・合否の判新基準はどこにおいているのか、まったく不明確だからである。明確な判断基準がない状態では、合否の判断が恣意的・主観的なものにならざるを得ない。そのような判断はすべきでない。1.で述べたように、安全指針の見直しが先行されるべきであって、それに基づいて安全基準が新たに作られるべきである。別の恣意的・主観的安全評価がなされるべきではない。ストレステストは、せいぜい、各原発の評価結果の比較を行うことにより、どの原発がより安全か(より危険か)という相対的な判断に役立つことでしかない。



5.福島原発事故原因についての知見を反映させることの必要性

 政府の「事故調圭・検証委員会」(畑村委員会)が調査を継続中であり、その中間報告が本年中にも出されると言われている。その中間報告で解明された事態を踏まえて、ストレステストは実施されねばならない。事故原因としては、津波による被害とともに、サイトをおそった地震動によって配管切断や機器の損傷があったのではないかと疑われている。原子炉圧力容器の水位計指示や格納容器の圧力上昇の時間推移などがその可能性を強く示唆している。ストレステストはそれらの知見を踏まえねばならないと考える。

 保安院の実施計画(7月21日、別示2)では、福島第一、第二原発についてはストレステストの実施計画から除くとしているが、東北地方太平洋沖地震で被災した原発もまたストレステストを実施すべきである。なぜならば、それら被災した原発についてストレステストを実施することは、事故原因解明に寄与しうるとともに、ストレステストの有効性を検証することになる。すなわち、ストレステストの結果が福島事故の現実を(完全ではないにしても)再現できるものでなければストレステストの意味をなさない。その意味では、これら被災原発に対するストレステストが、ほかの原発に先駆けて行われるべきである。東京電力、東北電力、日木原電各社に対し、それぞれ、福島第一・第二原発、女川原発、東海第二原発のストレステストを早急におこなうよう保安院は申し入れるべきであると考える。



6.耐震安全性評価(耐震バックチェック)見直しの必要性

 東北地方太平洋沖地震の誘発地震といわれる4月11目の福島県浜通りの地震(M7.0)の際、福島県の湯ノ岳断層が動いた。活断層とは認定されていなかったこの断層が動いたことを受けて、保安院は事業者に対し全国各地の原発近傍の断層についての調査を命じた。その結果は、いずれも活断層と認められないという回答であったが、その根拠は十分であろうか。住民を納得させるに足るものであろうか。これら断層が活断層である可能性を考慮してストレステストの前提となる基準地震動の大きさを見直し、再評価すべきではなかろうか。

 例えば、10月末に提出された開西電力大飯3号機の報告書において、前提となる基準地震動についての説明が添付5・(1)・2にあるが、700ガルとされた基準地震動の信頼性やその評価の幅についてなんら記述がなく、敷地近傍の2本の海底活断層に連続して陸側の熊川活断層が動く可能性の評価もなされていない。また、敷地内には多数の断層が走っている。これらが動けば重要設備・機器の支持基盤が喪失する怖れがある。ストレステストという以上、懸念されている最大の地震が起こった場合の評価や断層が勤いた場合の評価をし、その後の設備・機器の応答と組み合わせて全体像を明らかにすべきではないのか。



7.経年変化(老朽化)の現実を反映させることの必要性

 ストレステストで実施される評価方法は、基本的に解析的手法(シミュレーション)であって、現実の設備・機器がどのような状態にあるかについて、現時点での調査・診断がなされないのではないかと懸念している。現実の原発は長期間の運転によって老朽化(高往年化)しており、運転開始時と同じ状態にあるわけではない。この現実を踏まえたストレステストでなければならない。

 実施計画書(前出の別添2)には、「評価は、報告時点以前の任意の時点の施設と管理状態を対象に実施する」という説明文が書かれている。これは設備・機器の現実を取り入れて評価すると読めるが、「任意の時点」は「現時点」ではない。過去において実施した検査を踏まえるということであろうが、それは現時点で新しく設備・機器の検査などは実施する必要はないと言っていることになる。それは評価方法として不適当である。

 30年を超えて運転を継続することを望む原発については、事業者は「高往年化技術評価書」を提出し、老朽化の現実について評価を受けることになっている。30年に満たない原発においても材料劣化などは当然起こっている。それら設備・機器の現実を現時点で調査し、その結果をストレステストに反映させるべきであると考える。

 例えば、大飯3号機においては、2008年に原子炉圧力容器一次冷却水出口ノズルのセーフエンド溶接部に深さ20ミリを超えるひび割れが観測され、70ミリ厚の配管を工事認可申請書の記載を変更して53ミリまで削って運転を再開した。このような劣化個所が現在どのような伏態になっているかの現状把握は安全上欠かせないと考える。しかし、今回提出されたストレステスト報告書には(見落としでなければ)この問題についての記述はない。



8.自然現象以外の外的事象も評価対象事象に加えるべきである

 上記別示2の実施計画では、評価対象として自然現象(地震、津波)および安全機能の喪失(全交流電源喪失、最終ヒートシンクの喪失)を挙げている。しかし、それ以外の重大な事象として、航空機墜落や破壊工作、他国からの攻撃が懸念されている。そのような場合に大事故にならないための対策が必要である。

 欧州原子力安全規制部会の声明(2011年5月13日)では、これらに関連する事象をEUストレステスト仕様書(アネックスI)の範囲外としているが、同時に、安全保障上の脅威によるリスクに関しては、特別な作業部会を設けることをアネックスHとして同声明で提案している。日本においても、これにならう必要があると考える。

 過酷事故の可能性がゼロでない以上、その被害の大きさの評価とどのような被害緩和策が用意されているかの評価は不可欠である。その具体的予測が明らかにされて初めて、受忍可能なものであるかどうか、地域住民・自治体の判断が可能となる。事業者は、過酷事故発生後の放射能汚染の評価をも加えた報告書を作成すべきである。

                                          以 上

柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会 Newsletter N0.4

編集・発行:柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会 

代表 井野博満 事務局長 菅波 完

〒160-0004東京都新宿区四谷1・21戸田ビル4階       

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郵便振替口座:00140-O-687327加入者名:柏崎刈羽・科学者の会

当会の活動は、高木仁三郎市民科学基金からの助成金(委託研究費)と、趣旨に賛同して下さる一般の方々の会費やカンパに支えられています。
posted by 風の人 at 15:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 一般
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