「アルカイダとの戦いでは、ビンラディン容疑者の殺害か拘束を最優先事項とするよう指示した」。
公式発表が虚偽でないとして、アルカイダの策謀でアメリカにおける9.11事態がひきおこされたとしても、ビンラディンがアルカイダの首謀者としても。
それでもオバマ大統領は、決定的な過ちを犯した。
ビンラディンを逮捕して裁くことと、はじめから殺害することを目的とするのでは全く異質なものである。
世界でも最大の強国の最高権力者である大統領が、テロリストならば殺害せよと命じるようでは、世界国際秩序の国際法の精神は遵守されるだろうか。
オパ゛マ大統領は、アメリカの大統領として、アメリカ国民の生命と財産と国益と利益を擁護する任務があろう。その点では、アメリカの中枢に甚大な破壊行為をおこなった者たちへの仕返しは、正当防衛と肯定される要素もある。
だが、同時にオバマ大統領は、差別と抑圧を受けたアフリカ系黒人の出身として、世界の非抑圧被差別民族と民衆の側から期待と希望の星として、アメリカ合州国の頂点にたどりついた。
今回の9.11事件についても、ブッシュ前大統領の無謀なイラン・イラク・アフガニスタンなどへの戦略行為を停止して、アメリカ軍の名誉ある撤退の方向性を示すべきだった。しかしオバマはついに最初に述べたように、ビンラディンを殺害する指令を下した。このことのもつ否定的影響は甚大である。
理性的に国連や国際裁判所などへの審理と判断に委ねるべきであった。オバマは、アメリカ国家の威信にかけて、アメリカCIAと特殊部隊の軍事行為の暴力を最終的な手段として公使した。世界は復讐と報復の泥沼に堕ちていく決定的なきっかけのテープをカットされた。
さらに、9.11事件の真相究明も封じられた。
二重三重の意味で、あの核廃絶の世界的な名演説と核廃絶の意志を表明したことで、その理想に保険のように事前に与えられたノーベル平和賞の栄誉さえ、オバマは放棄する軍事政策を執行した。
世界は、アメリカが自国の利益と体面のためなら、強引な国際政策を実行にうつす姿を見せつけられた。
古代からの歴史的な確執のある中東地域に介入して、ベトナム戦争なみの泥沼にはいりこんだアメリカの最高権力の大統領が見せつけた強引な無謀さを、世界中の民衆は明確に焼き付けられた、「アメリカは何でもやる国家だ」と。
そして、同時にアメリカは経済的にも軍事的にも国内的にも低迷していて、アメリカの同盟国もアメリカのように経済的社会的破綻をきたすようになることも明確である。
資本主義の最高で腐朽した段階にあるアメリカ一国覇権主義は、私たちの次の世代の長期的展望においては、パックスロマーナのように、パックス・アメリカーナも繁栄に繁栄を重ね、栄華に栄華を極めたすえに、ついには瓦解するしかならなくなるだろう。
オバマは、貴重な自分自身の「正義」を自己放棄した。
「(ビンラディン殺害で)正義がおこなわれた」と信ずることで、オバマは世界中の民衆からの支持を失い、オバマ自身の正義をも失った。
また、ビンラディンとアルカイダ、アルカイダ内部の実態、アルカイダとイスラム抵抗勢力やイスラム「テロリスト」との実態、9.11事件の真相究明などすべての重要事項は無理矢理に葬り去られて、オバマは事態解決の根本的解決をも永遠に見失った。
櫻井 智志
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