私に対する反発は半端ではありませんでした。グループでの活動であったなら私に相対することはなかったのかもしれません。私は拡声器を使い、松戸駅前で1人でやっていました。
原発被災者には申し訳ないと話すものの、安全を確保した上で原発を進めるべきだ、と今でも思っているのです。今回の事故は当時の設計がまずかったからだ、浜岡も対策をたてればよい、と。
今回の事故で放射能の影響による死者は出ていない、2名は津波による被害者だと主張し、原発の通常運転による被ばく被害や、長期内部被ばくによる被害はまったく口に出しません。
原発は安定供給ができる、風力は騒音問題がある、太陽光はコスト問題があるなど、世間で言われている原発擁護論を一通り主張し、フランスもアメリカも原発推進国で、私は何も知らずに、勉強せずに話していると非難します。
私は街宣で原発の発電コストがLNG火力よりずっと高いこと、原発なしでも全電力を火力・水力で賄えること、欧州で原発のない国があり、またその方向へと大きく動いていることなどを中心に訴えていますが、親父さんが耳を傾けていたのは、私が原発の発電効率が30パーセントしかなく、火力発電より非効率だ、という主張をしている時だったと思います。
子どもの健康を心配する気持ちは強烈でした。それは疑いありません。ビスケット食、体重10キロ減などの事情も話された。しかし子どもさんの健康と命は、親父さんの原発信仰、これは子どもさんの気持ちを斟酌した上でのものかもしれませんが、この信仰の人質になっている面があると思われてなりません。
子どもさんの懸命の努力は、原発から卒業する、足を洗うための努力であるとも考えられるはずなのです。しかしそうは思っていない。
子どもさんによる必死の努力の意義は、事故を収束させるためだけでは成り立たず、原発の大義が存続することと切り離せないようなのです。
この親父さんは子どもが現在の職を失うことを極度に恐れていました。自然エネルギーへの転換で職は創出されると指摘しても、政府はその保証をするのか、と迫る。
子どもの原発人生を否定されたくないという気持ち、放射能を浴びながらも現在の職を失いたくないほどの保守性、その背景となっている政治の貧困、などが親父さんを縛っているように思われました。情報の欠落も大きいでしょう。
いま子どもが必死になって事故収束に当たっている時に脱原発の主張をするのはけしからん、今は政府と東電を盛り立てる時だ、お前は間違っている、と言います。もっとも、親父さんの立場では収束後に私が脱原発の主張をしても間違っていることになるのですが。
このような対立図式は、例えば東電前アクションについても、運動圏内部からも想定されていて、東電に対する批判は当面差し控えるべきだというような主張もあったかと思います。
「今は政府と東電を盛り立てる時だ」との主張は一見もっともなのですが、原発は今、明日にでもまた事故を起こすかもしれない問題で、原発稼働を継続するという問題を棚上げにするわけにはいきません。事故収束を成功させつつ、脱原発も同時に進めていかなくてはなりません。
私は私なりに保安院にも東電にも事故対策関連の情報を提供するなど、事故収束に資すると思うことをしてきたつもりですし、脱原発の立場に立つ者の間でさえ、「福島原発暴発阻止行動プロジェクト」がそれこそ決死の思いで立ち上げられています。
私はこの親父さんに、脱原発の立場に立った事故収束の取り組みがあるのだということを分かってもらいたいと思いますし、原発だけが仕事口なのではないのだということも分かってもらいたいと思います。
親父さんは、原発容認派が60パーセントいると指摘しつつ、なぜ市民に向けて訴えるのか、政治家に言え、と主張します。自分のように福島第一原発で働いている子どもを持つ親がいるから(配慮せよ)、と。
民主主義政治の現実にも気持ちが暗くなります。親父さんのような立場の人こそ、政治家に物を言う必要があるでしょう。今この時期に脱原発の主張を公共の場で控えることはできません。
今日は1人だけ、小さく拍手してくださる方がいました。若者が1人、マイクを握らせてくれ、と言ってきたものの、その連れがふざけているからと思ったのか、静止して通り過ぎていきました。
太田光征
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