2010年12月04日

国会の魑魅魍魎を糺す

 仙石官房長官の「自衛隊は暴力装置」という発言が失言と問題になった。私には、この発言を問題発言と騒ぐほうが問題と考えている。官房長官という立場にあるから、仙石氏の言動が注目を集めることは理解できる。しかし、「暴力装置」という言葉は、社会科学上では通説である。「軍隊は国家の暴力装置」という言葉は、マルクス主義の文献には当たり前の用語である。
 しかも、あの反動政治家石原慎太郎都知事でさえ、もともとはマックスウェーバーが考え、マルクス主義で転用されたと発言している。マックスウェーバーは、左翼でもなんでもない。社会学の大家で、非マルクス主義社会科学の学者である。「職業としての学問」など厳密な概念や緻密な実証的な論理展開で、むしろマルクス主義の側からは「ブルジョア社会科学」と言われてきたくらいである。
 では日本の自衛隊は軍隊か。自衛隊派遣などが諸外国からは軍隊派遣とみなされ、防衛力と言う名の軍事力は世界でも上位の予算額を占めている。仙石氏の政治的言動に、私はほとんど反対であるが、このような事柄をとらえて問責決議案を可決するような参院では、まともな国政の立法府とは言えない。

 今国会では、通過した法案が数えるほどしかないようだ。野党を見ていると、丸川珠代自民党参院議員に典型的にその質が表れている。ほとんど国会のお飾りの位置しか占めてこれなかった彼女の「愚か者めが!」の低劣な野次にはあきれてしまった。
菅総理への国会質問で、自民党など野党が品性の低い低次元の言葉で罵倒する言葉が目立った。自民党には、まともに国政を論ずるよりは、徹底して政府民主党を貶めて、民主党政権を打倒する一点に焦点がしぼられ、まともに国民の暮らしを打開することは頭にはない。丸川議員ばかりではない。自民党やみんなの党、公明党などの野党全体に、国政を預かる国会議員の自覚などみじんも見られない。

 菅政権の拙劣な迷走と実行力のなさは、すでに代表選で小沢氏を破り菅直人氏が当選した時から見えていた。やがては菅政権は立ち往生する。その時に小沢一郎氏は再び国政にチャレンジすると自他共に認められていた。そこを敏感に察知していた闇の権力者たちによって小沢氏の政治的失墜工作がなされた。プロの検察庁でさえ立件できなかった小沢氏を、まったくの素人の検察審査会に係わる連中が何度も何度も水面下を暴走して、ついに司直に売り渡すような政治的暗殺に等しい事態をひきおこした。民主党は唯一立ち直れる力量を持つ政治家を失いかけている。

 さて、最後にこの間の日本共産党の動きを見ておきたい。自民党が主導した政府へのブロー攻撃をはかる国対委員長会議などことある会議のたび、共産党は民主党政権を攻撃して自民党の動きに同調し続けてきた。社民党よりはるかに自民党サイドに立った。国民はこのような共産党の動きを黙っていても見ている。確固とした政治理念をもたず、民主党の失点のたびに自民党に同調し続けている日本共産党に、どうして支持が集まりえようか。民主党政府の失政には批判する、同様に腹黒な自民党の目論見にも毅然とした対応をおこなう。そのような政治的孤高の信念こそが戦前戦後の日本共産党の持ち味であった。自民党の取り巻きに堕して、右往左往しているようでは、早晩日本に共産党という政党は実質的に無くなることだろ。      (櫻井 智志)
posted by 風の人 at 08:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 一般
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