2010年10月12日
鎌倉市長 松尾 崇 様
鎌倉市民フォーラム
代表 増田 康仁
政策部会長 櫻井 三奈子
「環境自治体 の創造」に向けての3つの提案
ご公務誠に感謝申し上げます。
当「鎌倉市民フォーラム」(2005年設立 会員約800名)は市民のまちづくり団体です。2009年、市民の市政参加を目的として市民マニフェストを作りました。本年6月に、マニフェスト第1章「市民が主役となる自治のしくみ」に関して自治基本条例ついての要望、8月に第2章「緑、海浜、景観を守るしくみ」に関してまちづくり条例の改正に係る提案を致しました。いつも誠実なご回答を頂き感謝申し上げます。この度は、マニフェスト第3章「環境自治体の創造」について、下記3点、提案致します。
(T)環境自治体への再加入 (U)ナチュラルステップの宣言採択 (V)ナチュラルステップ研修の導入
昨今、鎌倉市と鎌倉市民は、武田薬品の新薬研究所の建設や山崎浄化センターバイオマスエネルギー回収施設の建設をはじめ、様々な課題に直面しています。対立を超え、ともに持続可能な鎌倉市政をめざすため、以下の提案をご活用頂きますようお願い申し上げます。鎌倉市としてのお考えをお聞きしたく、来月中に文書でのご回答をお願い致します。なお、この提案書並びにご回答は公開させて頂きます。
(T)市政の歴史を踏まえ、鎌倉市として環境自治体に再加入する提案
「環境自治体」構想を日本で最初に実行に移したのが鎌倉市です。鎌倉市は1994 年の市長選挙で初当選した竹内謙氏が「環境自治体の創造」を掲げ、国際環境自治体協議会に加盟し、国内における環境自治体会議に初参加しました。その基盤は、古都としての地理的要件とともに、1960年代の「御谷騒動」に取り組んだ鎌倉風致保存会など、先達の活動がありました。その後鎌倉市総合計画の3つの理念 にも「環境共生都市の創造」をかかげ、鎌倉市環境基本条例の尊重をうたっています。1996年の第三次総合計画のスタートとあわせ、市役所に「環境自治体課」を創設するなどの組織改革をすすめると同時に、市民参加をうたった環境基本計画を策定するなどの計画制定をすすめました。その後もごみ半減宣言や脱焼却への取り組み 、1998年のNPOセンター開設や、環境市民団体の設立が相次ぐなど 、市と市役所の相互作用で環境への取り組みが盛り上がりました。
その後、2003年に石渡市長時代に国際環境自治体協議会から脱退しました。脱退理由として市長は、これまで環境推進自治体であることを充分内外にアピールできたことと、現在は参加した時と比べ、情報収集の代替手段も充実してきている事から、21万円の負担金を払う必要性がないと判断したことを挙げています。
ここで再度、国際環境自治体協議会の仲間入りを果たすことを提案します。同協議会に再加入することで、鎌倉市の取り組みを内外にアピールし、世界中の先進的な環境自治体との連携を強めることができます。再加入することで内外に市の姿勢を示すことは、新しい環境宣言を打ち出すことに等しいことだと考えます。
併せて、国内の環境自治体会議に参加することを提案します。同会議では、地元の間伐材利用の取り組みなど、インターネット上では体感し得ない各地の先進事例に直接ふれることができます。現在同会議では、自然エネルギーの創出について取り組む自治体が増えてきています。同会議に参加することは、職員の研修にもなり、鎌倉の先進的な取り組みを紹介することを通して、顔をつき合わせた環境政策の情報交換ができると考えます。
(U)未来に繋がる持続可能な暮らしを実現するために、ナチュラルステップ を鎌倉市政の指針として宣言する提案
鎌倉市はこれまで、環境基本条例を定め、環境基本計画に基づき、具体的な政策を実行してきました。この歩みをより明確にするために、鎌倉市環境基本条例の3つの理念 にも共通するうえに、科学に基盤をおいた 、より具体的で簡潔な原則として、ナチュラルステップの「4つのシステム条件」を盛り込んだ宣言を、松尾市長時代に採択して下さい。
日本ではまだナチュラルステップを市政の指針と宣言するエコ自治体はありません。この提案書は鎌倉市がそのエコ自治体として、日本初になることを宣言するものです。
ナチュラルステップの「4つのシステム条件」とは、以下の通りです。
1) 自然の中で地殻から堀り出した物質の濃度が増え続けない。 (鉱物・化石燃料などに関する原則)
2) 自然の中で人間社会の作り出した物質の濃度が増え続けない。(化学物質に関する原則)
3) 自然が物理的な方法で劣化しない。 (自然破壊に関する原則)
4)人々が自からの基本的ニーズ を満たそうとする行動を妨げる状況を作り出してはならない。
(人間社会の在り方に関する原則)
この「4つのシステム条件」は、地球で持続可能な生活を送るために必要なことを明瞭簡潔にまとめたものです。この4条件により、最終的な到達目標である「持続可能な社会」が満たすべき原則をまず明確に定義します。そして、ナチュラルステップが提唱するバックキャスティングという考え方を前提として、この原則に沿った政策を実行していきます。バックキャスティングは、ゴール&タイムテーブルと同じ考え方です。バックキャスティング とは、将来のあるべき姿、つまり成功した状態から現在を振り返り、成功した状態を実現するために、限られた時間で、今から何をやるかを考えて計画を立てることです。
私達が鎌倉市に提案する理由もここにあります。持続可能な社会の定義についての共有です。確実に持続可能な社会を形成するためにも、持続可能な社会を4つのシステム条件をベースとした包括的な計画のやり方を学び、それを実行することが必要です。
鎌倉市はこれから、エネルギーや農業、そして福祉、教育、様々な政策を、持続可能な社会を目指しておこなうには、どうしたらいいかという視点で、包括的なビジョンで計画を立て、市政を運営することが求められます。
そして、この歩みは、市民や企業との共同で取り組む必要があります。よって、このシステム条件を鎌倉の指針として市議会で採択し、持続可能性への変化を市民や企業と共に生み出すことを提案します。
冒頭で述べたとおり、鎌倉市民フォーラムでは、市民マニフェストの第3章「環境自治体の創造 」において、ナチュラルステップにもとづき8項目を挙げています。各項目をシステム条件に対応させると、脱車社会(第1条件)、生ごみ資源化とごみの発生抑制(第1、3条件)、二つある焼却所を一つに(第1条件)、地産地消の推奨(第1、4条件)、太陽光発電の普及(第1条件)、環境産業の奨励と誘致(第1、2、3、4条件)、地球温暖化防止条例・環境汚染防止・立地規制条例の制定(第1、2、3,4条件)、ISO14001取得などによるエコ市役所の実現(第1、2、3,4条件)となります。
鎌倉市は、総合計画の理念に「市民自治の確立」をうたい、まちづくり条例の基本理念でも「市、市民及び企業の相互信頼、理解及び協力の下に市民参画によるまちづくり」を掲げています。スウェーデンでは、環境自治体(SeKom:セーコム)の参加資格として、「ナチュラルステップのフレームワークを取り入れて持続可能性への変化を生みだすこと」に加え、「住民や職員を含めて参加型で民主的なプロセスをとること」の2つを公に宣言することが要件となっています。エコ自治体の国際運動はスウェーデンだけでなく、北欧諸国、イタリア、アイルランド、アメリカ、カナダ、日本、ケニヤ、エチオピアなど世界に広がっています。鎌倉市が宣言にナチュラルステップの4条件を盛り込むことは、持続可能な社会を基準として物事判断し、市民自治を通して政策を実現していくことを表明するものです。
(V)「ナチュラルステップ」の研修を実施する提案
最後に、市長をはじめ、鎌倉市の職員や議員、公募の市民にナチュラルステップの研修を受けてもらうことを提案します 。
ナチュラルステップの研修では、先ほど出てきた4つのシステム条件のほか、12の環境指標 やバックキャスティングでのアクションプランの立て方、「変化は地域から」という原則などが含まれています。鎌倉市でもナチュラルステップの研修を受けることで、職員が持続可能な社会という将来の視点をもち、ナチュラルステップの原則を基準として方向性を間違えない対策を立案できると考えます。
現在、ナチュラルステップ ジャパンによる自治体等との活動実績は、下記の通りです。
日本の自治体等との活動実績
◇白川村 村の全職員への環境教育
◇滋賀県 県職員と県民のための環境研修講演
◇那覇市 ゼロエミッション専門家のためのプロフェッショナル講座
◇兵庫県市島町 有機農業への取り組み、環境基本計画作り
◇長野県 県下企業との持続可能な発展の研究会
◇長野県森林条例検討委員会委員
◇国土交通省港湾局 海域利用技術開発懇談会
◇財団法人クリーン・ジャパン・センター リサイクル教育委員会
◇法政大学大学院
なお、鎌倉市における、ナチュラルステップ研修の実施の具体的な進め方は、以下のような過程が考えられます。ご検討下さい。
@市民の要望を、市長や環境政策部などが、検討する。
A環境自治体に再加入後、市からナチュラルステップ ジャパンへの研修依頼。
B市役所や団体、市民を交えた作戦会議。
Cエグゼクティブ研修と全職員研修の実施
Dナチュラルステップを指針としての市是にすることを市長が議会で提案後、議会が承認。
Eナチュラルステップにもとづいた全市をあげての取り組みがスタート。
このナチュラルステップを取り上げた「ミツバチの羽音と地球の回転」の10月15日上映会においても、持続可能な社会づくりにスタートを切ったスウェーデンのエコ自治体 の現状を、鎌仲ひとみ監督より紹介頂く予定です。このナチュラルステップの肝心なところは、対立を超えて、立場を超えて持続可能な社会の定義を共有し、共に考え対話していくことにあります。今回、私達から、この提案をさせて頂く理由もここにあります。あらためて鎌倉市の後援と市長のご出席、映画鑑賞に感謝申し上げます。この映画はナチュラルステップを宣言した環境自治体のエネルギーシフトを取り上げていますので、市役所担当課の皆様にも見て頂ければ幸いです。
以上、3点の提案を致しました。ありがとうございました。
連絡先:事務局 上野千代 〒248-0022鎌倉市常盤404 電話0467-32-8910
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