2010年09月22日

東京都知事選は8か月先 「東国原知事、都知事選出馬に意欲」という記事を読んで

 この2、3日のいくつかのメディアの報道によれば、宮崎県の東国原知事は今年の12月に予定されている宮崎県知事選には出馬せず、東京都知事選出馬に意欲を示している、といいます。下記の情報を総合するとかなりの信憑性が感じられます。

■東国原知事、不出馬へ…都知事選に意欲(読売新聞 2010年9月20日)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100919-OYT1T00774.htm?from=main2
■宮崎県知事選:東国原知事「熟慮中」 思わせぶり答弁終始(毎日新聞 2010年9月19日)
http://mainichi.jp/select/today/news/20100919k0000e010019000c.html
■東国原知事、たけしに「次期宮崎県知事選不出馬」報告 都知事選へ着々!?(スポーツ報知 2010年9月19日)
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20100919-OHT1T00026.htm

 下記はそのうちのひとつ読売新聞の報道。

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■東国原知事、不出馬へ…都知事選に意欲(読売新聞 2010年9月20日)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100919-OYT1T00774.htm?from=main2

 宮崎県の東国原英夫知事(53)が、12月に予定されている知事選に立候補しない意向を複数の後援会関係者に伝えていたことが19日、わかった。

 周囲には来春の東京都知事選への出馬に意欲を示しているという。

 東国原知事は2007年1月の知事選で初当選し現在1期目。後援会関係者らによると、知事が最近、「県知事選への出馬は見送る」と伝えてきたという。18日夜には、タレント時代に師匠だったビートたけしさんと都内で面会、こうした考えを伝えたとみられる。

 24日か29日の9月県議会本会議で正式に不出馬を表明する見通し。宮崎県知事選には現時点で出馬を表明している候補予定者はいない。
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 さて、いま、私たちの国の地方自治体レベルでの代表的なポピュリスト政治家といえば、その自治体の規模の大きさを問わなければ以下の5人の首長と見てよいでしょう。

石原慎太郎(東京都知事 小説家出身)(注1)
橋下徹(大阪府知事 弁護士出身)(注2)
東国原英夫(宮崎県知事 タレント出身)(注3)
河村たかし(名古屋市長 国会議員出身)(注4)
竹原信一(阿久根市長 自衛官出身)(注5)

 上記のポピュリスト政治家に共通するのは、「公務員はその仕事の割に高給を取っている」という大衆の公務員への怨嗟感情(注6)を利用したポピュリズムの手法。すなわち、ちょっと見には大衆ウケのする「公務員給与の削減」「議員報酬の半減」などの政策を掲げているものの、その実、大企業や銀行系資本、その周辺にとぐろを巻いて大もうけをたくらむ大口投資家、さらには政治家などなどの私たちの国のエスタブリッシュメントともいえる支配層の法外な高額所得、大企業や大金持ちを優遇する不公平税制などの諸問題などについてはなんら問題視することはない。結果として社会的弱者と大衆を痛めつけ、手ひどいツケを負わせるだけの政治手法の信奉者であること。彼らポピュリスト政治家が本質のところで一様に大衆を蔑視し、大衆を愚民視する非民主主義的な独善政治の実行者であるという点も見逃すことができない共通点です。

 ところで、雑誌編集委員などの経歴を持つ作家の辛淑玉さんが、そのポピュリスト政治家群の「大衆の中にある差別感情を扇動する」ポピュリズムの手法と彼らの反動的な同質性、彼らが進めようとしている「革命」なるものの危険性について本質的かつ的確な批評をしています。『週刊金曜日』の昨年4月24日号に掲載されている論説で、すでに私も紹介しているものですが(注7)、東国原知事が東京都知事選に意欲を示している、というこの時期、彼らポピュリスト政治家群の愚鈍性を再確認するためにも改めて再引用させていただこうと思います。

 辛淑玉さんは、同誌昨年4月24日号の特集「どこへいくニッポンの民度 タレント知事がやってきた」に「ウケ狙いの政治の果て」と題して「大衆の中にある差別感情を扇動する」ということについて次のように書いています。

 「芸能番組で生きてきた彼ら(東本注:タレント政治家)は、同じテレビで活躍していてもジャーナリスト出身の政治家とは異なり、絶えず視聴率を意識し、スポンサーや興行主にへつらい、また師匠=君主、弟子=奴隷という封建的人間関係が体にしみついている。ビートたけしの前の東国原知事を見るまでもなく、配下の者には絶対者として君臨するという家父長主義的な芸能界の掟が、タレント知事の誕生でそのまま政治に持ち込まれているのだ」

 「たとえば、彼らの常套手段は『公務員攻撃』だ。カメラの前ではこれがウケる。公務員はその仕事の割に高給を取っているというのがその理由だが、バブルの頃は優秀なやつは公務員になどならなかった(注8)。今は、民間の給与水準が低下したために、相対的に地方公務員が給与が高くなっているだけだ。/労働者の組織率が低く、組合運動が弱い地方の民間企業の労働者が資本の攻撃に負けた結果として賃金の崩壊が進んだにもかかわらず、その大衆のうっぷんを地方公務員に対する怨嗟と八つ当たり攻撃にすり替えた。まさにウケ狙いの政治だ」

 「さらに、社会の変化についていけず、被害者感情を募らせている一般大衆の持つねたみやそねみを、八十年代以降のリベラルな社会運動がもたらした制度改革によって社会上昇を果たしたマイノリティに対する攻撃に誘導しようとしている/大衆の中にある差別感情を扇動することによって当選を果たしたタレント知事が言う『地方から日本を変える』とは、資本の手先となって『大衆の敵』を作り出し、本当の敵から目をそらさせ、日本を政治のガラパゴス化させることなのだ」

 東のバックラッシャー(反動政治家)石原都知事のポピュリズム都政が南の東国原宮崎県知事のポピュリズム政治に仮にチェンジすることがあったとしても、そのバックラッシュとポピュリズム政治の本質はなんら変わることはありません。こうしたポピュリスト同士のまやかしの交代劇を許さないためにも、また当然、バックラッシャー石原都知事の4選を許さないためにも、私たち政治革新を願う市民にいま必要な行動は市民としての革新共同の模索だろうと私は思います。もちろん、左記は政党との共同を阻害しようとするものではありません。したがって、左記をもう少し正確に言うと市民として市民と政党の革新共同の道を模索する、という表現になるでしょうか。

 いまある「東京。をプロデュースU」(注9)や「新東京政策研究会」(注10)などの市民組織や研究者集団が軸となってその他の市民組織に連携を呼びかけるとともに、共産党系の市民組織の「全国革新懇」や社民党系の市民組織、民主党系の相対として革新的な市民組織にも革新都知事を誕生させるための共同テーブル(話し合い)を働きかけ、さらには政党としての共産党や社民党、民主党にも働きかけていく、という確かな手順を踏んだ共同行動にいま踏み出すべきときではないでしょうか。なんといっても「共同」は力です。もう古い話になってしまいましたが、美濃部さんが東京都知事選で勝利したのも「共同」の力でした。

 前回都知事選のとき、私たちは、確かな革新共同の候補者を擁立することはできませんでした。たしかにあのときは「革新都政をつくる会」(共産党系)という市民団体が設立され、革新共同を模索する候補者が擁立されたという経緯はあるのですが、上記のような手順を踏まない候補者の擁立であったため多くの都民の共感を得ることはできず、そのあとに出馬表明したもう一方の反石原候補との対立の様相を帯び、結果として石原現都知事に漁夫の利を得さしめることになりました。あの4年前のあやまち(と、私は思っていますが)は決して繰り返されてはならない、と思います。来年春の都知事選まであと8か月です。


注1:[例]「Close it 石原都政〜今度こそ、みんなで統一候補を!」(JanJan 2007年1月6日)
http://www.news.janjan.jp/election/0701/0701047620/1.php
注2:[例]「橋下知事・自民党(保利・森山・山谷)vs教員(日教組)・朝日 関連記事3題噺」(AML 2008年10月27日 )
http://list.jca.apc.org/public/aml/2008-October/021313.html
注3:[例]「憲法を救うために―『超党派』市民の潮流と政党への提案」(論文)の紹介(AML 2007年5月25日 )
http://list.jca.apc.org/public/aml/2007-May/013615.html
注4:[例]「河村市長、ご乱心を!リコール運動より待機児童解消を!」(JanJanBlog 2010年9月19日)
http://www.janjanblog.com/archives/15805
注5:[例]「阿久根ブログ市長の『革命』と橋下大阪府知事の『革命』の危険な類似性」(「草の根通信」の志を継いで 2010年3月29日)
http://blogs.yahoo.co.jp/higashimototakashi/1070015.html
注6:現代社会学の知見によれば、この大衆の妬み、嫉み、やっかみという怨嗟の感情は、いわゆるエスタブリッシュメント層としての真の高額所得者、政治、経済界の支配層への怨嗟、批判には決して向かいません。悲しいかな、いつの時代も自分の目に見える、あるいは想像できる範囲の人、すなわち同じコミュニティに属する身近な自分より少し上位のクラスにある者に対する怨嗟へと向かう傾向性を持っているようです。
注7:注5を参照。
注8:この辛淑玉さんの断定には北海道旭川市議会議員の久保あつこさんから注5記事の追伸にあるような異議が提起されています。詳しくは注5の追伸をご参照ください。
注9:「『もう、ごめん!石原コンクリート都政』2010.2.13シンポジュウムの報告」参照
http://toupuro.net/index.php?%A5%A4%A5%D9%A5%F3%A5%C8 
注10:1月24日シンポジウム・新しい東京 福祉・環境都市を目指して―石原都政への対
抗軸―(CML 2009年12月31日)参照
http://list.jca.apc.org/public/cml/2009-December/002481.html


by 東本高志
posted by 風の人 at 11:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 一般
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