[要旨]
新党「たちあがれ日本」との同一略称・按分問題だけでなく、主権者の意思を正確に按分しない小選挙区制・ブロック制比例選挙、改憲国民投票で改憲反対の意思が賛成に化ける投票方式の問題もご追求ください。
(1)略称問題を主権侵害の問題と捉え、選挙制度本体を含めた公職選挙法の抜本的な改正として解決を
新党「たちあがれ日本」の選挙用の略称として「日本」が認められました。そうなると比例区選挙で「日本」と書いた票が貴党とたちあがれの間で「按分」され、貴党が正当な議席を獲得できなくなる可能性が出てきます。
田中代表はこの略称問題で、混乱を避けようとしない行政の不作為のほかに、1人1票を損ねる点を問題にされています。票の按分によって貴党を支持する票がたちあがれの議席に化けるということは、まさに主権者の主権を侵害する問題です。
主権侵害は、こうした投票手続だけでなく、すでに選挙制度本体によって引き起こされています。衆参の選挙制度で基本となる小選挙区制は主権者の意思を正確に「按分」せす、強制的に二大政党の候補者に振り分ける制度です。得票率がまったく議席獲得率に反映されません。
こうした得票率と議席獲得率の乖離は、衆議院の比例区選挙でも発生しています。ブロック制で定数が細分化されているためで、比例代表制は名ばかりのものとなっています。
略称問題を主権侵害の問題と捉え、選挙制度本体を含めた公職選挙法の抜本的な改正として取り組んでいただくようお願いいたします。そうすれば貴党とたちあげれの2党だけでなく、確実に全政党、全主権者の問題として訴えることができます。
(2)略称問題とまったく同じ構図の改憲国民投票の投票方式
改憲国民投票でも似たような問題があります。投票用紙では原則的に○で「賛成」または「反対」の文字を「囲む」ことになっています。例外的に「×の記号、二重線その他の記号を記載することにより抹消した投票」(第八十一条)も効力が認められています。
衆院法制局に2007年4月9日、投票用紙の「反対」欄の「余白」に×を記載した場合の解釈を聞いたところ、「抹消」すなわち「賛成」とみなす、とのことでした。
国民投票投票用紙:「反対」欄の余白に「×」は「賛成」
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/38342436.html
改定案に反対するつもりで「反対」欄の「余白」に×を記載しても、「賛成」とみなされてしまうということです。
改定案に賛成するつもりで――「賛成」欄を「選択」するつもりではなく――「賛成」欄の「余白」に○を記載した場合は、「投票人の意思が明白」(第八十一条)であるとして「賛成」とみなされるはずで、改憲反対の主権者のような事態は生じません。
同じく衆院法制局に同年4月16日、「賛成」「反対」の上に「レ点」を重ね書きした場合の解釈を聞いたところ、それぞれの文字の「抹消」とみなすか、書き方によっては「無効」とみなす場合もある、とのことでした。
憲法改定国民投票投票用紙:「反対」の上に「レ点」記号の重ね書きは「賛成」または「無効」
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/38903291.html
「レ点」は通常、チェックマークとして使われるので、「反対」の文字を選択する意図で「反対」に「レ点」を重ね書きするケースも考えられます。しかしそうした意思表示でも「賛成」とみなされるわけです。
○だけには「賛成」「選択」というすべての意図・意味を認めながら、○以外の記号には「抹消」の意図しか想定せず、投票意思と投票結果に乖離を生じさせるということは、法の下の平等に反し、主権を侵害するものです。
逆の投票方式を考えてみればよく分かるでしょう。○で「選択」して項目に「賛成」の意思表示をする代わりに、×で「抹消」して項目に「反対」の意思表示をする方式です。○に「賛成」の意図を認めないならば、今度は○をそうした意図で利用する改憲派の意思が無効とされてしまいます。1つの記号を主たる投票記号に設定すること自体に無理があり、法の下の平等に反する事態を招くのです。
こうした問題の根本的な原因は、「賛成」または「反対」の文字を記号で選択するという投票方式にあります。旧与党原案や点字投票用(政令案の別記第三様式)のように、1つの空白記載欄に○(賛成)または×(反対)を記載する方式の方がよっぽど公正・正確というものです。
改憲国民投票の投票方式は、略称問題とまったく同じ構図の不公正さをはらんでいます。この国民投票法の問題も合わせて追及していただきたく思います。
太田光征
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