2010年04月10日

徳之島案を「県外移設」といえるのか? 鳩山政権内に急浮上している徳之島案は琉球列島・沖縄差別政策の延長というべきではないのか!

普天間飛行場の移設先候補として鳩山首相の「腹案」とされる徳之島案が急浮上している問題について、同首相自身は「勝手な憶測」(注1)と否定しているものの、2日の関係閣僚会議で同首相が「徳之島を全力で追求したい」と徳之島への移設を指示したことは複数の政府関係者が証言しているところであり、間違いないところだといってよいでしょう(注2〜注4)。

この鳩山首相の「腹案」とされる徳之島案について、候補地とされた現地の徳之島住民が強く反対していることはもちろん(注5〜注10)、沖縄からも〈戦時中に日本軍部が配下部隊の防衛範囲を定める区分で「北緯三十度線以北の皇土防衛の担当部隊は『本土防衛軍』と称されていたのに対し、それ以南の防衛部隊は、『南西諸島守備軍』、すなわち『沖縄守備軍』として明確に区分されていた」(大田昌秀さん(元沖縄県知事)の発言。「海鳴りの島から」2010年4月5日付より)〉延長線上にある鳩山ヤマトゥ政権の琉球列島・沖縄差別政策というべきではないか、と強く批判する声があがっています。

沖縄県在住の芥川賞作家の目取真俊さんはこの問題の根にあるヤマトゥの政治家たちの沖縄に対する差別意識を次のように指摘します。

「『県外移設』先としていくつか挙がった案から『本土』=ヤマトゥの案は除外され、薩摩侵略以前は琉球と深いつながりのあった奄美諸島の徳之島が残ったことにより、薩摩による支配や明治の『琉球処分』、大田氏が指摘する戦中・戦後の分離などの歴史に対する意識が呼び起こされる」

「そうやって喚起された歴史意識から基地問題が捉え返されることで、沖縄も徳之島も〈一旦緩急あれば、容赦なく切り離し、政治的「取引の具」に供してかまわないものでしかなかった〉北緯三十度線より南の島であることが再認識される。ただでさえ沖縄への米軍基地集中という差別政策への反発があるなかで、鳩山政権は奄美・沖縄へのヤマトゥの歴史的仕打ちを思い起こさせ、繰り返される差別への反発を強めさせているのだ」

「徳之島への『移設』に熱心らしい鳩山首相は、それで自らが『県外移設』に取り組んでいる姿勢を見せているつもりかもしれない。しかし、歴史に関する無知と発想の根底にある奄美・沖縄への差別に無自覚であるが故に、問題をより難しくし、反発の火に油を注ぐ愚を犯している。/しかし、これは鳩山首相や政府閣僚だけの問題ではない。琉球・奄美・沖縄がたどってきた歴史と、それが基地問題に関しても影響を与え、人々の意識を重層的に形成していることに、今のヤマトゥの政治家、メディア関係者がどれだけ気づき、考えきれているか」(「北緯三十度線」海鳴りの島から 2010年4月5日)
http://blog.goo.ne.jp/awamori777/e/30493c95a71be6081f0ae8c83fec8ce1

また、下記の大田昌秀さんの指摘する「沖縄住民の怒り」は、直接的には徳之島住民の怒りを表象しているものではありませんが、上記の太田さんの琉球弧(琉球諸島)全体の考察から見ても徳之島住民の怒りをも表象していると見てよいだろう、と私は思います。大田さんは言います。

「私はジャーナリズムをアメリカで専攻したものだから住民の新聞に載る投書を非常に見る注目するんですよ。ずっと前から丹念に投書は見てきたけれど、最近沖縄の投書を見て従来とかわったのが出てきているのは、従来は投書マニアみたいなインテリが投書していたが最近はごくふつうの家庭の主婦とか農業をやっているオッサンとかそういう人たちが投書するのが増えていて、それもいまの県内に基地を移設する問題に対する怒りがヒシヒシと感じられる投書が非常に増えてきている」

「キッシンジャーさんなんかも日本政府がきちんと要請すれば、なにも代替基地を作る必要はなく返せるということをはっきり言っているわけですね。ですから、そういうことについてもう少し政府の方できちっと沖縄の実情を理解して、それに添うような形で政策をとらないと。いま沖縄の人が何に一番怒っているかというと日米安保条約は日本の国益に適うとか、アジア太平洋地域の平和と安全を守るために不可欠だと、indispensableということばを使っていますよね。ならば日本の国益に適うならば日本全体が当然引き受けるべきなんですよ。(略)これは明らかに沖縄に対する差別ではないか、ととられるわけですよ。ですからそういうことをやるというのはいかに沖縄の人の心を傷つけるかということをもう少し知って欲しい、と思う」

「私がいま一番懸念するのは、いまパッケージ論というのが出ていていて普天間の移設先を見つけないと嘉手納以南の基地を返すのも返さないで現状のまま維持するという言い方をしている。ところが、この人たちは(こういう言い方は許さない)。日本側がそういうことを言うとなるとそれはほんとうに問題なんです。アメリカ側は日本側の方よりはるかに住民感情に気を配っていて、その点についてはびっくりするほどいろいろ調査をしているんですが、ところが日本側は非常に簡単に見ている。沖縄の人はふつう温厚だといわれて、権力に抵抗する人はいないといわれていますが、ところが復帰直前になってコザ騒動というのがあったでしょう。そういう形で爆発するときが出てくるもんですからね(略)、私たちは米軍と地元の住民が直接暴力行為に及ぶことはなんとしても避けたい、と思って、そういう事態が起こらないようにとそれを一番懸念するんです。ところが普天間をそのまま維持すると海兵隊のヘリコプターというのはこれまで何度も墜落しておりまして、これが今度万が一人身事故でも起こったら非常に懸念されることがありますので、そういうことが起こらないためにも普天間は早く返した方がいい。その方が両政府のためにいい、と私なんか判断するわけです」

「しかも戦争が終わってずっと米軍の占領におかれるという時代が来てですよ、これがいろいろな面に及んでいるんです。たとえば米軍統治下に27年間おかれたものですから国家公務員の試験を受ける機会がなくて、ですからいま、中央政府には沖縄出身の若者たちが100名くらいいます。集めたことがあります。みんな係長以下の連中でね。他府県は大臣や高級官僚が一杯いますから折衝してもしやすいんですが沖縄はそれがまったくないものですから・・・。そういういろいろな問題があるわけなんですよ。ですからこれがほんとうに日本の国益に適う、アジア太平洋地域の安全と平和に結びつくということであれば、当然それぞれが負担すべきであって、目に見えない遠く離れた沖縄ばかりに押し付けて60年間平然としている、その感覚が私たちにはわからないですよ。だから私なんかは自分たちの痛みを本土に移すべきではない、ということで一切本土に移せとは言わなかった。それが最近県外に移せという声が高まってきているのは、これだけ耐えてきてもまだわかってもらえないのであれば、基地がどういうものであるかということを本土にも知ってもらおうと。だから、あえて本土に移せ、という言い方が最近増えてきている」(「普天間問題のボタンのかけ違いはここから始まった 大田昌秀氏(元沖縄県知事)」(ビデオニュース・ドットコム 2010年3月11日放送)
http://www.videonews.com/on-demand/461470/001385.php

鳩山首相の「腹案」とされる徳之島案を同首相がこれまで繰り返し言ってきた「少なくとも県外移設」という公約を実現するものとして評価する向きがありますが、このような評価は、政権交代政党としての民主党、鳩山政権の得点をなんとか加算してあげたい、という評価の方向性を著しく見誤った評価ならぬ評価といわなければならないでしょう。私たちが真正面を向いて対峙するべきはなによりもヤマトゥンチューの心ない差別意識(それが無自覚的なものを含むものであったとしても)にこれまで耐えに耐えてきた沖縄の人々の心です。その沖縄の人々の心に向き合おうとする姿勢からは決して徳之島案などは出てきようはないはずです。また、その案を評価するという発想も出てきようもないでしょう。徳之島案などとんでもない、と私は強く思っています。


注1:「徳之島への移設指示」は「勝手な憶測」5日の鳩山首相(朝日新聞 2010年4月5日)
http://www.asahi.com/politics/update/0405/TKY201004050328.html
注2:普天間移設 政府、ホワイトビーチ案断念 地元と与党反対5月決着困難に(産経新聞 2010年4月9日)
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100409/plc1004090204003-n1.htm
注3:普天間移設:徳之島軸に調整 ホワイトビーチ断念へ(毎日新聞 2010年4月10日)
http://mainichi.jp/select/today/news/20100410k0000m010125000c.html
注4:普天間移設、徳之島を軸に交渉 米「協議入れない」(共同通信 2010年4月10日)
http://www.47news.jp/CN/201004/CN2010040901000934.html
注5:徳之島3町議会が基地移設反対決議(西日本新聞 2010年3月18日)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/159194
注6:普天間問題:徳之島の3町長、「断固反対」強調(毎日新聞 2010年4月7日)
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100408k0000m010091000c.html
注7:徳之島3町が団結、米軍基地移設反対で28日に集会(南日本新聞 2010年3月24日)
http://www.373news.com/modules/pickup/index.php?storyid=22907
注8:基地移設賛成派 2候補とも落選 鹿児島・徳之島町議選(西日本新聞 2010年3月30日)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/161911
注9:普天間移設  徳之島へはごり押しだ(南日本新聞 社説 2010年4月7日)
http://www.373news.com/_column/syasetu.php?ym=201004&storyid=23178
注10:「県境」の島 浮上に憤り 徳之島ルポ 沖縄の痛み 今わが身に(沖縄タイムス 2010年4月6日)
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-04-06_5417/

by 東本高志
posted by 風の人 at 16:09 | Comment(1) | TrackBack(0) | 一般
この記事へのコメント
 こんちゃ!ども^^です!車で20分?の御殿場駐屯地へ遊びドライブ行った時に撮って感じた事を皮肉っぽくも衝撃・過激的に書きました。タイトルは『衝撃・過激的に鳩山,普天間問題逃げつつも自衛隊を笑おう!』です。毎度の楽しんで戴きたいユニーク:おもしろ画像写真では、「御殿場駐屯地付近で目撃した自衛隊車両の怪しい外国からの来賓車両?」「御殿場駐屯地入り口の写真」「歌詞 / THE BLUE HEARTS:すてごま&やるか逃げるか 」等々の写真を貼りました。<m(__)m>・・どうぞ!遊びに寄って見てやって下さい。\(◎o◎)/!


Posted by 智太郎 at 2010年04月10日 17:26
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