同高裁判決の要旨は下記で読むことができます。
■赤旗配布で逆転無罪判決要旨 東京高裁(共同通信 2010年3月29日)
http://www.47news.jp/CN/201003/CN2010032901000357.html
また、同判決についてはメディアはほぼ一斉に以下のような社説を発表しています。産経新聞の主張を除いてほぼ肯定的な評価です。
■「赤旗」 配布無罪―時代に沿う当然の判断だ(朝日新聞 社説 2010年3月30日)
http://www.asahi.com/paper/editorial20100330.html?ref=any#Edit1
■公務員ビラ無罪 注目すべき問題提起だ(毎日新聞 社説 2010年3月30日)
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20100330k0000m070110000c.html
■[政党紙配布に無罪] 時代を踏まえた判決だ(沖縄タイムス 社説 2010年3月30日)
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-03-30_5088/
■機関紙配布逆転無罪 異例の付言に耳を傾けよ(愛媛新聞 社説 2010年3月30日)
http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201003305396.html
■公務員法違反/「逆転無罪」 の判断は重い(神戸新聞 社説 2010年3月30日)
http://www.kobe-np.co.jp/shasetsu/0002824398.shtml
■公務員と政治 むやみな規制許されぬ(北海道新聞 社説 2010年3月30日)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/223434.html
■堀越事件逆転無罪 弾圧の意図挫(くじ)く意義ある判決(赤旗 主張 2010年3月30日)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2010-03-30/2010033001_05_1.html
■公務員の赤旗配布 適正さ欠く逆転無罪判決(産経新聞 主張 2010年3月30日)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/100330/trl1003300335000-n1.htm
そのほかこれは社説ではありませんが、東京新聞のコラム『筆洗』が堀越事件の本質、すなわちわが国の公安権力のあまりにも甚だしい違法捜査、その異様さ、問題点にふれたよい記事を書いています。
「共産党を支持する社会保険庁(当時)の職員を、警視庁公安部などの捜査員は約四十日間、徹底的に尾行した。自宅を出た後に、昼食に何を食べ、夕方にだれと会ったのか。夜はどんな集会に参加したのか▼行動は分刻みに記録された。多い日には十人以上の警察官が出動し、三、四台の車両、ビデオカメラ四〜六台がたった一人の尾行に使われた。私生活に踏み込む執拗(しつよう)さは、戦時中に戻ったような錯覚さえ抱かせる▼一人のプライバシーをなぜ、ここまで監視しなければならなかったのか。それは国家公務員が休みの日に、政党機関紙を配った行為を『犯罪』とするためだった▼東京高裁はきのう、堀越明男さんに逆転無罪の判決を言い渡した。政治活動を禁じた国家公務員法の罰則規定を適用することは『国家公務員の政治活動に限度を超えた制約を加えることになり、(表現の自由を定めた)憲法二一条に違反する』という明快な判断だった」(東京新聞 筆洗 2010年3月30日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2010033002000064.html
上記『筆洗』での筆者の指摘は、堀越事件の弁護団のおひとり泉澤章弁護士の下記のシンポジウムでの「警察の調書にはどこの飲み屋に行って、どこそこの女性と手をつないで歩いていた(あるいはどこそこでキスをしていた?)、というところまで記録されていた」という証言とも符合します。ほんとうにあまりにも異様な違法捜査といわなければなりません。
■裁判員制度についての勉強会 「前夜」 〜秘密の中の裁判員制度〜パート1(泉澤章弁護士の発言部分:1.10.28秒頃)
http://www.videonews.com/asx/press/090520_saibanin-1_300.asx
この堀越事件2審無罪判決、あるいは国家公務員の政治活動の制限・禁止の問題性について下記のブログに有益なコメントがあります。ご参照ください。
■堀越事件2審無罪判決(中山研一の刑法学ブログ 2010年3月30日)
http://knakayam.exblog.jp/14057241/
■国家公務員の政治活動の制限・禁止について(ペガサス・ブログ版 2010年3月30日)
http://pegasus1.blog.so-net.ne.jp/2010-03-30
さて、冒頭に示した今回の東京高裁の判決要旨の最後には裁判官の下記のような「付言」が付されています。
「さまざまな分野でグローバル化が進む中で、世界標準という視点からもあらためてこの問題は考えられるべきだろう。公務員制度の改革が論議され、他方、公務員に対する争議権付与の問題についても政治上の課題とされている中、公務員の政治的行為も、さまざまな視点から刑事罰の対象とすることの当否、範囲などを含め、再検討され、整理されるべき時代が到来しているように思われる」
判決の付言はきわめてまっとうな裁判官の現代認識というべきであり、また、現代社会考というべきであり、また、そういう意味で常識的な所感ともいうべきものだろうと私は思います。が、最高裁はこの東京高裁の裁判官の「思われる」という言葉で結ばれる所感を「客観的」なものととらえるか「主観的」なものにすぎないととらえるか。私は大変心もとないものを感じます。神頼みではもちろんいけないわけですが、先の最高裁裁判官の国民審査で私たちはその審査権を行使したばかりで(罷免率6〜7%台で全員が信任)、私としていま有効になにかを為す術を知りません。この東京高裁裁判官の現代認識が最高裁裁判官にもきっと及ぶことを私としては期待するばかりです。あと、できること。政治をもっとよりよい方向に変革させることだろう、と。
参考:
■私は国民審査では審査対象の裁判官全員にバッテンをつけます(平和への結集第2ブログ 2009年8月8日)
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/125267468.html
■9裁判官全員を信任 国民審査 罷免票6〜7%(CML 001183 2009年8月31日)
http://list.jca.apc.org/public/cml/2009-August/001165.html
by 東本高志
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「公務員の政治活動に対するこれまでの規制の範囲は、不必要に広すぎた。」
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