2010年02月09日

小沢一郎氏、鈴木宗男氏、佐藤優氏の評価について また雑誌『世界』の立ち位置の問題について

小沢一郎民主党幹事長は政治資金規正法違反事件について不起訴になりましたが、その小沢氏の「政治とカネ」の問題に関連して、政権交代したばかりの「よちよち歩き」の民主党を擁護しようとする立場から、小沢氏の「政治とカネ」の問題を不問に付して、同氏及び同氏の強力な応援団の
役割を意図的に(と、私には思われるのですが)買って出ている鈴木宗男氏や佐藤優氏を自らの政治観測の主観に合わせて創作した〈虚像〉の鈴木宗男像や佐藤優像をもって彼らを高く評価しようとする向きが私たちの側(民主勢力)の一部に少なからず見受けられるように思います。

しかし、 少なくとも普天間基地撤廃問題と辺野古基地建設問題に関していえば、鈴木宗男氏と佐藤優氏の主張はおよそ評価に値するものとはいえず、逆に反ウチナー的でその〈実像〉は下記のようなものである、と沖縄在住の芥川賞作家の目取真俊さんは警鐘を鳴らしています。

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■〈辺野古移設反対〉の虚々実々(目取真俊「海鳴りの島から」 2010年2月8日)
http://blog.goo.ne.jp/awamori777/e/0247ed8aaff65e4a3fcab50dfec54abb

 2月6日付琉球新報に掲載された〈佐藤優のウチナー評論〉で、佐藤氏が次のように書いている。民主党の小沢一郎幹事長不起訴を受けてのものだ。


〈沖縄としては小沢不起訴の結果を最大限に活用すべきだ。小沢氏と同じく辺野古移設に反対の立場を取る鈴木宗男衆議院外務委員長に外交委員会として正式に沖縄訪問することを働き掛け、普天間問題について沖縄の民意をより強く反映させる環境をつくるべきだ〉

 同評論の中で佐藤氏は、小沢幹事長が〈米海兵隊普天間飛行場の辺野古への移設に反対する意向を持っている〉ことを強調している。一方で、小沢氏が「移設」先として下地島や伊江島に言及したとされることについて、つまり「県内移設」を考えている可能性があることについては一切触れ
ていない。

 それは鈴木宗男議員についても言える。佐藤氏は〈小沢氏と同じく辺野古移設に反対の立場を取る鈴木宗男衆議院外務委員長〉と書く。しかし、鈴木氏が同時に次のような考えを持っていることには触れないのだ。

〈私は、岡田外務大臣のいう嘉手納統合案も、普天間の危険性から考えれば一つの手だと思います。ただそれも、根回しなしで唐突に言うだけでは動きません。嘉手納は以前から騒音等の問題がありますが、騒音は減るどころか増えていて、沖縄はアメリカに不信感を強めています。私が国務大臣の時も、嘉手納統合案を言いましたが、アメリカ側の事情で受け入れられなかった。……しかし、その一二年前と、現在の国際情勢は変わってきている。だからいま新たに考えていく価値は大いにあると思います〉(『世界』2月号・170ページ)。

〈鈴木宗男衆院外務委員長は14日、大阪市内で開かれた共同通信社の「きさらぎ会」で講演し、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先として「訓練できる滑走路があり騒音も関係ない」と述べ、沖縄県宮古島市の下地島空港が適当との考えを示した。

 鈴木氏は移設先について「沖縄県や海外など色々検討したらいい」 としつつ、「(県営の)下地島空港は民間しか使えないが、知事から自衛隊が使える許可をもらえば、米軍も使える」と指摘。「固定化ではなく、期限付きでもいい。本土でも訓練を受け入れローテーションを作るのが一番の解決」と強調した〉(産経新聞電子版1月14日付記事)。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100114/stt1001141744008-n1.htm

 これらの主張を見るなら、鈴木議員は〈辺野古移設〉に反対しているといっても、一方で嘉手納統合案や下地島空港案など「県内移設」を主張しているのだ。注目すべきは鈴木氏が、両案を同時に主張していることであり、下地島空港については、知事から自衛隊の使用許可を得て米軍に使わせる、と具体的な方法まで述べている点である。

 本ブログの1月15日に「沖縄における自衛隊強化の問題」という文章を載せた。その時はまだ、産経新聞電子版の1月14日付の記事を知らなかったのだが、後で読んで、やはりそういう手で来るのだろうな、と思った。鈴木議員と国民新党の下地幹郎議員の近しい関係を考えれば、『世界』2月号や共同通信社「きさらぎ会」講演での鈴木議員の発言が、私には下地議員の《本音》を代弁しているように見える。つまり、 嘉手
納統合案を基軸としつつ、普天間基地の機能、訓練の分散を名目に、下地島空港の自衛隊と米軍の共同使用を図るという狙いである。

 引用した二つの鈴木議員の主張を佐藤氏は知っているはずだ。しかし、佐藤氏は鈴木議員の「県内移設」の主張については触れずに〈辺野古移設反対の立場〉を強調し、〈鈴木宗男衆議院外務委員長に外務委員会として正式に沖縄を訪問することを働き掛け〉るよう提案する。 だが、その提案は佐藤氏が言うように〈沖縄の民意をより強く反映させる環境
をつくる〉ことにつながるだろうか。

 沖縄では自民党や公明党ですら「県外移設」を主張するようになっており、「県内移設」 にしがみついているのは仲井真知事と下地議員くらいのものだ。 沖縄県民の多数は、辺野古新基地建設反対と同時に「県内移設」にも反対しており、同時に普天間基地の固定化も許さない、という考えだ
ろう。そういう〈沖縄の民意〉は鈴木議員の主張する嘉手納統合案や下地島「移設」案とは相容れないものだ。

 それくらいのことは佐藤氏も分かっているはずだから、あえて計算尽くで鈴木議員への〈働き掛け〉を提案しているのだろう。鈴木議員の主張と〈沖縄の民意〉のズレを隠した上で〈働き掛け〉を呼びかける裏には、鈴木議員と沖縄の関係強化を図り、沖縄での影響力を拡大させていこうという思惑が透けて見える。それはまた佐藤氏の影響力の拡大にもつながるはずだ。

 琉球新報の 〈佐藤優のウチナー評論〉 を読んだだけで、『世界』2月号や産経新聞電子版での鈴木議員の主張を読んでいない読者は、佐藤氏の主張を真に受けてしまうかもしれない。しかし、「県内移設」を主張する鈴木議員にいくら〈働き掛け〉たところで、〈普天間問題について沖縄の民意をより強く反映させる環境をつくる〉ことにはならない。むしろ、逆の結果を生むだけだ。

 表向きは 〈辺野古移設反対〉 を口にしている政治家の虚々実々のかけひきを見抜かなければならない。
………………………………………………………………………………

さて、上記の鈴木宗男氏の 「〈沖縄の民意〉とは相容れない」主張のひとつである嘉手納統合案の主張は、雑誌『世界』編集長の岡本厚氏のインタビューに関わるもので、同誌2月号に掲載されているものです。くだんの鈴木氏の発言についてインタビュアーとしての岡本『世界』 編集長は異議らしきもの、あるいは疑問らしき質問をなんら発していませ
ん。そして、同インタビュー記事には編集部によって次のようなリードが付されています。鈴木氏は「沖縄県道104号線越え実射砲撃演習の本土移転が検討された際には、地元への実射訓練場受け入れを積極的に呼び掛け、実現させた。沖縄の負担軽減に向け行動を起こしてきた鈴木氏が、現在の普天間移設問題、さらに今後の日米関係のあり方について明快に論じる」。
http://www.iwanami.co.jp/sekai/2010/02/167.html

こうした対応が、「『世界』は、良質な情報と深い学識に支えられた評論によって、戦後史を切り拓いてきた雑誌です。 創刊以来60年、すでに日本唯一のクオリティマガジンとして、読者の圧倒的な信頼を確立しています」と自らを自己規定する雑誌にふさわしい対応といえるでしょうか? 否といわなければならないでしょう。折から同誌3月号には沖縄県外在住の学者、知識人グループが先月18日に記者会見で発表した「普天間基地移設計画についての日米両政府、 国民に向けた声明」が掲載されています。その声明にはなんと記されていたか。「私たちは、辺野古に新しい基地を建設するこ
とはもちろん、沖縄県内に普天間基地の機能を移設することに反対する」 と明確に記されています。
http://www.iwanami.co.jp/sekai/

上記の鈴木氏の普天間基地の嘉手納統合発言は左記の声明の精神に明らかに反します。岡本『世界』編集長はインタビュアーとして同席していながら、なぜこの鈴木発言に異議なり疑問なりをひとことも発しようとしなかったのでしょう? 自らが規定する『世界』という雑誌の使命を省みようとしない背徳の沙汰といわなければならないように思います。

実のところ上記の学者、知識人グループの声明は雑誌『世界』編集長の岡本厚氏の発案から始まったように思われます。下記のブログに岡本厚氏の昨年12月25日付の「普天間移設問題声明のお願い」という知識人、研究者、作家宛のメールが紹介されていますが、同メールで岡本氏は次のように述べています。「岩波書店『世界』岡本です。(略)ご承知のとおり、沖縄の普天間基地移設問題が新政権の大きな問題になっています。米国の圧力も、相当なものであるようです。メディアもまったくひどい報じ方です。そんな中で、黙っていられなくなり、何人かと相談して、添付のような声明を作りました。沖縄への連帯のメッセージであり、幾分は鳩山首相への応援であり、日本国民への呼びかけです」。

岡本厚氏はもしかしたら本音のところで「幾分は鳩山首相への応援」のためには鈴木氏の唱える普天間基地の嘉手納統合案の許容もやむなしなどとお考えなのか? そうであれば、「良質な情報と深い学識に支えられた評論によって、戦後史を切り拓いてきた日本唯一のクオリティマガジンとして」の雑誌『世界』の戦後65年目にしての立ち位置が問われる重大問題といわなければならないのですが、岡本厚氏にはその自覚があるのでしょうか?


東本高志@大分
taka.h77@basil.ocn.ne.jp


posted by 風の人 at 23:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | 一般
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