この小さな小さな旅は、強制連行という「誘拐」罪によって麻生炭鉱など筑豊のヤマ々々で犠牲になった名もなき朝鮮人被強制連行者の慰霊の旅でもありました。以下のおよその旅程そのものがそのことを明瞭に示しえているように思います。
23日:
飯塚駅集合→ボタ山の名残をとどめるヤマ跡を見る→麻生吉隈炭鉱跡(注1)→朝鮮人無縁仏(石ころの墓)墓参→吉隈炭鉱跡地を見下ろす高台の公園で昼食→徳香追慕の碑(注2)墓参。
同碑前で「強制連行を考える会」代表の大野節子さん(83)から筑豊内でも当時すでに「圧制と低賃金のヤマ」として名を馳せていた麻生吉隈炭鉱の1936年1月25日の坑内火災で非業死した29名(朝鮮人25名(内、創氏改名者1人)、日本人4名)の朝鮮人、日本人犠牲者の話を伺う。また、同じく「強制連行を考える会」の柴田正彦さんから「麻生炭鉱朝鮮人争議」(注3)と朝鮮人労働者(被連行者)の証言からなる同麻生炭鉱からの壮絶な脱走劇の話(アウトライン。詳細は下記シンポジウム)を伺う。
注1:【L麻生の炭鉱史跡】http://www16.ocn.ne.jp/~pacohama/kyosei/tikuhou.html
注2:【徳香追慕碑】http://hasiru.net/~maekawa/mine/yosikuma/yosikuma3.html
注3:【朝鮮人強制連行と麻生炭鉱】http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2006/01/0601j0405-00002.htm
→株式会社麻生飯塚病院(公的病院を含めて西日本最大規模だという)経由→麻生太郎実家経由→無窮花(ムグンファ・木槿)堂(無縁仏の遺骨を納めた堂。飯塚市)墓参。同碑前でNPO無窮花の会事務局の吉田幸子さんから無窮花堂建立の経緯を伺う。同堂では2009年6月現在で114柱の無縁仏が納骨されているといいます。そのうち身元が判明した遺骨は6柱。さらにそのうち4柱の遺骨は同遺骨を故国に帰納させるための費用が捻出できないなどの理由からいまだに遺族に引き取られていないということでした(ご遺族の無念さを思うとともにこれまでの日本政府の責任放棄の姿勢に対する深い憤りの念をあらたにせざるをえませんでした)。
→北九州ふれあいの家(八幡東区皿倉山麓)でシンポジウム(注4)→夕食→交流会
注4:日本側問題提起者;柴田正彦さん(強制連行を考える会)。テーマ;「麻生炭鉱朝鮮人争議と朝鮮人労働者(被連行者)の麻生炭鉱からの壮絶な脱走について」。韓国側問題提起者;金承國さん(韓日100年平和市民ネットワーク運営委員)。テーマ;「朝鮮人強制連行真相究明のための強制動員被害者の証言大会の開催について」
24日:
小田山墓地(朝鮮半島への帰還者海難事故による無縁仏の碑。墓はなく、一面の野原。同地の下には100人を超える朝鮮人が埋葬されているのではないかという)墓参→九州朝鮮中高級学校訪問(八幡西区折尾。同校を訪れた日の翌日は折しも新校舎竣工5周年記念祝典の日。私たちは思いがけなくも美しいチマチョゴリの民族衣装を身に着けた小中クラス児童・生徒の舞う朝鮮舞踊総仕上げの練習風景に接することができました)→新日鐵(旧・八幡製鉄)の強制動員の地・溶鉱炉を見学(私はここでみなさんとお別れしました)。
特記すべきこと:
上記の北九州ふれあいの家であったシンポジウムでは、韓国側の参加者から、麻生炭鉱で強制労働を強いられていた朝鮮人労働者のうち100名の生存が確認できたこと。また、そのうち60名の証言が得られたこと。さらにそのうち20名の証言は特に重要な証言を含んでいること(韓国政府「強制動員真相究明委員会」調べ)などが報告されました。
上記の韓国側の報告に関連して韓日100年平和市民ネットワーク運営委員の金承國さんが市民レベルの朝鮮人強制連行真相究明のための韓国側と日本側のそれぞれのフレームづくりを進展させながら、その上で「圧制と低賃金のヤマ」の象徴としての麻生炭鉱のあった飯塚の地でイギリス人、オーストラリア人を含む強制動員被害者の証言大会を開催したい旨提案されました。
私は上記の金承國さんのご提案はきわめて重要な提案であると思いました。
この日、私たち「平和の旅」一行は、朝鮮人強制連行の象徴の地である筑豊の土地に眠る名もなき朝鮮人犠牲者の無縁墓地を巡ってきたのですが、飯塚市の無窮花堂で聞いた身元が判明していながら単にお金がないという理由だけで遺骨を引き取ることのできない4柱の遺骨のご遺族がおられるという話はとりわけ胸に突き刺さりました。私たち日本人、日本政府の責任、いや無責任を思わざるをえませんでした。
麻生炭鉱強制労働朝鮮人生存者の証言とともにこの4柱の遺骨のご遺族にもぜひ証言していただきたい。いや、日本、日本人への恨みつらみの思いの丈を述べていただきたい。その朝鮮人生存者と4柱の遺骨のご遺族の日本、日本人への恨みつらみは決して負の弾劾としてではなく、きっと日本人の心骨に突き刺さり、かつ、それゆえに今後の日韓の平和の礎ともなる証言になりうるだろう。
この日、この慰霊の旅に参加した日本側勢は、「強制連行を考える会」の大野節子さん、柴田正彦さん、無窮花の会(同会は自治労、教組など12団体で構成されているという)の吉田幸子さん、100ネット会員で日本側の強制動員真相究明ネットワーク呼びかけ人メンバーのおひとりの伊藤莞爾さん、筑豊、北九州地区、韓国の人脈をつなぐキーパーソンともいうべき\x8F樮東録さん、それに100ネット共同代表の岡田卓己さんなどなど韓国の金承國さんのおっしゃる日本側の「フレームづくり」形成に欠かせないメンバーが勢ぞろいしていた感があるように思います。
この人びとの力を結集すれば金承國さんのご提案の実現は決して非現実的なものとはいえないだろう、と私はそう思いました。
この慰霊の旅は、現に生きて朝鮮人犠牲者、強制連行者の無念を晴らそうとしていまも活動を続けておられるすばらしい方々、一叢(ひとむら)の勇者に出会えた「旅」でもありました。
感謝とお礼を述べさせたいただきたいと思います。
東本高志@大分
taka.h77@basil.ocn.ne.jp
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