川崎市長選挙は、現職阿部孝夫氏が当選した。投票率は、前回前々回とおなじく36パーセント台ではあるが、過去三回の中ではわずかではあるけれども最低の36.09パーセントだった。
候補者の得票数は、以下の通りである。
阿部孝夫(連合支持) 145688票
福田紀彦(民主支持) 117456票
原 修一(自民支持) 66462票
岡本 一(共産支持) 60698票
現職の阿部候補は、前回は、共産党以外の政党の支援を受けた。共産党単独支持の岡本一氏と争い229021票を獲得、相手の岡本氏も137767票との争いだった。最初の市長選では、現職の高橋清候補の100686票に対して、127530票を獲得して初当選を果たした。この時はほかに候補者が三人いた。
前評判の民主党の追い風が吹かず、なぜ民主党系の候補が落選したか。ひとつは現職の過去二期の実績が評価されたということがいえよう。
しかし、最初は共産党以外の政党支持を見込んでいた阿部氏にとり、民主党が相乗りを禁止する方針を決めたことは予想外だった。あわてた阿部氏は民主党に単独で支持を申し出た。それは民主党には認められなかったし、自民党は激怒した。民主党にも自民党にも支持されず、阿部氏は連合の支援をもとに「市民党」を名乗った。その迷走ぶりは、市民にとってどの候補を支持するかということの前に、市長選そのものへの失望感を強く与えた。そのことが過去三回でも最低の投票率という結果になって表れた。
さらに、今回まったく表面に出ていない公明党と支持母体の創価学会の動向である。自公政権崩壊後、公明党は自民党との選挙協定について全国的に見直しを進めている。今回の参院補選でも、公明党は自主投票を方針としている。テレビが報道した出口調査では、公明党支持層の五割以上は阿部候補に投票している。
また無党派層も、阿部候補に投票した有権者が最も多い。福田氏にも無党派層の票は集まったが、阿部氏に次いで二番手の得票だった。
阿部候補は、もともと民主党代議士で現在は神奈川県知事の松沢成文氏が担ぎ上げて立候補した経緯がある。福田紀彦氏は松沢代議士の第一秘書であった。その点では、阿部氏も福田氏も民主党が支援してきたおなじ流れの政治家である。ある意味では、神奈川県知事松沢成文氏の高等戦略と言えよう。もともと1972年の市長選で金刺市長を、社会党・共産党の革新統一候補として、当時の公労協の市労連委員長だった伊藤三郎氏が破って初当選した。阿部氏に敗れた高橋清市長も、伊藤氏の後継者であったが、後から自民党が相乗りしたことで、共産党が別の候補を立てた経緯がある。
今回の市長選によって、川崎市政は、非自民反共産の松沢路線が確立されたと予想するのであるが、うがちすぎであろうか。
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