2009年10月25日

沖縄県米軍基地問題と日本政治の根本的課題

櫻井 智志

 民主党連立政権に向けて、アメリカは普天間基地の移転問題で強硬な姿勢を示した。アメリカ外務省長官もアメリカ軍幹部も、米軍基地の沖縄県外移転は認められないことを公的に発言した。

 アメリカは世界戦略の一環として、沖縄県にある米軍基地の存在を重視している。背景には、アフガニスタンーイラクーイランーパキスタンとつながる米軍の軍事戦略と密接な関わりが見え隠れしている。

 一方日本は、自公政権を打倒した総選挙で、沖縄県内の軍事基地を県外に移すことを公約し、さらに連立政権をくむ上で、社民党の沖縄米軍基地県外移転の主張を認める上で連立政権をスタートさせた。

 戦後六十年、日本はアメリカの占領支配とその後も米軍とアメリカ政府の言うがままになってきた。日米同盟は、アメリカの軍事政策による核兵器の核の傘のもとに平和を守られてきたというアメリカ側の思いのもとに今も継続している。鳩山首相が日米対等の関係を、と述べると、アメリカのマスコミは鳩山は反米主義者であると決めつける報道によって新政権を恫喝した。

 日本は、アメリカから独立している国家なのか?

戦後に松川事件をはじめ相次いで米軍の影が見え隠れする謀略事件があいついだ。日本の戦争犯罪、石井731細菌部隊の細菌兵器の生体実験は、米軍にすべての情報をわたすことと引き替えに、石井部隊の戦争犯罪を隠蔽する秘密工作を行うことで政治決着をみた。

 その後も、戦後産業の政策も、アメリカによる貿易の自由化に見られるようにあいついで、アメリカによって日本の国内産業は衰退させられたり、年次対日勧告書によって小泉政権が次々に「新自由主義改革」を強行させれることで゜、国内は格差拡大と日本国民の生存権危機など社会の解体的危機に瀕した。

 そのような背景をもとに、国民は鬱積する不満を鳩山民主党に託して、劇的な自公政権の惨敗という結果となった。

 オバマ大統領は、平和や核廃絶を訴える平和主義者と言えよう。けれど、オバマ氏が立たされている政治的座席は、オバマ自身に反するオバマ政治を執行せざるを得ない立場に追い込まれている。

 民主党連立政権は、各省の大臣が、十分な吟味と内閣としての報告・連絡・相談を行わないままにてんでんばらばらに自己アピールを主張して、重要な国策を思いつきに等しいような展開に走り始めた。鳩山総理が、いかにこれらのちぐはぐな齟齬をきたす各大臣の「意欲的な」言動を統括するかは重要な政権運営となろう。

 その点では、社民党の福島代表が発言しているように、十分な議論や納得いく展開によって国政を進めていく慎重さこそ重要だろう。歴史的な政権交代を意義あるものにするためには、国民には長い目で新政権を見守ることも要請されている。当の民主党連立政権は、もっと連携と慎重さとを臨みたい。

 さて、日本は、アメリカ軍部を含むアメリカ政府に対して、真の友好関係を維持するためにも、発言すべき重要な政治的課題については、堂々と意見を開陳すべきである。いつもおどおどした精神的奴隷のような態度で言いなりにしかならない卑屈な態度に終始すべきではない。
 
 たとえアメリカから圧力と恫喝をかけられても、それが世界の平和と日本の国家主権を危うくするようなアメリカ政策には、平和と諸民族の国家主権に基づいた立場から、堂々と批判すべきである。それはアメリカを敵視することではない。アメリカと対等互恵の立場で議論し、真にアメリカのことを思うような深謀熟慮に満ちた発言を伝えるべきである。
 そのことが、アメリカが国際世論から孤立するような軍事的外交的暴走に走るのを諫めることになる。そのような勇気ある進言を行うことが、日本政府の道義的威信を高め、国際的信頼を勝ち得ていくことにつながる。

 日本政府は、そのような政治的課題をクリアすることによって、国内政治の充実、国内産業の保護育成による雇用の確保と失業解消へと至る道を開拓しうるのではあるまいか。
posted by 風の人 at 09:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 一般
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