2022年05月21日

一刻も早い停戦の実現を:再論「ウクライナ戦争を一日でも早くとめるために」

一刻も早い停戦を実現させるための平和運動が必要です。

再論「ウクライナ戦争を一日でも早くとめるために」憂慮する研究者があらためて訴える
https://www.youtube.com/watch?v=2Q9OnavP0Kw
資料集
https://drive.google.com/drive/folders/1fhFmjw8e5rVxiihs9hAxL0bkMhVkSto2
憂慮する日本の歴史家の会
https://peace-between.jimdosite.com/

以下、発言の要点メモ。

伊東孝之

15:40
– ロシア人のジェノサイド:証拠がない(ICJ)2
– ロシア人に対する法的差別:ウクライナ語は公用語ではなく国家語(役所語)。ロシア語使用に制限なし。住民の一定数以上が他国語の場合その言語での教育可

20:10
C 中立化
– のちにウクライナ自身が当面NATO加盟は望めないので中立化すると言い出す

D 領土獲得
• 目的ではないといっているが、実は最も進展
• 0421ロシア自身がウクライナ領と認めた地方を「独立」させ、属領化(LPRの内相逮捕6など)
• 0403占領した地域でウクライナ時代の自治体首長11名を拉致、自身の首長を任命7
• 0422ヘルソン、ザポリージャ両州をロシアに併合、兵役適齢期の男性を強制的に徴兵8を発表
• 0422中央軍管区副司令官がドンバスから沿ドニエストルに至るベルト地帯併合計画発表9

• ウクライナは当面受動的
– 0224線へのロシア軍撤退12、クリミア・ドンバス不承認13、安全保証つきの中立14、0330ゼレンスキー「祖国戦争」15

24:20
E 3月29日(イスタンブル外相会談)17
– NATO非加盟、EU加盟、安全保証、ドンバスは両首脳で協議、クリミアは15年間先延ばしで解決(この提案にロシア側、特にラブロフは好感)
F 4月20-21日(オンライン)、ラブロフが突然中断18
– 4月27日プーチン:クリミア・ドンバスのロシア領化を承認することなしにウクライナの安全保証なし19(停戦交渉中士の宣言)

28:00
ゼレンスキー
– 0225中立的地位は受け入れてもよいが、ウクライナの安全を誰が保証するのか20
– ブダペスト覚書(1995年、ウクライナ非核化の代わりにウクライナの安全を保障)+NATO条約5条(「無料のNATO」)
• 0329イスタンブル交渉で正式提案
– 保証国:国連常任理事国+ドイツ、イタリア、トルコ、イスラエル、ポーランド、カナダ21
– ロシア側も好意的。ベラルーシを追加する提案も22
– 多くの国は原則同意したが、米英は消極的23(米国に事前相談ないからというのが伊東さんの見立て)
– ブチャ事件後ゼレンスキーに迷い、混乱(0416)2


松里公孝

35:40
4月3日にはブチャ事件が起こったため、ウクライナ側は3月29日和平交渉の内容をちゃぶ台返しした。もちろん、ブチャ事件とちゃぶ台返しの間の因果関係は、どちらが原因で、どちらが結果だったかはわからない。

40:00
戦争の第1局面においてはロシア軍の戦力がウクライナ全土に分散していたため、@を包囲掃討する作戦は進められたが、Aはほぼ手つかずのままであった。ただでさえ乏しい戦力を南にとられたドネツク人民共和国の中央部(ドネツク、ゴルロフカ、マケエフカなど)が、Aからいいように砲撃され、甚大な被害を被った。

資料3ページ
4月21日、マリウポリに残存する約2000名のウクライナ軍戦闘員がアゾフ製鉄所の地下に立て籠った時点で、ウラジミル・プーチン露大統領はマリウポリ戦の事実上の終了を宣
言し、残存ウクライナ軍を地下に封じ込めて降伏を待つ作戦に切り替えた。「ロシア軍がアゾフ製鉄所で化学兵器を使った」という演出を米国が準備しているという諜報情報が寄せられたため、力攻めを止めたとも言われる。

49:10
2月21日の第1回目の宣戦布告(ドンバス2共和国の承認宣言)において、プーチンは、40人以上の犠牲者を出した2014年5月2日のオデサ労働組合放火事件に特に言及し、ウクライナの司法は、その犯人を一人も逮捕していないが、「自分たちは犯人の名を知っているので、必ず逮捕して裁判にかける」と決意表明した。つまり、オデサ労働組合放火事件を蒸し返して処理するということが、ロシアの一種の戦争目的になってしまったのである。


伊勢崎賢治

55:00 ハーグ条約・開戦法規において武器の供与は中立性を破るものと定義。国連憲章で集団的自衛権は認められている。武器支援すると交戦国になるのか(ロシア軍が武器支援国を攻撃できるのか)、日本にとっても課題(武装名目でヘルメットと防弾チョッキを送っている)。
1:00:20 第2次中東戦争で国連総会が56年に国連緊急監視団(武装)を創設。根拠は国連総会special emergency sessionUFP(平和への結集)決議。
1:06:50 朝鮮国連軍armistice comission。50年安保理決議、ソ連欠席、25カ国参加、今でも存在。朝鮮国連軍地位協定が日米地位協定に連動。
1:09:50
停戦監視への脅威:当事者の指揮命令系統の脆弱性
• 非正規軍事要員のプレゼンス:義勇兵、傭兵(双方、特にウクライナ側?)
【紛争構造】が複雑化する前に
1:13:00 
• 世論形成【停戦は事実行為であり、戦争の結果とは無関係である】:帰属問題や民族自決権問題の合意条件や、戦争犯罪の取扱いは、むしろ戦闘行為が中断されてから時間をかけて議論されるべきものである。
•特に戦争犯罪について:「不処罰の文化Culture of Impunity」
• 停戦の実現ための人権問題の“棚上げ”

1:18:50 中立な戦争犯罪調査。ロシアが認める第三国の参加を認める工夫が必要。推定無罪の原則。開戦法規と交戦法規は違う。交戦法規上、免責される戦争犯罪はなく、紛争当事者は平等。やった当事者に第1次裁判権がある。それが機能しない場合に国際戦犯法廷。ロシアに軍事裁判の実施を求めるべき。


羽場久美子

1)1990年2月9日、当時のアメリカ国務長官ジェイムズ・ベイカーがソ連のゴルバチョフ書記長に対して、ソ連がドイツ再統一を認めるのであれば、NATOは東側に1インチも
進まない、と語る。:90.2.9.ゴルバチョフ・ベーカー会談記録。
「もし米国がNATOの枠組みでドイツでのプレゼンスを維持するなら、NATOの管轄権もしくは軍事的プレゼンスは1インチたりとも東方に拡大しない。そうした保証を得るこ
とは、ソ連にとってだけでなく他のヨーロッパ諸国にとっても重要なことだ」
ゴルバチョフはつい最近も語っている。

NATO:ブカレストサミット宣言(2008.4.3.)に、ウクライナ・ジョージアへの拡大明記(ドイツ、フランスは反対したが。。)
https://www.nato.int/cps/en/natolive/official_texts_8443.htm
第23項NATOは、NATOへの加盟を望むウクライナとジョージアの要求を歓迎する。
我々は本日、これらの国がNATOの加盟国になることに合意した。両国は同盟の活動に貴重な貢献をしてきた。ウクライナとジョージアの民主的改革を歓迎し、5月のジョージア
での自由で公正な議会選挙を楽しみにしている。MAP(加盟のための行動計画)への参加は、ウクライナとジョージアが直接加盟国になるためのステップだ。本日、これらの国のMAP(加盟のための行動計画)参加を支持することを明確にした。故に我々は今、彼らのMAP参加に関し未解決の問題に対処するため高度な政治的レベルで双方との集中的な関与への移行を開始する。我々は2008年12月の会合で各外相に進捗状況の最初の評価を行うよう要請した。
(2008.4.NATOはウクライナ、ジョージアのNATO加盟に向けMAPを開始し全面的支援に入ろうとしていた)→
2008.8 4か月後にはロシアは、グルジアに侵攻(5日間戦争)、南オセチア・アブハジアに「中立地帯」の軍駐留。(こちらには米軍、必ずしも関わらず)

1:39:00
1)キッシンジャー:2014.3.5ワシントンポスト、「ウクライナ、二つの異なった部分からなる。ガリツィアが東を支配しようとすれば戦争になる。フィンランドのような、戦争の緩衝地帯にすべき。」
2)ミア・シャイマー:ウクライナへのNATO東方拡大は、1962年のキューバへの核ミサイル配備、キューバ危機と同じ。ウクライナのような東西のはざまの地域は中立化が望
ましい。(軍事リアリストからの提言)
にもかかわらず、NATO拡大を促進し、武器供与を行ったのは、バイデンの意図。
<着々と代理戦争準備>:ロシアが入る前から。ジョージアの教訓

1:40:10 ヌーランド国務次官、マイダン革命前にウクライナの次期首相はヤツェニュクにするとの電話を盗聴され(「Fuck the EU」発言を謝罪する形で盗聴を認める)、実際にヤツェニュクが首相に就任。
1:48:28 トルコが3月末に停戦提案(エルドアン大統領6項目+ゼレンスキー、中立化を承認。
1)ウクライナの中立化、2)非武装化、安全保障3)非ナチ化、4)ロシア語の使用制限の解除、5)東部ドンバス地方の(一部)の帰属、6)クリミア半島の帰属。)ゼレンスキーは5、6以外は認めたが、直後にブチャの集団殺戮、停戦交渉中断、双方が停戦交渉は継続すると表明する一方、米国は「戦争は数年継続される」(停戦を希望しない)。


和田春樹

再論「ウクライナ戦争を一日でも早くとめるために」憂慮する研究者があらためて訴える - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=2Q9OnavP0Kw
資料集
https://drive.google.com/drive/folders/1fhFmjw8e5rVxiihs9hAxL0bkMhVkSto2
憂慮する日本の歴史家の会
https://peace-between.jimdosite.com/

2:04:57 2021年10月ウクライナ国境のロシア軍が10万人規模に増強されるも、バイデンは調停に乗り出さず。

バイデンの3月27日ワルシャワ演説「われわれはこの戦いに比較的長い期間(for the long haul)コミットしなければならない」
「こんにちのキエフ、メリトポリ、ハルキーフの闘いは長い闘争の最新の戦闘なのだ。」56年のハンガリー、56年と81年のポーランド、68年のチェコ、89年
のベルリンの壁の崩壊、人民は勝った。「しかし、民主主義のための戦闘はおわるこことにはならなかった。冷戦の終了では終わらなかった、最近30年、専制勢力は全
地球的に復活した。…今日ロシアは民主主義を絞め殺し、他の地でも、その母国だけでなくそうしようと企てた。・・・プーチンはあつかましくもウクライナを「非ナチ
化」しようとしていると言っている。」「犯罪者は NATO の拡大をロシアを不安定化することを狙った帝国的計画だと描き出そうとしている。」「帝国の再建をねらう独
裁者は人民の自由への愛を決して消し去ることはできない。・・・ウクライナはロシアの勝利の獲物にはならない。自由な国民は希望のない、暗黒の世界に生きることを
拒否する。…神のご加護により、この男は権力にとどまることはない。」

2:13:00 2022年3月29日 イスタンブールで停戦協議、ウクライナ中立化の条件として自国の安全の保障のための枠組みを提案。クリミアの地位については15年間の交渉、ド
ンバス東部については大統領会談で解決など(ウクライナ停戦への希望)

2:17:00 4月25日 オースチン長官発言「ロシアがウクライナ侵攻のようなことをできない程度に弱体化することを望む」(米国の戦争目的の再定義)

【5月4日 AFP】
米大統領、対戦車ミサイル「ジャベリン」工場視察
https://www.afpbb.com/articles/-/3403233
ジョー・バイデン大統領(5月3日、ロッキード・マーティンの対戦車ミサイル「ジャベリン」製造工場)「さらに、ウクライナとウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領率いるロシアとの戦いは、民主主義国と中国などの専制主義国との戦いの戦線の一つにすぎないと指摘。ウクライナ紛争は中国の習近平(Xi Jinping)国家主席の「民主主義は時代遅れ」との主張が間違っていたことを示すもので、民主主義の今後を占う最初の戦いだと述べた。」

松里公孝

2:45:33 4月23日、ロシア連邦捜査委員会がドンバスの親ロシア側で2600人の民間人が殺害されたと報道。全体で14000人の被害者はロシア、ウクライナ、国連が合意。14年から拷問、集団墓地があったので、昨年初めから人民共和国側が発掘。ロシアのテレビは大騒ぎせず、報道はDNR(人民共和国)のテレビで。戦争正当化のため発掘。犠牲者のほとんどは14、15年。ドンバス市民からすれば自分たちを守ってくれるはずの今回の戦争で14、15年に戻った感じ。2016年、ロシアが国際刑事裁判所(ICC)から抜けた。国際司法で争う発想がない。米中も元々入っておらず、大国はその発想がない。英国やスウェーデンがやっているのはtribunal見世物裁判。本物の国際司法で何年もかけて裁判をする必要がある。ドンバス側での戦争犯罪記録は弁護士グループが手弁当で行っている。ロシアは16、17年に、NGOが西側から資金をもらっているのはけしからんということで、NGOを援助するための大統領基金を創設。ドンバスの弁護士グループがそれに応募したが落ちた。ICC抜けた直後なので、方針の違いから却下されたのだろう。


伊東孝之

2:53:48 ICJがドンバスでのジェノサイド(時間をかけての系統的な大量虐殺)の証拠がないと酒井啓亘(京大、国際法)が雑誌『世界』で指摘(ICJはジェノサイドがウクライナ領土内で行われたとのロシア連邦の主張を裏付ける証拠を有していない)。ジェノサイドは政治用語、ブチャ事件はジェノサイドではない。OSCE調査でも同様と聞いている。ロシア側はOSCE監視団がうるさいので最後は全員逮捕した。2014年5月2日のオデッサの悲劇、いまだに犯人が分かっていない。ウクライナはいい加減で、数え切れない事件が迷宮入りしている。ロシア側によるウクライナ人殺しもあったろうと推測。マリウポリでこれまで死んだ「5万人」(太田:間違いと思われる)のほとんどはロシア系。


羽場久美子

2:56:45 多くの知識人がブチャ事件(犠牲者403人)をナチスドイツによるジェノサイド(600万人)に準じる戦争犯罪と指摘。BBCが独自にビデオを入手し、Googleマップと音声を分析*。ウクライナのクレバ外務大臣が調査を約束。

*ウクライナ軍がロシア兵を殺害? 投稿動画をBBCが分析 - BBCニュース
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-61022775
「路上に倒れている2人は白い腕章を着けている。これは、ロシア兵が身分を示すために、ウクライナの一部で使っているものだ。赤とオレンジの腕章を使うこともある。ただ、地域によっては民間人が白い腕章の着用を勧められていると報じられている。」
(攻撃側)「兵士の何人かが着ている軍服には、青の腕章やウクライナ国旗のワッペンが見てとれる。これらは通常、ウクライナ軍であることを示す。だが、身元を証明するものではないことは明らかだ。」


伊勢崎賢治

2:58:50 開戦法規(国連憲章51条)にwarという言葉はなく、armed attackがあった時に自衛権云々と書いてある。人道法上、parties to armed conflicts(紛争当事者)の戦争犯罪が規定されている。訴追において、戦争と特別作戦の名称の違いは意味がない。3月16日のICJ暫定措置においてジェノサイドの有無について言っていない。東部のジェノサイドを根拠に侵攻はいけないとのウクライナの訴えにICJが答えた中で、ジェノサイド認定についてはICJに管轄権があると回答。ウクライナ、ロシアともジェノサイド禁止条約を批准しているが、日本は批准していない。


羽場久美子

3:08:40 NATOがセルビア空爆で劣化ウラン弾を使用してイタリア兵が被爆したので、欧州が猛反発。ウクライナを潰すのではなく支配したいロシアが欧州への核使用はしないだろう。むしろ米国とウクライナがウクライナ東部に生物化学兵器研究所を作ろうとしていた問題でヌーランドが火消しをしていたが、これから追及すべき。欧州はロシア排除を考えていない。トルコなど米国以外では停戦の方向。フランスはプーチンと15回にわたり電話会談、ドゴール型の解決策を探る可能性。インドネシア、G20会合でロシア排除はいかんと米国に言明。

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太田光征
posted by 風の人 at 15:03 | Comment(0) | TrackBack(0) | ウクライナ危機

2022年05月15日

バイデン「NATOの拡大はロシアの敵対的な反応を招く」/米国民主党のセス・モールトン下院議員「我々はロシアとの代理戦争をしている」

バイデン大統領とその周囲の発言からして、米国がウクライナ戦争を利用し、ロシア軍の撤退という大義を超えて、対中国戦争を視野にロシアの弱体化を狙っているのだと見なければ、平和運動の方向性についての判断を誤ります。

ウクライナ危機の克服においては、ロシア軍の撤退に加え、ドンバス内戦(ゼレンスキーも親ロシア地域の住宅地に砲撃している)の終結、米ロ代理戦争の終結という、少なくとも3つの目標を掲げなければならないでしょう。

侵略戦争反対だけのスローガンを掲げたウクライナ応戦支援運動は、ドンバス内戦と米ロ代理戦争を無視するもので、イスラエル化しているゼレンスキー体制*1を擁護し、米国による大義を超えた戦争対応を応援する側面を持つことになります。

ウクライナ戦争の継続は、ウクライナの反戦活動家と親ロシア派市民に対する弾圧*2を維持・強化するものです。ウクライナ応戦支援ではなく、ドンバス内戦を含む戦争の停戦を一刻も早く実現させる必要があります。

*1 ゼレンスキー、戦後のウクライナはイスラエルを模倣し、「リベラルな欧州国家」とはならないと語る(ハーレツ紙)
Zelenskyy says post-war Ukraine will emulate Israel, won’t be ‘liberal, European’ - Europe - Haaretz.com
https://www.haaretz.com/world-news/europe/.premium.HIGHLIGHT-zelenskyy-says-post-war-ukraine-will-emulate-israel-won-t-be-liberal-european-1.10721395
「ウクライナの指導者らが戦後の不安定なウクライナの像を描き始める中、「映画館、スーパーマーケット、武器を持った人々」の中に兵士がいることがウクライナの未来だと、ゼレンスキーは記者団に語った。」
*2 ウクライナ、ロシアに協力する「裏切り者」を狩り出す(AP通信)
Ukraine hunts down 'traitors' helping Russia
https://www.youtube.com/watch?v=OR_E8dvyaOI
「2月24日のロシアによる侵攻後、ウクライナ議会が迅速に制定し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領が署名した反共謀法の下、ハルキウ/ハリコフ地域だけで400人近くが拘束されている。」
*2 ウクライナのすさまじい軍国主義と反戦運動弾圧:ウクライナの政治家・左翼数百人が誘拐・拘束され行方不明か
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/486916363.html

以下、バイデン大統領とその周囲の発言から、目立ったものをまとめておきます。

(1)バイデン大統領「こんにちのキエフ、メリトポリ、ハルキーフの闘いは長い闘争の最新の戦闘なのだ」(3月27日)

バイデンの3月27日ワルシャワ演説「われわれはこの戦いに比較的長い期間(for the long haul)コミットしなければならない」
「こんにちのキエフ、メリトポリ、ハルキーフの闘いは長い闘争の最新の戦闘なのだ。」56年のハンガリー、56年と81年のポーランド、68年のチェコ、89年のベルリンの壁の崩壊、人民は勝った。「しかし、民主主義のための戦闘はおわるこことにはならなかった。冷戦の終了では終わらなかった、最近30年、専制勢力は全地球的に復活した。…今日ロシアは民主主義を絞め殺し、他の地でも、その母国だけでなくそうしようと企てた。・・・プーチンはあつかましくもウクライナを「非ナチ化」しようとしていると言っている。」「犯罪者は NATO の拡大をロシアを不安定化することを狙った帝国的計画だと描き出そうとしている。」「帝国の再建をねらう独裁者は人民の自由への愛を決して消し去ることはできない。・・・ウクライナはロシアの勝利の獲物にはならない。自由な国民は希望のない、暗黒の世界に生きることを拒否する。…神のご加護により、この男は権力にとどまることはない。」(和田春樹氏の4月29日再論「ウクライナ戦争を一日でも早くとめるために」資料集*から)

*再論「ウクライナ戦争を一日でも早くとめるために」憂慮する研究者があらためて訴える - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=2Q9OnavP0Kw
*資料集
https://drive.google.com/drive/folders/1fhFmjw8e5rVxiihs9hAxL0bkMhVkSto2
*憂慮する日本の歴史家の会
https://peace-between.jimdosite.com/

(2)バイデン大統領「ウクライナとロシアとの戦いは、民主主義国と中国などの専制主義国との戦いの戦線の一つにすぎない」(5月3日)

米大統領、対戦車ミサイル「ジャベリン」工場視察
https://www.afpbb.com/articles/-/3403233
「さらに、ウクライナとウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領率いるロシアとの戦いは、民主主義国と中国などの専制主義国との戦いの戦線の一つにすぎないと指摘。ウクライナ紛争は中国の習近平(Xi Jinping)国家主席の「民主主義は時代遅れ」との主張が間違っていたことを示すもので、民主主義の今後を占う最初の戦いだと述べた。」

(3)オースティン米国防長官「ロシアが、ウクライナ侵攻のようなことをできない程度に弱体化することを望む」(4月25日)

米国防長官「ロシアの弱体化を望む」 軍事支援めぐり同盟国と協議へ [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASQ4V34TLQ4VUHBI005.html
オースティン米国防長官(4月25日、ポーランドのウクライナ国境近く)「ロシアが、ウクライナ侵攻のようなことをできない程度に弱体化することを望む」

(4)バイデン「NATOの拡大はロシアの敵対的な反応を招く」(1997年6月20日)

ジョー・バイデンは1997年6月20日、米国大西洋評議会でNATOの拡大がロシアの敵対的な反応を招くと発言していた。

Video of Joe Biden Warning of Russian Hostility if NATO Expands Resurfaces
https://www.newsweek.com/joe-biden-resurfaced-clip-russia-baltic-states-1997-video-1685864

「NATOとロシア、米国とロシアの関係からして、(NATOへの)加盟について短期的に最も仰天させることは、加盟する国の利点や準備とは関係なく、今バルト諸国に加盟を許可することだろう。軍事面ではないが、猛烈かつ敵対的なロシアの反応という点で情勢を変化させることがあるとすれば、そういうことだ。」
ところがバイデンは、ロシアからの反発を警戒しながらも、いずれロシアもNATOの拡大が、実は安全保障の面で自らの利益になると楽観視していると主張した。

(5)米国民主党のセス・モールトン下院議員「我々はロシアとの代理戦争をしている」

米国民主党のセス・モールトン下院議員「我々は単にウクライナを支援するための戦争をしているのではなく、基本的に代理戦争のようなものを通じてだが、ロシアと戦争している。勝利することが重要だ。」(フォックス・ニュース)

“We’re not just at war to support the Ukrainians. We’re fundamentally at war, although somewhat through a proxy, with Russia, and it’s important that we win.” − Rep. Seth Moulton, D-Mass.
https://twitter.com/ryangrim/status/1523047697451786240


太田光征
posted by 風の人 at 14:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | ウクライナ危機

2022年05月07日

ストップ・ザ・ウォー連合のウクライナ反戦声明に賛同した英労働党議員に対する党内弾圧:小選挙区制とそれが支える二大政党制≒戦争屋寡頭制の危険性

阿部治正さんの5月5日付フェイスブック記事をご紹介します。小選挙区制とそれが支える二大政党制≒戦争屋寡頭制(オリガーキー)の危険性を浮き彫りにするものです。世界平和を実現するためにも、小選挙区制の廃止を世界の政治運動の最重要課題にしましょう。


太田光征



阿部治正さんの5月5日付フェイスブック記事
https://www.facebook.com/harumasa.abe.5/posts/5130641143694246

英国の左派サイト「ソーシャリストワーカー」から記事を一つご紹介。英国労働党による党内「左派議員」の反戦運動に対する抑圧・禁止の恫喝と、それに屈する動きを報じています。現在のキア・スターマー党首の下での英国労働党は、第2保守政党というのが実態なので、不思議でも何でもない話です。「米国との核抑止力協議の活用」を唱え始めた日本の最大「野党」も他人事ではありません。「左派議員」が署名をしたことを咎められているStop The War Coalition の声明も付します。

ニュース 2022年5月4日(水)2084号
■英国労働党首スターマーは、NATOの戦争屋を支持しない左派議員を除名する可能性がある
労働党党首は、アメリカ帝国主義への忠実な支持と、それが世界中にもたらす恐怖を証明しようと決意している。
By ニック・クラーク
Starmer could expel left MPs who don’t support Nato warmongers
https://socialistworker.co.uk/news/starmer-could-expel-left-mps-who-dont-support-nato-warmongers

労働党のキーア・スターマー党首は、NATO軍事同盟への「揺るぎない支持」を表明しない党内左翼議員を除名する可能性を示唆した。労働党の左派議員は、NATO批判をやめ、反戦運動を放棄することで、すでにスターマー党首に完全に屈服しているにもかかわらず、である。
右翼系ラジオ「タイムズ」のインタビューで、スターマー党首は、過去にNATOを批判した労働党議員に対して行動を起こすかどうか尋ねられた。
スターマー党首は、反ユダヤ主義と反帝国主義を混同しているのが注目されるが、「反ユダヤ主義のような問題に関しては、国会議員に期待することは非常に明確だ」と答えた。そして「ロシアの侵略とNATOの行為との間に、誤った等価性を主張する者がいることに関しても」と。
スターマーの労働党が、NATOとアメリカ帝国主義に完全に忠実であることを、またしても証明しようとしたのである。このことは、自分の党の議員に反対する行動をとる可能性があることを意味するのかと追及され、彼は「そうだ」と答えた。
「これらは、労働党の根幹であり、労働党の中心である原則だ。そして、私は労働党が選挙民に向き合うことを決意しており、過去に多くあったような内部の駆け引きや議論には向き合わないと考えている」。
スターマーは、ロシアがウクライナに侵攻した2月に、Stop the War Coalitionの声明に署名した11人の左翼労働党議員を脅した後のことである。同声明は、ロシアのウクライナ侵攻を非難することから始まっている。しかし、この戦争はNATOの東ヨーロッパへの拡張の産物であることも正しく指摘している。
スターマー氏は、11人全員が声明文から名前を消すか、労働党議員として国会に出席することを認めないかのどちらかだと要求した。彼は後に、「1時間以内にすべての署名が削除されたのは驚くべきことだ」とほくそ笑んだ。
しかし、右翼議員やその支持者にとっては、それでも十分ではなかった。彼らはスターマー党首に左派を完全に排除するよう要求している。ある無名の "党関係者 "はタイムズ紙に、「キーア・スターマーはあの時、彼らを追い出すべきだった」と語った。「彼らを引き下がらせるだけでは十分ではない」。
また、スターマー氏はその主張を「知的には受け入れている」し、労働党の与党全国執行委員会の支配力を使って実現させることができる、と語った者もいる。労働党議員は、反戦的政治が少しでも見えれば、右翼マスコミが保守党と一体となって労働党に議会不適格の烙印を押すことを恐れている。だから、左派を完全に排除することで、労働党の価値を証明しようと必死なのだ。
別の無名の情報筋がタイムズ紙に語ったように、「次の選挙で、保守党は、アレックス・サルモンドのポケットの中にいるエド・ミリバンドを問題にしないだろう。リチャード・バーゴンのポケットの中にいるキーア・スターマーになるだろう。そんなリスクは冒せない」。
ある影の閣僚は、バーゴンの代わりにジョン・マクドネルを使うことを除いて、同じことを主張した。さらに、「保守党がそのような主張をするならば、少数政権になる可能性すらない」とも述べた。
労働党左派の「党に残留して戦う」戦略の危険性を示すもう一つの例である。左派議員は、労働党に残るために、最も重要な時期に戦争への反対を取りやめた。
今、彼らはいずれにせよ除名に直面している。さらに悪いことに、彼らは保守勢力が反戦運動に対する攻撃の道筋をつける手助けをした。NATO支持者が反戦運動家をロシア支持だと非難する中、労働党の政治家や労働組合幹部で彼らを擁護しようとする者はほとんどいない。
ジョン・マクドネルは支持者たちに、NATO批判をやめてウクライナを助けるために「団結」するよう言った。労働党のダイアン・アボット議員は、「労働党の誰もが防衛同盟であるNATOを支持している」と主張した。残念な結末である。そうならないためには、労働党を離党し、自由にNATOを批判し、戦争に反対するキャンペーンを行うことである。

■ウクライナの危機に関するストップ・ザ・ウォー・ステートメント
2022年2月18日
List of Signatories: Stop the War Statement on the Crisis Over Ukraine | Stop the War
https://www.stopwar.org.uk/article/list-of-signatories-stop-the-war-statement-on-the-crisis-over-ukraine

ストップ・ザ・ウォーは、ウクライナをめぐるいかなる戦争にも反対し、この危機は、ウクライナ国民の自決権を認め、ロシアの安全保障上の懸念に対処する基盤の上に解決されるべきであると考える。
私たちの焦点は、このエピソードを通じて火に油を注いだ英国政府の政策にある。この立場を取るにあたり、私たちはロシアとウクライナのいずれの政権の性質や行動をも支持するものではない。
英国政府は、ウクライナ政府が停止を要請するほど、戦争の脅威を継続的に語ってきた。
フランスやドイツの政府とは異なり、危機に対する外交的解決策を何ら提案することなく、ただ妨害行為に終始している。
実際、ベン・ウォレス国防長官は、平和的解決を求める人々を「ミュンヘンの再来」とまで非難している。
それどころか、英国政府はウクライナに武器を送り、東欧にさらに軍隊を配備した。この動きは、緊張を煽り、ロシアの懸念を軽んじる以外の何物でもない。
また、ウクライナにはNATOに加盟する「主権的権利」があると宣言したが、NATOや他の軍事同盟に加盟する権利など存在しないのだ。
英国は政策を変更し、対立ではなく、平和のために働き始める必要がある。
ストップ・ザ・ウォーは、ロシアとウクライナは、両国がすでに署名したミンスク2協定に基づいて、両者間の緊張を外交的に解決するべきだと考えている。
NATOは東方への拡張を中止し、すべての国家と国民のニーズを満たすヨーロッパのための新しい安全保障協定にコミットすべきであると考える。
私たちは、NATOが防衛同盟であるという考えに反論する。米英によるイラク攻撃は言うまでもなく、過去一世代にわたるアフガニスタン、ユーゴスラビア、リビアでの記録は、明らかにそうでないことを証明していると考えている。
私たちは、ヨーロッパにおける新たな軍備管理協定に到達し、大陸全体における核軍縮に向けて前進するためのあらゆる努力を支援する。
私たちは、反戦運動全体が、英国政府の攻撃的な姿勢に挑戦することを基本に団結し、何よりもその目的にキャンペーンを向けるよう強く求める。

(以上)
posted by 風の人 at 17:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | 小選挙区制

【署名あり】イスラエルの裁判所がパレスチナのMasafer Yatta村住民の退去(民族浄化)を許可

(1)署名の呼び掛け

イスラエルの裁判所がパレスチナの #MasaferYatta 村住民の退去(民族浄化)を許可。米国議員あて署名の呼び掛け。日本の国会議員も動いて。

https://twitter.com/JvpAction/status/1522643536058986496
「行動を起こそう 📢 イスラエルの裁判所は #MasaferYatta で1000人以上のパレスチナ人の民族浄化を承認したばかりで、今にも追放が始まりそうだ。
アメリカの政治家はこれを止める力を持っているが、あなたが要求しない限り止めないだろう。」

署名ページ(日本からも署名可能):
https://act.jewishvoiceforpeace.org/a/stop-mass-expulsion-masafer-yatta?sourceid=1001730

私の場合、携帯電話番号欄に日本国番号の「+81」を入れると、署名が可能でした。

(2)奈良本英佑さんのメールを転載

奈良本です。重複ご容赦ください。転送歓迎です。

ウクライナ戦争の影に隠れて、日本ではほとんど報道されていないようですが、イスラエル占領下の西岸地区で、パレスチナ人が土地と住居を追われようとしています。ヘブロンの南、Masafer Yattaでは、14の村のうち8つの村を破壊、多数の住民と家畜を追い出し、イスラエル軍の射撃演習場をつくる計画が進行中です。イスラエルの「独立記念日」を前に、同国最高裁は、住民の不服申し立てを退け、この乱暴な政策を支持しました。

この計画で1800人〜1200人のパレスチナ人が、家畜とともに追い出されます。詳しくはHaaretz、のAmira Hass記者の以下の記事をお読みください。

《Analysis | High Court Justices Know Israel Won’t Face Sanctions Over Masafer
Yatta Evictions》

“The decision was released on the eve of Independence Day, when the Jews
celebrate the founding of the State of Israel and Palestinians grieve for the loss
of their homeland”

全文は:
https://www.haaretz.com/israel-news/.premium-high-court-justices-know-israel-won-t-face-sanctions-over-masafer-yatta-evictions-1.10782233?utm_source=General+Mailing+List&utm_campaign=2ffcea407d-EMAIL_CAMPAIGN_2022_05_06_08_42&utm_medium=email&utm_term=0_586030c60d-2ffcea407d-58732313


太田光征
posted by 風の人 at 17:11 | Comment(0) | TrackBack(0) | パレスチナ

2022年05月02日

ウクライナ情勢分析:学者の論考と元軍事情報将校の解説

宇山智彦さんの論考はバイアスの危険性が一般にあることについての警鐘としては理解できますが、ウクライナの危険性についての認識が不十分であると感じます。

なぜプーチン政権の危険性は軽視されてきたのか
−国際情勢分析と認知バイアス−
宇山 智彦(北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター)
https://src-h.slav.hokudai.ac.jp/center/essay/PDF/20220413.pdf

宇山さんの意見で気になったところを3つだけ指摘しておきたいと思います。

宇山さんの意見その1「確かに、米欧諸国がロシアの縄張り意識・帝国意識の根深さ・扱いにくさを十分認識していたのか、それを考慮したうえでロシアに対する最適な政策をとれていたのかは、検討する余地があろう。」

ウクライナの平和主義者ユーリー・シェリアジェンコ氏の言葉*1を借りれば、「大国は暴力文化によって競争し、覇権的支配権/統治権の間で合意を行わないという残酷な非人間的合意により、核を発射しないかもしれない程度の損害で互いに対する限定的な殴り合いで利益を得ている」のであって、宇山さんがロシアの誤りを正すという米欧諸国の方針を是認しているのだとすれば、かなりの的外れです。日本記者クラブの「ウクライナ」シリーズレクチャーの講師陣に見られる傲慢さ*2と同じでしょうか。この際必要なのは、米国を含む全当事者が反省をしての包括的な和平交渉*3です。今現在の米欧諸国のままでは解決できません。

*1 平和主義者ユーリー・シェリアジェンコ氏の目を通したウクライナ(ネオナチ、プロパガンダ、ロシア人憎悪全体主義、戦争犯罪調査など)
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/487462119.html
*2 日本記者クラブの「ウクライナ」シリーズレクチャーの危うさ
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/486245987.html
*3 ウクライナのユーリー・シェリアジェンコ氏:すべての側が戦争を煽ってきた。包括的な和平交渉だけが戦争を終わらせることができる(2022年3月22日付デモクラシー・ナウ!)
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/486314475.html

宇山さんの意見その2「しかし、ロシアのウクライナ侵攻は、特定の政権やその行為に向けられた米欧の軍事介入と異なり、実質的な領土拡張や相手国の恒久的な属国化を狙っているという意味でより悪質である。」

軍事介入の悪質さを比較(相対化)してどうするのでしょうか。イラク全体をめちゃくちゃにしたのが米国で、確率論的に米国は今後もどこかで永続的に戦争を仕掛けます。

宇山さんの意見その3「他方で心配なのは、ロシアによる侵略に米欧日が団結して対抗するのは当然だとしても、それによって米欧中心主義が再び強まってしまわないかということである。ロシアの米欧に対する不満は、ロシアが世界において特別な権利を持つべきなのに持たせてくれないという身勝手なものであるが、世界には米欧から軍事介入や差別を受けてきたことに不満を持つ国々や人々が少なからず存在し、そのことが国際秩序の不安定要因ともなってきた。米欧や日本は常に正しく善であるというのもまた確証バイアスである。米欧への批判的な目を、ロシアの正当化のためではなく、中小国の権利と安全がよりよく保障される国際秩序の構築のために使っていきたいものである。」

米欧日は平和実現のために動いているのではありません。火に油を注いでいるだけです。おそらく単純な「敵の敵は味方」という純軍事的な皮算用的期待があるのでしょう。

「ロシアの正当化」というありもしない目的を持ち出しています。これがこの間、多くの方にとっての神話となっています。なぜこうした神話を創り出すのか、不思議に思ってきました。

現段階での私の仮説は、人が正邪を判別するのが自然であると思われる対象(ロシア、ウクライナ、米国)が関与する事象(ロシアによる侵攻、ドンバス内戦におけるウクライナ側による攻撃、米国による挑発)について何らかの主張をする場合、同時に憎悪や怒りを伴うことが人間として自然であるから、自分(宇山さん)が感じている憎悪や怒りを自分が邪と思う対象に向けないような主張をする他人は、当該の邪対象を正当化する論を行っているのだろう、ということです。だとすると単純というほかありません。

ウクライナ反戦運動で掲げるべき目標は少なくとも3つ、すなわちロシア軍の撤退(ロシアも不当)、ドンバス内戦の終結(ウクライナも不当)、ウクライナ戦争を利用した東アジアへの戦争拡大の予防(米国も不当)、があります。ウクライナ反戦運動は正邪を判別する評論ではなく、ウクライナ危機を「解決」するための運動であって、米欧への批判はこれら3目標を達成する形での停戦交渉を実現させ、ウクライナ危機を「解決」するために欠かせないものです。

次に、ジャック・ボー氏によるウクライナ情勢の解説をご紹介します。全文を読まれることをお勧めします。

スイスの元軍事情報将校「ウクライナで何が行われ、何が起こっているのかを実際に知ることは可能なのか?」|Kfirfas|note
https://note.com/14550/n/ne8ba598e93c0

<この民兵はMirotvoretsというウェブサイトに関連しており、「ウクライナの敵」を個人情報、住所、電話番号とともにリストアップし、嫌がらせや抹殺ができるようにしている。この行為は多くの国で罰せられるが、ウクライナではそうではない。国連といくつかのヨーロッパ諸国はこのサイトの閉鎖を要求したが、Rada(ウクライナ議会)はこの要求を拒否した。>

常識的な人間が十分な情報に基づいてウクライナを評価すれば、ウクライナという国も既に相当異常です。そう思えないなら、それこそバイアスがかかっています。

ウクライナ危機はまさに「どっちもどっち」で見なければ解決できないでしょう。


太田光征
posted by 風の人 at 23:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | ウクライナ危機