2022年03月28日

ウクライナ危機:アゾフ連隊などウクライナの極右民族主義者の実像

公安調査庁(これ自体が危険組織で、一般的に情報の信憑性は疑ってかかるべき)もウクライナのネオナチと認定しているアゾフ連隊(大隊から昇格したらしい)について、テレビ朝日が連中の主張を放送したと聞き、驚いています。

<2014年,ウクライナの親ロシア派武装勢力が,東部・ドンバスの占領を開始したことを受け,「ウクライナの愛国者」を自称するネオナチ組織が「アゾフ大隊」なる部隊を結成した。>
極右過激主義者の脅威の高まりと国際的なつながり | 国際テロリズム要覧2021 | 公安調査庁
https://www.moj.go.jp/psia/ITH/topics/column_03.html

欧州の極右民族主義者は、いわゆるサッカーのフーリガン(ウルトラス)と重なります。サッカーというリアルな社会現象をウオッチしてきた清義明さんが、西側メディアの報道を基に、アゾフ連隊を含め、ウクライナの極右民族主義者の実像を詳細に紹介しています。

こんな連中を使い、ミンスク合意(停戦協定)を無視し、ドンバス内戦を継続していれば、いずれ大規模戦争に発展する恐れがあることは、誰の目にも明らかだったのです。プーチンがロシア軍を引かせるべきは当然ですが、平和憲法を持つ日本はもちろん、ゼレンスキー自身とゼレンスキーを焚き付けてきた米国・NATOも、停戦を追求して今回の大規模侵攻を終結させる責任を持っています。

私が最初から強調しているように、全当事者が反省をして、新たな(暫定)安保を提案する形で停戦を実現するしかありません。

以下、清義明さんが論座に掲載した記事の見だしです。有料記事ですが、かなりの部分を読めます。

ウクライナには「ネオナチ」という象がいる〜プーチンの「非ナチ化」プロパガンダのなかの実像【上】 - 清義明
https://webronza.asahi.com/national/articles/2022032200001.html
1.「これはロシアのプロパガンダではありません」
白人至上主義者のタトゥー、ナチス髑髏マークのエンブレム
極右が政権や行政や司法に関与、国軍の中核に
ロシアのプロパガンダとは何か
2.ウクライナの英雄となったネオナチフーリガン

ウクライナには「ネオナチ」という象がいる〜プーチンの「非ナチ化」プロパガンダのなかの実像【中】 - 清義明
https://webronza.asahi.com/national/articles/2022032200002.html
3.「ネオナチが正規軍に組み込まれている世界で唯一の国」
右派と極右が入閣、ビレツキーは国会議員になり叙勲
「ウクライナ最強の武器であるとともに、もっとも深刻な脅威か」
4.『白人右翼の聖地』

ウクライナには「ネオナチ」という象がいる〜プーチンの「非ナチ化」プロパガンダのなかの実像【下】 - 清義明
https://webronza.asahi.com/national/articles/2022032200003.html
6.ウクライナの「歴史修正主義」
「国家英雄」の銅像、名前を冠した広場や道路……批判を受けても
7.「東ヨーロッパのナショナリズムは、最悪の病です」
侵攻の口実、戦いの場……プーチンと極右民族主義は相互依存関係か?


太田光征
posted by 風の人 at 11:44 | Comment(0) | ウクライナ危機

2022年03月22日

ウクライナ危機:国連文書に記録されたドンバス内戦での人権侵害

ロシア語話者が多いウクライナ東部のドンバス地域で2014年から内戦が行われています。そこでの人権侵害に関する国連報告書があると聞いていて調べなければと思っていたところ、水島朝穂さんが一部、調べてくれました。調べるといってもGoogleで検索するだけなので、すぐに調べられるのですが。

直言(2022年3月21日)「大本営発表」はロシアだけではない──メディアが伝えないウクライナの「不都合な真実」
http://www.asaho.com/jpn/bkno/2022/0321.html

幾つかの年度にわたって複数の報告書があるのですが、既に仮邦訳のある版もあります。下記の(1)について、日本の公安調査庁もウクライナのネオナチと認定しているアゾフ連隊(大隊から昇格したらしい)に言及のある段落の機械翻訳を、(2)についてざっと見て人権侵害に言及された段落(親ロシアのヴィクトル・ヤヌコーヴィチ大統領を放逐した14年のユーロマイダン革命とオデッサの悲劇などのカ所)を抜粋してご紹介します。

ウクライナ政府および極右民兵組織と(親)ロシア側の双方が攻撃し合っているので、双方に被害があるのは当然です。双方における人権侵害を止めさせる必要があるので、ウクライナ側だけでなく、ロシア側の主張も考慮しなければなりません。今回のロシアによる大規模侵攻の有無に関係なく、ドンバス内戦は続くと思われるので、安全保障の枠組みの立て直しが必ず必要となります。

今回の22年戦争でも報道でクラスター爆弾の使用が取りざたされていますが、報告書(1)では両陣営が「クラスター爆弾や地雷など本質的に無差別な武器」を使用したとの記述があります。

(1)国連人権高等弁務官事務所の「ウクライナの人権状況に関する報告(2015年11月16日〜2016年2月15日)」
Office of the United Nations High Commissioner for Human Rights Report on the human rights situation in Ukraine 16 November 2015 to 15 February 2016
https://www.ohchr.org/sites/default/files/Documents/Countries/UA/Ukraine_13th_HRMMU_Report_3March2016.pdf

(2)ウクライナ人権報告書 2016 年版
https://www.moj.go.jp/isa/content/930003983.pdf

2017 年 9 月国別政策及び情報ノート(ウクライナ:クリミア、ドネツク、ルハンスク)
https://www.moj.go.jp/isa/content/930006247.pdf

2015年9月ウクライナ情勢に関連する国際保護の必要性について−更新 III
https://www.unhcr.org/jp/wp-content/uploads/sites/34/protect/International_Protection_Considerations_related_to_developments_in_Ukraine_UpdateIII_JPN.pdf

2016年8月国別情報及び指針(ウクライナ保護主体及び国内移住を含む基礎情報)
https://www.moj.go.jp/isa/content/930006246.pdf



(1)国連人権高等弁務官事務所の「ウクライナの人権状況に関する報告(2015年11月16日〜2016年2月15日)」
Office of the United Nations High Commissioner for Human Rights Report on the human rights situation in Ukraine 16 November 2015 to 15 February 2016
https://www.ohchr.org/sites/default/files/Documents/Countries/UA/Ukraine_13th_HRMMU_Report_3March2016.pdf

25. Ukrainian armed forces and armed groups maintained their positions and furtherembedded their weapons and forces in populated areas, in violation of their obligationsunder international humanitarian law14. In Shyrokyne, a key location in the ‘grey zone’between the Government-controlled city of Mariupol and the town of Novoazovskcontrolled by the armed groups, OHCHR documented extensive use of civilian buildingsand locations by the Ukrainian military and the Azov regiment, and looting of civilianproperty, leading to displacement15. Prima facie civilian buildings in Donetsk city, such asresidential buildings, a shelter for homeless people16, and a former art gallery17, continuedto be used by armed groups, thereby endangering civilians. In the village of Kominternove,Donetsk region, residents reported that members of the armed groups of the ‘Donetskpeople’s republic’ took over abandoned houses18. In January and February 2016, hostilitiesbetween the armed groups stationed in Kominternove and Ukrainian armed forces stationedin the nearby village of Vodiane19 have endangered the local population20

25. ウクライナ軍と武装集団は、国際人道法の義務に反して、人口密集地に陣地を維持し、さらに武器と部隊を埋め込んだ14。政府支配のマリウポリ市と武装集団が支配するノボアゾフスク市の間の「グレーゾーン」の重要な場所であるシロキンで、OHCHRはウクライナ軍とアゾフ連隊による民間建物と場所の広範囲な使用と民間財産の略奪を記録し、移転につなげた15。ドネツク市では、住宅、ホームレスのためのシェルター16、元アートギャラリー17など、一見したところ民間の建物が武装集団に使用され続け、それによって市民が危険にさらされている。ドネツク州コミンテルノベ村では、「ドネツク人民共和国」の武装集団のメンバーが廃屋を占拠したと住民が報告している18。2016年1月と2月には、Kominternoveに駐留する武装集団と、近くのVodiane村に駐留するウクライナ軍との間の敵対行為19が、地元住民を危険にさらしました20。

61. Ukrainian servicemen captured by the ‘Donetsk people’s republic’ continued to bedetained in poor conditions and subjected to ill-treatment. One soldier, who was visited bya relative, had dark spots on his skin, possibly due to beatings and burning. Another soldier,a member of the Azov regiment who was captured in Shyrokyne in February 2015 wassubjected to electric shock and his teeth were pulled out57. OHCHR is concerned about allegations that captured soldiers have been detained in crowded cells with up to 22 peopleand subjected to physical violence in the former SBU building on Shchorsa Street, as wellas in the building currently used by the ‘ministry of state security’ at 26 ShevchenkoBoulevard in Donetsk city58. During the reporting period OHCHR has been denied accessto detention facilities in Donetsk.

61. ドネツク人民共和国」に捕らえられたウクライナの軍人は、劣悪な環境で寝かされ、不当な扱いを受け続けていた。親族の訪問を受けたある兵士の皮膚には、殴打や火傷によるものと思われる黒い斑点があった。また、2015年2月にシロキンで捕らえられたアゾフ連隊の兵士は、電気ショックを受け、歯を抜かれた57。OHCHRは、捕虜となった兵士が、シチョルサ通りの旧SBUの建物や、ドネツク市のシェフチェンコ大通り26番地の「国家安全保障省」が現在使用している建物で、最大22人の混雑した独房に収容され、身体的暴力を受けているという疑いに懸念している58。報告期間中、OHCHRはドネツクの拘置所への立ち入りを拒否された。

103. On 23 December, OHCHR met with four detainees held in Mariupol SIZO for theiralleged involvement in the 9 May events. They complained that they had been ill-treated bySBU officials and members of the Azov regiment in Mariupol, detained incommunicado forsome time in September 2014, and that evidence extracted through torture was being usedin their trial. They added that they had been denied medical assistance for the injuries sustained through torture, and had ineffective legal representation. Of grave concern is theallegation that the accused suffered reprisals in the form of threats, intimidation and ill-treatment by the SBU after they challenged the admissibility of evidence in court.

103. 12月23日、OHCHRは5月9日の事件への関与の疑いでマリウポリSIZOに拘束された4人の被拘束者と面会した。彼らは、マリウポルのSBU職員とアゾフ連隊の隊員から虐待を受け、2014年9月にしばらく隔離され、拷問によって引き出された証拠が彼らの裁判に使用されていると訴えた。さらに、彼らは拷問によって負った傷のために医療支援を拒否され、効果的でない法的代理人を持っていた。深刻な懸念は、被告人が法廷で証拠の許容性に異議を唱えた後、SBUによって脅迫、威嚇、虐待の形で報復を受けたという報告である。

161. Another major concern is the ongoing presence of military forces in civilian areasand indiscriminate shelling continue to be the main factors endangering civilians, andaffects their ability to access housing, land and property. During the reporting period,OHCHR collected detailed information about the conduct of hostilities by Ukrainian armedforces and the Azov regiment in and around Shyrokyne (31km east of Mariupol), from thesummer of 2014 to date. Mass looting of civilian homes was documented, as well astargeting of civilian areas between September 2014 and February 2015. Residents displacedto Mariupol have received little assistance and information about the status of their homes.Unable to return but for short periods of time to examine the damage, IDPs from Shyrokyneexchange video footage and photographs to try to track the condition of their homes.

161. もう一つの大きな懸念は、民間地域に軍が駐留し続け、無差別砲撃が民間人を危険にさらし、住宅、土地、財産へのアクセス能力に影響を与える主な要因となっていることである。報告期間中、OHCHRは2014年夏から今日まで、シロキーン(マリウポルの東31km)周辺におけるウクライナ武装勢力とアゾフ連隊による敵対行為の実施について詳細な情報を収集した。2014年9月から2015年2月にかけて、民間人の家屋に対する大量の略奪や、民間人地域に対する非標的化が記録された。マリウポリに避難した住民は、ほとんど支援や自宅の状況に関する情報を受け取っていない。被害を調べるために短期間しか戻ることができないため、シロキネのIDPはビデオ映像や写真を交換し、自宅の状況を把握しようと試みている。


(2)ウクライナ人権報告書 2016 年版
https://www.moj.go.jp/isa/content/930003983.pdf

政府は人権侵害行為を犯した政府職員を起訴又は処罰するために必要な措置をほとんど講じなかったため、刑事免責の風潮がまん延する結果となった。人権団体と国連は、政府の治安部隊が犯した人権侵害、特に、ウクライナ保安庁(SBU:Security Service of Ukraine)が行ったと伝えられている拷問、強制失踪、恣意的勾留その他の虐待行為の訴えに関する捜査において重大な欠陥があると語った。2014 年に首都キエフ(Kyiv)で起きたユーロマイダン(Euromaidan:欧州広場の意)発砲事件やオデッサ(Odesa)での暴動事件における加害者は未だに責任を問われていない。

法執行機関は、2013~14 年にキエフでユーロマイダン抗議行動が展開されている間に行われた殺人その他の犯罪に関する捜査を継続した。人権団体は相当な量の証拠が挙がっているにもかかわらず、有罪判決の数が低く抑えられている状況を批判した。また、人権団体は、これらの犯罪に関与していると考えられる政府指導者を捜査するための措置をほとんど講じない一方で、下級役人のみに焦点を当てている検察官を非難した。検事総長室によると、[2016 年]11 月中旬現在、ユーロマイダン関連犯罪で 45 人が裁判所により有罪判決を下され、152 人が公判中であり、190 人が取り調べを受けている。

また、法執行機関は 2014 年にオデッサで発生し、48 人(政府支持者 6 人と地域の自治権拡大支持者 42 人)が死亡した事件の捜査を継続している。自治権拡大を支持した 42 人は労働組合ビル(Trade Union Building)の火災で死亡した。しかし、当局は自治権拡大を求めた人々の犯罪容疑に捜査の重点を置いたため、この火災による死亡事故をほとんど調査しなかった。2015 年に公表された欧州理事会(Council of Europe)報告書により、政府の捜査は独立性を欠いており、検事総長室と内務省(Ministry of Internal Affairs)は組織間でよく調整し合った徹底的な捜査を行わなかったことが明らかになった。

HRMMU は、ドネツク州とルハンスク州の政府支配地域で行われている大量検挙について懸念を表明した。両州には「テロリズムとの闘いに関する法律(Law on CombattingTerrorism)」が適用されている。この法律により、当局は刑事訴訟法の下で認められる証拠よりも低い水準の証拠に基づき逮捕することができるため、これが恣意的な逮捕につながる場合がある。たとえば、HRMMU は[2016 年]3 月付報告書の中で、 2015 年 12 月にドネツク州のクラスノホリフカ(Krasnohorivka)とアブディイフカ(Avdiivka)で行われた SBU の急襲事件を取り上げている。 この急襲で当局は数百人に上る人々を数時間勾留し、武装集団への関与疑惑について尋問した。その後、当局は大半の被勾留者を釈放した。

[2016 年]9 月 15 日現在、HRMMU は戦闘により少なくとも市民、政府軍兵士、武装集団メンバーを含む 9,578 人が死亡したと報告した。 この人数には、2014 年にドンバス地域上空を飛行中に撃墜されたマレーシア航空 MH-17 便に搭乗していた乗客・乗員 298 人が含まれている。この他、紛争勃発以来、300 万人以上の住民がロシアの支援を受けた分離主義勢力が支配するドネツク州及びルハンスク州内の地域を去っていった。[2016 年]11 月 15 日現在、社会政策省(Ministry of Social Policy)は 170 万人の IDP を登録しているが、実際の人数はこれより少ないと市民社会団体は考えている。UNHCR によると、他国にはおよそ 140 万人のウクライナ難民がいた(ロシア連邦に在留するおよそ 100 万人の難民を含む)。

殺害:HRMMU は、ウクライナ東部における紛争を背景として行われている「超法規的、略式的又は恣意的な処刑」に関する[2016 年]5 月 4 日付特別報告書の中で、両陣営が「クラスター爆弾や地雷など本質的に無差別な武器」を用いていることについて強い懸念を表明した。HRMMU は[2016 年]9 月付報告書の中で、両陣営が「居住地域から攻撃を仕掛ける戦いに広く従事しているため、市民は相手陣営からの反撃により被害を受けている」と伝えた。たとえば、[2016 年]8 月 24 日、ドネツク州内の政府支配地域で、ロシアの支援を受けた分離主義勢力が Zolote-4 の村落をめがけて砲撃した際、同村落に住む女性がベッドに入った状態のまま死亡した。


太田光征
posted by 風の人 at 19:01 | Comment(0) | ウクライナ危機

2022年03月19日

ウクライナ危機:停戦実現に向けての必要な視座を提供する声明類

ウクライナ危機:停戦実現に向けての必要な視座を提供する声明類

紹介する声明の発出組織や声明すべての内容に賛同するものとして紹介するわけではないことをお断りしておきます。

英国のユニゾン労組全国執行委員会の声明
https://www.facebook.com/harumasa.abe.5/posts/5006496989441996
【抜粋】
<私たちは、ウクライナの労働者がゼレンスキー政権から独立して行動し、独自の組織を構築し、独立した行動を取ることを支援する。>
<我々は、この紛争の両側で、戦争を利用して国家的および民族的緊張をさらに引き起こすことによって、自国の組織と活動を構築しようとする極右またはファシストグループを非難する。>
<私たちは、ロシアにおける抗議行動の国家弾圧を批判する英国政府の偽善に留意する一方で、警察、犯罪、量刑法案は英国における抗議と民主主義に対する権威主義的制限を作り出すのに役立つだろうと考える。>(太田:日本のサイバー警察局新設と同類のことか)

Peace Philosophy Centre: 国際民主法律家協会の声明 Statements by IADL (International Association of Democratic Lawyers)
https://peacephilosophy.blogspot.com/2022/03/statements-by-iadl-international.html?fbclid=IwAR1CjEX0o8EhJ9yTO1qmwxTQ8hOBZiOM1b0n7_0p8LXrDNqhCqXVTwG5bsg
【抜粋】
<IADLのメンバーである笹本潤弁護士はこう語っていました。「IADLにはウクライナの法律家協会も加盟しており、マイダン革命以来のウクライナ政府による共産党への弾圧・解党に抗議し、裁判傍聴などの支援活動を行ってきた。NATOは国連憲章に違反していると一貫して主張し、NATOの東方拡大や米国による内政干渉もロシア侵攻を招いた大きな要因であると考えるメンバーが、マジョリティを占める」と。>
<国連憲章は、加盟国が憲章を遵守し、攻撃的な行動をやめるよう圧力をかける方法として、安全保障理事会に加盟国に対する経済的強制措置を課す権限を与えている。 これらの措置は、安全保障理事会だけが合法的に課すことができる。憲章は、加盟国がこのような強制的な措置を一方的に課すことを認めていない。>
<IADLは、多くの政府指導者が、このような制裁措置の発動は直接的な軍事行動ではないため、外交と同義であると考えていることに懸念を抱いている。 しかし、外交は紛争を平和的に解決することを当事者に求めるものである。 憲章第33条は、国際平和と安全の維持を危うくするおそれのある紛争の当事者は、まず第一に、交渉、審査、調停、仲裁、司法解決、地域機関や取り決めへの依存、その他自ら選択する平和的手段によって解決を図らなければならないと定めている。交渉は試みられたものの、33条の紛争解決手段は十分に活用されていない。>(太田:ロシアによる国連憲章第2条4項(武力による威嚇又は武力の行使)違反は当然に非難されるべきだが、紛争当事者のその他の条項の不履行による平和構築の消極姿勢とそれを指摘しない国際社会・メディアも批判されるべき)

サパティスタ民族解放軍「ゼレンスキーではなく、プーチンでもない。戦争をやめろ」(3月4日) | ラテンアメリカの政治経済
https://ameblo.jp/guevaristajapones/entry-12730878182.html
【抜粋】
<サパティスタは一方の国家も、他の方をも支持することはない。われわれはこのシステムにたいして、生命のために闘っている人々を支持する。>

キューバ革命政府声明 「キューバはすべての関係方面の安全と主権を保障する解決を支持する」 | Embajadas y Consulados de Cuba
http://misiones.minrex.gob.cu/es/articulo/kiyubage-ming-zheng-fu-sheng-ming-kiyubahasubetenoguan-xi-fang-mian-noan-quan-tozhu-quan
【抜粋】
<2月25日に国連安全保障理事会にて採択されず、総会に提出されるであろうウクライナ情勢についての決議案は、現在の危機の解決策の模索に真に寄与するものとして構想されたものではなかった。
それどころか、均衡を欠いた文案であり、すべての関係方面の正当な懸念を考慮に入れていない。また、紛争の激化を加速させた攻撃的な行動を扇動し、展開した者たちの責任を認めていない。>

ラマポーザ大統領:南アは平和の側にしっかりと立つ
http://shosuzki.blog.jp/archives/87916296.html
【抜粋】
<南アフリカは先週の国連総会で、ロシアとそウクライナとの「紛争」に関する投票を棄権しました。理由は、その決議が意味のある関与の仕方を前提としたものではなく、有効な呼びかけではなかったからです。
国連憲章は、第一に平和的手段によって紛争を解決するよう加盟国に命じています。そして、紛争の当事者は、まず交渉・調査・調停・仲裁などのメカニズムによって解決策を模索すべきであると述べています。このように、結論はまことに明確です。>

シェリアジェンコ 最近のメッセージ
http://shosuzki.blog.jp/archives/87930365.html
【抜粋】
<和平プロセスを促進するために、そしてウクライナの危機を平和的に解決するために、私は、専門家からなる独立した公的委員会の設立を提案するものです。>

米国共産党のウクライナに関する声明
http://shosuzki.blog.jp/archives/87867567.html
【抜粋】
<ウクライナがNATOの外側に留まらない限り、永続的な平和はあり得ない。
ロシア人分離主義者は、ネオナチの組織である「ウクライナ民族主義者-バンデラ派」の軍事分遣隊である「アゾフ大隊」に攻撃され、殺害された。犠牲者は14,000人とする情報もある。
バイデン政権とメディアは、このような背景を語ろうとはしない。>

南アフリカ外務省:ウクライナに関する声明
http://shosuzki.blog.jp/archives/87855599.html?ref=popular_article&id=6082704-908691
【抜粋】
<この際、すべての当事者が国際法を尊重し、妥協の精神で事態に臨むことを強く求める。
紛争の激化に鑑み、我々はすべての当事者に対し、ロシアが表明した懸念に対する解決策を見出すための外交努力を再開するよう求める。
南アフリカはさらに、すべての当事者が人権を維持・保護し、国際法および国際人道法の義務を遵守することを求める。>


太田光征
posted by 風の人 at 15:20 | Comment(0) | ウクライナ危機

ウクライナ危機:全当事者の反省による道義力の回復を基盤に新たな安全保障を提案する形で停戦へ

全当事者の反省による道義力の回復を基盤に新たな安全保障を提案する形で停戦に導くための世論を作り上げることが、いま最も求められています。ひたすらウクライナ政府の象徴を振り回して日本を応戦支援国にすることではありません。ゼレンスキーの国会演説は控えめにいっても戦意高揚ないし情報戦、可能性としてはプロパガンダの主張をするための場を与えることになるものであり、言語道断です。

まず、ウクライナの非武装主義者ユーリー・シェリアジェンコ氏の紹介から始めます。下記記事から分かるように、ウクライナの非武装主義者は、ロシア軍による攻撃に加え、国内の武装主義者からの迫害を受けるという苦しい立場にあります。

(Truthout)戦争はウクライナの左翼に暴力についての難しい決断を迫っている – ne plu kapitalismo
https://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/blog/2022/03/06/war-is-forcing-ukrainian-leftists-to-make-difficult-decisions-about-violence_jp/?fbclid=IwAR2O0Y53arzFrViRn0R8Q45bWu5iI84fyqaqTFb0YpDr8jjqxukIWg7q4-8

【抜粋】
<シェリアジェンコと仲間の平和活動家は、街頭でネオナチに襲われる前に、ウクライナの極右ウェブサイトによって、ロシアに支援された分離主義者との戦争に反対する裏切り者として個人情報をネットに晒されたり「ブラックリスト」入りされたりした。>
<「現在の危機には、すべての陣営で不品行が行われてきた長い歴史があり、「我々天使は好き勝手できる」、「彼ら悪魔はその醜さに苦しむべきだ」といった態度をさらに取れば、核の終末も例外とはならないさらなるエスカレーションにつながります。真実は双方の沈静化と平和交渉の助けとなるべきです。とシェリアジェンコは述べてる。>

天使と悪魔の喩えは、下記記事でも使われていますが、ここでは善悪で二分してウクライナ政府側の主張と対応を絶対視することがもたらす重大な帰結を示すために使われているものと思われます。「真実は双方の沈静化と平和交渉の助けとなるべき」との主張も、私にはメディアの不作為などが想起され、重要な意味を持っていると感じます。

シェリアジェンコ氏はもちろん、架空の人物などではなく、下記のデモクラシー・ナウ!の番組にも出演している平和活動家です。驚いたことに日本の原水協ともつながりがあります。

キエフのウクライナ人平和主義者:無謀な軍事化がこの戦争を招いた。全当事者が平和への取り組みを再び決意しなければならない(デモクラシー・ナウ!)
https://www.democracynow.org/2022/3/1/ukrainian_pacifist_movement_russia_missile_strike

ユーリー・シェリアジェンコ氏:ウクライナ平和主義者運動事務局長、欧州良心的兵役拒否協会理事、ワールド・ビヨンド・ウォー理事、キエフのクロック大学研究員。

【シェリアジェンコ氏の発言要旨】
西側による軍事一辺倒の支援とロシアへの経済制裁に失望している。ウクライナでは非武装でロシア軍を説得して追い出す活動もしているが、ほとんど報道されない。無謀な軍事化が戦争を招くと警告してきたが、正しかった。ドンバス地域でウクライナ政府とロシアが後ろ盾の分離主義者が8年間にわたり戦争を行ってきた結果、ロシアと欧州で何百万人もの国内難民が発生している。原水協の友が広島と長崎でプーチンの戦争に反対する抗議活動を行ってくれた。https://worldbeyondwar.org/で反戦イベントを探したり、3月6日の国際アクションデー(コードピンクやその他の平和団体が主催。スローガンは「ロシア軍は出て行け」、「NATOは拡大するな」)に参加したりしてほしい。私たちはプーチンの要求(ウクライナの中立的地位、非ナチ化、非武装化、国際法に反するクリミアのロシアへの帰属の承認)を拒否する。ウクライナの交渉代表団は、停戦とロシア軍のウクライナからの撤退のみを議論する用意があった。領土保全はウクライナの問題だからだ。ロシアがハリコフや他の都市を砲撃している間、ウクライナはドネツクへの砲撃を続けた。ウクライナもロシアも好戦的で、沈静化する気がない。プーチンとゼレンスキーは、互いに排他的な立場で争うのではなく、誠実に和平交渉に取り組むべきである。ゼレンスキーは戦争マシンに落ちぶれて、プーチンに直接戦争を止めろと要求しない。NATOはウクライナ周辺の紛争から手を引くべきであり、理想的にはNATOは解散するか軍縮同盟に転換すべき。ウクライナもロシアもEUに入ることを希望する。私たちは冷静になって理性的に考えるべき。軍事的対応をするために団結してはならない。プーチンとゼレンスキー、バイデンとプーチンの間の交渉を追求するために団結すべきだ。ほとんどの人は天使ないし悪魔になろうとしているのではなく、平和の文化と暴力の文化の間を揺れ動いている。ウクライナ政府は全男性(18〜60歳)に兵役を課し、良心的兵役拒否の人権をあからさまに侵害している。平和主義者が逃げることはできない。平和なウクライナがこの偏極した軍国主義の世界によって破壊されないことを望んでいる。(以上)


日本はウクライナによる応戦を応援するのが当たり前という雰囲気が作られつつありますが、異常です。上記のようにウクライナ人がロシア軍に対する武力抵抗で一枚岩なわけがありません。この点からも停戦を求める国際世論を大きくする必要があります。その目的でNATOによる軍事威嚇などを批判しなければならないのです。

ワールド・ビヨンド・ウォー日本支部長で愛知連帯ユニオンメンバーのジョセフ・エサティエ氏も、下記記事で当然のようにNATOやネオナチについて批判しています。停戦につなげるための反省を当事者に促すための世論作りに必要だからです。

ウクライナ侵攻により核戦争の脅威が高なる今こそ 平和を実現するために立ち上がる時
http://www.labornetjp.org/news/2022/1647377196098staff01
【抜粋】
<マスコミの報道ではロシアのみが悪と言われているが、一方でアメリカやヨーロッパなどのNATO諸国が軍事的重圧をかけることが開戦へと繋がった。さらにウクライナ政権がネオナチ勢力を擁護し、アメリカがネオナチに協力している。そのことも報道されない。>

コードピンクはその声明で、私の言い換えでは、当事者すべてが反省することで停戦のチャンスを見いだそうと、いま最も求められる実践を提起しています。これが平和運動の当然のあり方なのです。

TUP速報1023号 ロシアによるウクライナ侵略についてのコードピンクからの声明 | Translators United for Peace
https://www.tup-bulletin.org/?p=3934

最後に、シェリアジェンコ氏のツイッターとフェイスブックをご紹介します。フォローすると彼を精神的に応援できるはずです。

Юрій Шеляженко | Yurii Sheliazhenkoさん (@sheliazhenko) / Twitter
https://twitter.com/sheliazhenko

Yurii Sheliazhenko | Facebook
https://www.facebook.com/ludstvo


太田光征
posted by 風の人 at 13:27 | Comment(0) | ウクライナ危機

2022年03月09日

ウクライナ危機:ウクライナ人に徹底武装抵抗を強いる国際世論は残酷だ(平和創造の自己責任)

一刻も早く殺戮を止めさせたい。そのためには何をなすべきでしょうか。

いつ効果が現われるか分からない経済制裁や武力抵抗でロシア軍を撤退させるまでウクライナ人に戦うことを強いるのは残酷というものです。殺戮を今すぐ止めさせるには、停戦しかないでしょう。もしかしたら世間は、停戦交渉が行われるとプーチンの主張が通るから嫌だと思っているのですか。

プーチンやロシア権力にとっての安全保障上の脅威について指摘すると、平和運動にたずさわっている方々からも、次のような言葉が出てきます。

・プーチンの言い分を聞く前に侵攻を止めろと言うのが先
・殺戮を止めさせるためにロシア軍を引かせるのが先
・ロシアの肩を持つのか
・反米か平和のどちらを選ぶのか
・どっちもどっち論や相対化はおかしい

私はこれらの主張に大変当惑しています。侵攻止めろは皆言っていて、国際世論も同じなのです。ロシアは確実にこれらの声を承知しているでしょう。

私はもっと侵攻反対の声が上がり、世界で可視化されればいいと考えています。でも、既にAvaaz署名という指標で現実を見れば、当初よりペースががた落ちしています。声を増幅させるには、街頭行動するにも、例えばAvaaz署名のような署名活動を紹介するなりの工夫が必要です。

【署名】Avaaz - この戦争を止める(プーチンの戦争を止めるための署名)
https://secure.avaaz.org/campaign/jp/stop_the_war_loc/

私ももちろん街頭行動をしますが、街頭で侵攻止めろと声を上げるだけで侵攻は止められない。この現実を直視しない反戦運動は自己責任を果たせないのです。実効的な即時停戦を実現するための言論が必要なのではありませんか。それはもちろん、停戦実現を、のスローガンだけを言えばいいのではありません。

今回のロシア非難国会決議にも同じ問題があります。この表現活動はウクライナに平和をもたらす機能を果たしますか、即時停戦を実現することに貢献しますか。今回の国会決議は国会の機能不全を示す以外のなにものでもありません。機能不全というより、もしかしたら今回の武装物資としての防弾チョッキを供給する露払いの機能を果たした可能性があるでしょう。なにしろ非軍事協力の縛りも停戦の働きかけも入っておらず、ロシアに対する制裁しか「手立て」を示していないのだから。そんなもの、効果があるか分からないし、効果があったとして、いつになるのか。ちなみに、パレスチナ社会が対イスラエルBDS(ボイコット・投資撤収・制裁)運動を世界に求めているのは、現状、それしか手立てがないからです。成功しないかもしれないが、それしかないから求めているのです。

今回の国会決議は、いくら日本国憲法にある理念の言葉を盛り込んだからといって、理念を体現した反戦運動にはなっていません。憲法の肝は世界の平和主義者と連帯して世界の全人民にとっての平和的生存権などの崇高な理念を市民1人ひとりが全力で達成すると誓った「実践」にありますが、こうした実践を政府や市民に求めていないからです。国会決議は軍事支援の要素を排除していません。「ウクライナと共に」のスローガンは、ウクライナの戦争指導者による戦争遂行にエールを送る要素を含みます(国際社会はパレスチナのハマスには同様のエールを送らないが)。

即時停戦を言わないロシア非難の言論は、ウクライナ人に泥沼の武力抵抗を強いる雰囲気作りに貢献しているのです。この力学を自覚しましょう。ウクライナが勝てるかもという淡い期待の皮算用は残酷です。

私はこれまで、伊勢崎さんの見解には首をかしげることが多かったのですが、下記動画で示された見解にほぼ賛同します。

伊勢崎賢治×神保哲生:NATOの「自分探し」とロシアのウクライナ軍事侵攻の関係 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=HhLemFXw74Y&t=1s

伊勢崎さんは<国連総会緊急特別総会でのロシアへの非難決議で、35か国が棄権した中に南アフリカがいた。これを報道したのは、アルジャジーラのみ。棄権の表明で南アの代表は「対話が必要だ。悪魔と対話しなければならない。これ以上の殺戮をやめさせること。>(ある方のツイッター文字起こしからそのまま転載)と指摘していますが、まさにこれなのです。そして、私は全メディアを確認したわけではありませんが、報道したのがアルジャジーラのみというところに、戦争を煽るメディアのあり方が示されており、このメディアに国会議員も呑み込まれています。

実効的な停戦をもたらす世論作りが反戦運動の実体であるべきであり、全関係者が反省をし、ロシアを含む安保を提案する形での停戦交渉に臨むのが、最も現実的で安保の理念にかなった事態可決の手立てではありませんか。なんとなれば、「平和を創る責任」は「全関係者」に常にあるからです(平和創造の自己責任)。攻められた側だが停戦協定違反の前科などがあるゼレンスキー、今回の侵攻を直接的に行っていないという意味で非がないけれどもロシアをマッチポンプ式に挑発してきた米国・NATOという、侵攻して非があるプーチン以外の全関係者の「出方次第」、すなわちゼレンスキーや米国・NATOの本音では不本意であるかもしれないが停戦に結び付く合理的な安保上の譲歩で停戦を実現できる可能性がある以上、侵攻していない側にも平和創造の責任があるのです。

多少の国際世論では動かしがたい現在の非安全保障状況は地球のプレートがぎしぎし押し合うがごときもので、国家プレートのほか国家プレートと連動する軍需産業プレートなどもあり、ウクライナを第2のアフガニスタンにしようとする軍事プレートの動きが今まさに同時並行で進行中であると認識すべきです。軍需産業プレートは今回の直接の侵攻主体でないにしてもです。今回のプーチンプレートの動きは、相互に押し合い続けている軍事プレートの一局面です。プーチンを叩くと同時に他の軍事プレートの動きも同時に抑えなければなりません。

多くの方が侵攻時点の理非の違い、表層的な倫理問題、すなわち攻めた側と攻められた側の違いだけで平和創造の自己責任の所在ないし軽重に差異を付けているものと思われます。現在の強固な非安全保障状況から安全保障状況を創り出す過程で、こうした差異にとらわれて、泥沼化への道、総体的な軍事増長への道を塞ぐ形で停戦の可能性を追求しないことは、愚かであり実体的な倫理に反すると思います。何が最も優先されるのかを考えていただきたい。

ウクライナ危機:安保構築の提案なき侵略戦争反対でいいのか
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/485866717.html

「ロシア軍は撤退しろ」や「ウクライナと共に」のスローガンだけでは、現状、ウクライナ人に武力抵抗を続けろ、という主張に等しいのです。もちろん、ウクライナ人に武装抵抗の権利はありますが、外野、特に日本が戦争を煽り立てる立場に立つべきではありません。強固な意志で侵攻を開始したプーチンにひたすら「力の論理」で対抗するなら、軍事プレートは動き続けるだけでしょう。

米国・NATOは平和運動でもよく使われるスローガン「侵略戦争阻止の一点」でウクライナ危機に対処しているわけではありません。合理的な安保提案の枠組みで全関係者が反省をする。だから停戦交渉の材料となる安保提案の一過程として米国・NATOによるロシア挑発などをも批判するのです。このどこが不都合なのか、どなたか説明してください。不都合というなら、ウクライナ危機を終わらせる非軍事の手立てを教えてください。

#StopRussianAggression
#あらゆる戦争と人権侵害に反対します


太田光征
posted by 風の人 at 12:21 | Comment(0) | ウクライナ危機

2022年03月06日

ウクライナ危機:安保構築の提案なき侵略戦争反対でいいのか

私たちはロシアのプーチンによるウクライナ侵攻にどのように対応するべきでしょうか。

欧米諸国首脳が全面核戦争に向かう道を押し止めているという、軍事的な視点での見通しを述べる見解がありますが、軍事の本質は制御不能性です。ロシアが勝てば当初想定していた以上の要求をするかもしれない。ウクライナが勝ちそうな情勢になれば、それこそプーチンは核ミサイルのボタンを押すかもしれない。

今必要なのは「実効的な停戦」を実現するための世論作りです。プーチンを悪魔視するだけで停戦を実現できるわけではありません。私たちはイラク戦争などを止めることができなかったことから教訓を引き出すべきです。

米国のブッシュ大統領が持ち出した開戦理由は、イラクのフセイン大統領が大量破壊兵器を持っているということでした。ところが開戦当時に大量破壊兵器はなく、悪魔視されたフセインの方に理があったのです。重大なのは、イラクが大量破壊兵器の国連査察を受け入れたにもかかわらず、米国などが査察を打ち切らせたことです。いくらフセインが国内で残虐な行為を行っていたとしても、フセインの言い分も聞かなければならない。

イラク戦争での反戦世論は大いに盛り上がりましたが、開戦を阻止し、停戦を実現することはできませんでした。開戦理由などの理屈とそれに対する反論は、誰が発するものであれ、すべて検証するべきものです。最初から真偽を決めつけないこと。戦争当事者の論理と心理に食い込まない限り、戦争を押さえ込めない。これはイラク戦争から引き出せる教訓です。

ロシアをNATOが軍事的に威嚇すること(NATOが東方拡大をしないとした約束の有無に関係なく)は、日米軍事同盟が斬首作戦の軍事演習などで北朝鮮を威嚇することと同じで、許されません。こうした軍事的威嚇を拒否するプーチン側の主張にも理があるのです。プーチンが戦争犯罪者であるとしても。

ところが国際世論、メディアはプーチンを悪魔視して、NATOによる軍事威嚇、ウクライナ東部での人権侵害に目をつぶり、マレーシア航空撃墜事件についてもほとんど検証を行わず、放置してきました。こうした状況は軍事的対立を増長させる要因にしかなりません。安全保障にとって好ましいどころではない。

安全保障の話はロシア軍を引かせた後の話だという意見があります。軍を引かせなければならない国・地域、戦争・人権侵害はたくさんあります。立憲民主党なども賛成して、戦争への道を開くことに貢献しかねないサイバー警察法案が衆院を通過してしまいました。侵略戦争が起こった後で反対するのでは遅い。サイバー警察法など戦争につながる要因すべてを普段から潰していく必要があります。

現実を見るべきです。侵略戦争反対の声を上げることはベースとして必要ですが、それだけで停戦に持ち込めますか。プーチン側の主張、ゼレンスキー側の主張を平等に取り上げ、正当な部分を認めて停戦に持ち込むしかないでしょう。安全保障の手立てを提案して実践する反戦運動が必要です。

以下、声明類などを紹介しながら、敷衍していきたいと思います。

コードピンクは、パレスチナ解放にも大きな力を入れている国際平和運動団体だけあって、歴史を昨日から語らず(イスラエルは昨日のパレスチナによる抵抗「テロ」から歴史を言い始める)、現在の情勢に影響を及ぼす歴史的時間軸でウクライナ危機を見つめ、私の言い換えでは当事者すべてが反省することで停戦のチャンスを見いだそうと、いま最も求められる実践を提起しています。

TUP速報1023号 ロシアによるウクライナ侵略についてのコードピンクからの声明 | Translators United for Peace
https://www.tup-bulletin.org/?p=3934

日本平和学会有志による声明は、交渉の中身は例示していませんが、市民個人レベルでも具体的な交渉の行動をと、日本国憲法を体現した実践を呼び掛けています。

声明:ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻を非難し、平和を希求する人々と連帯する声明 - 日本平和学会ホームページ
https://www.psaj.org/20220228/?fbclid=IwAR1ybYg7o-_06S4jfZxsRIFBkKsNweomvEuhmB791qjk6r_4qfUY_qYl-7I

NATO勢力がロシア・中国(そして北朝鮮)にかけてきた軍事的圧力と経済的屈辱は、地球のプレートみたいなもので、いずれはバランスを崩して反動を引き起こします。核保有大国二極化の中でバランスを崩さず力で押さえ付けられるというのは妄想です。デヴィッド・ハーヴェイ氏はこうした主旨に加え、やはりイラク反戦運動が失敗に終わったことを指摘しながら、協調に基づく新しい世界秩序の創造を呼び掛けています。

ウクライナ侵攻に関する英国の地理学者デヴィッド・ハーヴェイの論説:ペガサス・ブログ版:SSブログ
https://pegasus1.blog.ss-blog.jp/2022-03-02?fbclid=IwAR3abO_FRs5VMfEwZ3YtSyB19d2ld2FUsPW6zZXePRgpLyHGaBmkAMQYbA8

ダイアナ・ジョンストン氏も、マッチポンプ式にロシアを挑発して非難する米国の外交政策を批判しています。

Peace Philosophy Centre: ダイアナ・ジョンストン:米国の外交政策は残酷な遊びである DIANA JOHNSTONE: US Foreign Policy Is a Cruel Sport (Japanese translation)
https://peacephilosophy.blogspot.com/2022/03/diana-johnstone-us-foreign-policy-is.html

高良鉄美参議院議員は、先の参院ロシア非難決議について、<決議案で述べているとおり、武力行使に抗議することは当然であり、その点に異論をはさむ余地はない。ウクライナ国民の生存権が危機に瀕していることを深く憂慮しているが、決議案で「ウクライナと共にある」という言い回しには 違和感がある。今こそ平和憲法を持つ日本が、欧米とは違う立場で、独自にロシア、ウクライナに平和的解決を求める積極的な外交を行うべきである。>との声明を発表して、参院決議案に反対しました。私はさすが沖縄出身の憲法学者だと思いました。#StandWithUkraine(ウクライナと共に)は戦争指導者をも含む表現であり、これに何から何までもくべて火に油を注ぐことは無責任です。

高良鉄美Facebook
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=649844046245505&id=100036597470991

ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議(令和4年3月2日):本会議決議:参議院
https://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/208/220302.html?fbclid=IwAR1X2feMbsfubZunjO7RpDUYfGD3AL9SajXDjIxh72rtHk2JhU1YmQeLnwI

決議には「我が国を含む国際社会が、緊張の緩和と事態の打開に向けて、懸命な外交努力を重ねてきた」などと白々しい記述があります。じゃあ今後、停戦の可能性はないというのかということになります。決議には、実践レベルの内容、つまり非軍事の協力、実効的な停戦を実現させるための外交、特にウクライナとロシアの(暫定)安保の提案を行うよう、政府に突き上げる内容を盛り込むべきだったと思います。

「ブルーリボン」は結局、解決策なき北朝鮮非難キャンペーンでした。今回の衆参のロシア非難決議は、解決策・安保の提案がないので、ロシア版ブルーリボンになりかねず、逆に日本内外で軍事エスカレートを招く危険性さえ持っています。案の定、政府はウクライナへ防弾チョッキ(医療関係者などに供給される保証があるなら構わないと思う)という武装物資を供給する方針を示し、日本共産党までが一時、反対しない見解を表明しました。本日、その見解を撤回したので、私は安堵しましたが。

最近、驚くべき意見に遭遇しました。故永六輔さんの言葉「戦争体験を伝えろって、誰が誰に伝えるんだよ。戦争なんてものは伝えられるような、なまやさしいもんじゃない。戦争なんてものは反対だけしてりゃいいんだよ。」(調べたら、『週刊金曜日』の「永六輔語録」の1つだった)を援用して、プーチンによるウクライナ侵攻をめぐって、ただ反対だけを言えばいいのだということを主張している人がいるのです。

ちなみに、永六輔さんは戦争を語りつぐ活動をされていました。

土曜ワイドラジオTOKYO 永六輔その新世界 特選ベスト〜戦争を語りつぐ大人たち篇 : 永六輔 | HMV&BOOKS online - TBSP-5/6
https://www.hmv.co.jp/artist_%E6%B0%B8%E5%85%AD%E8%BC%94_000000000014852/item_%E5%9C%9F%E6%9B%9C%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%82%AATOKYO-%E6%B0%B8%E5%85%AD%E8%BC%94%E3%81%9D%E3%81%AE%E6%96%B0%E4%B8%96%E7%95%8C-%E7%89%B9%E9%81%B8%E3%83%99%E3%82%B9%E3%83%88%E3%80%9C%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%82%92%E8%AA%9E%E3%82%8A%E3%81%A4%E3%81%90%E5%A4%A7%E4%BA%BA%E3%81%9F%E3%81%A1%E7%AF%87_7626533

ロシア非難だけでは、米国・NATOによる軍事活動の増長をまねく恐れがあるし、日本における9条お花畑論や軍備増強・核武装論に対抗できないのです。というかこれらの論を勢いづかせる恐れすらあります。それみたことか、ウクライナのようにならないように、と。

ところが驚くべきことに、侵略戦争反対以外の狙いを込めた主張は、戦争被害者を利用して自分が気持ちよくなるための行為なのだそうです。

報道ステーションでは、流ちょうな日本語を話すウクライナ人のパルホメンコ・ボグダンさんが、世界ルールのリスタートを主張していました。彼は、侵略反対の気持ちだけを表明しているわけでなく、解決策を提案しています。

報道ステーション「【キエフ在住男性 #世界 への訴え】 パルホメンコ・ボグダンさん 「国連もNATOもEUもアメリカも #機能していない。ウクライナが犠牲となってそれを証明」 「世界が何も変えなければ世界大戦に突入するだろうし、非常事態を受け止めて世界のルールをリスタートさせられれば状況は変わる」 #報ステ」
https://twitter.com/hst_tvasahi/status/1499020478391861250

私はこのツイートを引用する形で、下記のツイートを投稿しました。

「どうかご無事で。軍事支援を切実に求めるウクライナ人の心情はもちろん理解できますが、私は軍事で貢献できない。プーチン非難の意思表示だけでは、徹底抗戦の呼び掛けにほぼ等しく、停戦をもたらす保証がない。停戦に向け、ロシアを含む暫定安保の提案が責任ではないか。リツイートの少なさが意味深。」

私はイラク戦争の頃に思いました。イラク戦争を開戦したのはブッシュが悪い。でもイラク反戦運動という自己責任を課したのは自分たち。イラク反戦運動が失敗した責任はブッシュにではなく、自分たちにあるのだと。

プーチンが悪い、自分は侵略戦争反対だけを言う。これが停戦に結び付くのか。これが自己責任の取り方なのか。

実践の現実を見ましょう。ウクライナ危機をめぐるツイッターを眺めていても、意見表明がほとんどで、署名運動を紹介するなり街頭行動を組んで紹介するなり、実践の投稿が少なすぎます。ウクライナ危機とはまた別ですが、選挙運動期間中も、候補者応援のツイートをするでもなく、評論のツイートばかりが目立ちます。

プーチン非難署名が世界でわずか230万余りしかない現実(昨日からロシアからの署名が出だしたが、最初より署名ペースが鈍くなっている)を見るべきです。昨年の衆院選から選挙で負け続けている現実を見るべきです。

石垣市長選、ツイッター拡散 中山氏が砥板氏の2・3倍 利用者の大半は県外在住
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1480308.html

いま目の前にある殺戮を止めさせるためにロシア軍を引かせるのが先ではないか、なぜあなたはロシアの肩を持つのかと私に言う人がいますが、そういう方は殺戮を止めさせるための策を提案していません。プーチンの蛮行に反対する意思表示くらい、私も街頭で1人で行っています。本日のグループ街頭行動でも、私は下記署名を紹介し、IT苦手だなんて言わないで1億筆くらい集めよう、と呼び掛けました。

【署名】Avaaz - この戦争を止める(プーチンの戦争を止めるための署名)
https://secure.avaaz.org/campaign/jp/stop_the_war_loc/

いま目の前にある戦争と人権侵害は世界各地にあるのです。軍が引くのはいったい、何世紀後のことなのですか。イエメン戦争において日本も軍用輸送機を戦争当事国に輸出しようとしている中で、戦争当事国への武器輸出を止めるのは軍が引いた後にすべきと主張することは、あまりにも馬鹿げています。イスラエルによるパレスチナの占領を止めさせるための手立ては、イスラエルが定期的に繰り返すガザ空爆の直後に空爆反対だけを叫び続けて、その後で考えろ、とでも言うのでしょうか。パレスチナ社会はとっくに対イスラエルBDS(ボイコット・投資撤収・制裁)運動を世界に求めています。

いま、米国・NATOの軍事的増長を許さない形で、安保構築につながる反戦運動が必要です。また、運動が一過性で効果の集積性がないと、戦争と人権侵害を止められません。どうしてもイベント的な運動を発想しがちですが、散発的になりがちです。恒常的なネット署名が、1つの現実的な手段になるでしょう。例えば私は、下記署名をバックパックに取り付けた名札大のメディアで紹介したり、名刺裏に印刷したりしています。

【署名】Avaaz - アヘド・タミミさんの釈放を(現在は解放されたが、多くの児童がイスラエル軍に拘束されているため、署名継続中)
https://secure.avaaz.org/campaign/jp/free_ahed_global_loc/

反戦運動にしても選挙を含む政治運動一般にしても、運動のあり方を大いに見直す必要を切に感じています。

#StopRussianAggression
#あらゆる戦争と人権侵害に反対します


太田光征
posted by 風の人 at 01:17 | Comment(0) | 一般

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